美浜発電所3号機の配管破損(2004年):オリフィスの下流の減肉

2004年8月9日、関西電力の美浜発電所3号機で、タービン建屋の二次系の復水配管が破れ、噴き出した高温の蒸気と水を浴びて、近くで作業していた5人が亡くなり、6人が負傷しました。破れた所は流量計のオリフィスの下流で、炭素鋼の配管の肉厚が、エロージョン・コロージョンによって元の10 mmから最も薄い所で0.4 mmまで減っていました。この場所は、肉厚を測る点検のリストから当初より漏れていました。

何が起きたか

日時
2004年(平成16年)8月9日 15時28分ごろ
場所
関西電力 美浜発電所3号機のタービン建屋
配管
二次系の復水配管(第4低圧給水加熱器から脱気器へ向かうA系統)の、流量計オリフィスの下流。炭素鋼(SB42)、外径558.8 mm、公称肉厚10 mm
運転状態
約140℃、0.93 MPa、流量1,700 m³/h(設計条件は195℃、1.27 MPa)
肉厚
破損部の最小は0.4 mm(技術基準上の必要肉厚は4.7 mm)
被害
5人が死亡、6人が負傷
調査
原子力安全・保安院「関西電力株式会社美浜発電所3号機二次系配管破損事故について(最終報告書)」2005年3月30日

事故の経過と調査の結論

事故は、第21回定期検査の準備の期間中に起こり、建屋の中では計105人が作業などをしていました。破れた配管の付近で作業していた人が、噴き出した蒸気と高温の水を浴びました。原子炉は二次系からの漏れを受けて自動停止しました。

破損部では、軸方向に約515 mm、周方向に約930 mmにわたる破口が見つかりました。き裂はまず軸方向に進み、その後に円周方向に進んだとされています。米国原子力規制委員会(NRC)の情報通知によると、同じ部位のB系統の配管の肉厚は1.8 mmでした。

材料の側から見た原因の連鎖

美浜3号機:材料の側から見た原因の連鎖流量計のオリフィスで流れが絞られる下流で流れが乱れる約140℃の水が炭素鋼の内面を流れる保護的な酸化皮膜が溶け出すエロージョン・コロージョン10 mm → 最小 0.4 mm点検のリストから当初より漏れていた減肉に気づかない必要肉厚 4.7 mm を大きく下回る内圧に耐えられない配管が破れ、蒸気が噴き出す
美浜3号機:材料の側から見た原因の連鎖

最終報告書は、配管の肉厚が、いわゆるエロージョン・コロージョンによって運転とともに徐々に減り、強度が足りなくなって破れたと結論しています。オリフィスで流れが絞られ、その下流の配管の壁は乱れた流れにさらされていました。原子力の分野では、この現象を流れ加速型腐食(FAC)とも呼びます。NRCは、破損部の内面に魚のうろこのような模様があり、配管の底は元の厚さを保っていたことを、流れ加速型腐食に特徴的だとしています。

流れ加速型腐食は、炭素鋼の表面の酸化鉄が流れる水に溶け出し、乱れた流れによって運び去られることで進む腐食です。英国の腐食の学会(Institute of Corrosion)に掲載された講演資料によると、減肉の速さは温度に対して山形に変わり(単相の水の流れでは約140〜160℃で最大)、pHが低いほど速く、鋼のCrの量が増えると遅くなります。

破損部は、1990年(平成2年)に三菱重工業がPWR管理指針にもとづく点検対象のリストを作ったときから、すでに記載から漏れていました。そのため、使用の限界を超えて減肉が進んでいることに気づきませんでした。登録の漏れは、美浜3号機で3か所、関西電力の11基で42か所ありました。原子力白書は、根本的な原因を、関西電力・三菱重工業・日本アームの3者が関わる二次系の主要な配管の減肉の管理のミスで、要管理の箇所が当初の管理リストから欠け、事故まで直せなかったことだとしています。

どの手がかりで原因がわかったか

この事例の手がかりで診断ナビを開く

この手がかりで診断ナビを開くと、流れによる減肉が最上位になります。

関係する破損の形態: 流れによる減肉(エロージョン・コロージョン)

その後に変わった設計・規格・検査

学べること

確認の問い

鉄の腐食の電流密度が、全面で一様に1.0 µA/cm²であるとき、腐食で表面が後退する速さはどれに最も近いか。鉄は Fe²⁺ として溶けるとし、モル質量55.85 g/mol、密度7.87 g/cm³、ファラデー定数96485 C/mol、1年を3.15×10⁷ s とする。

  1. A約7.7 µm/年
  2. B約23 µm/年
  3. C約12 µm/年
答えと解説を見る

正解:C. 約12 µm/年

単位面積あたり1秒に溶ける質量は iM/(nF) = 1.0×10⁻⁶ × 55.85/(2 × 96485) ≈ 2.9×10⁻¹⁰ g/(cm²·s) で、密度7.87 g/cm³で割ると、後退の速さは約3.7×10⁻¹¹ cm/s です。1年分を掛けると 3.7×10⁻¹¹ × 3.15×10⁷ ≈ 1.16×10⁻³ cm/年、つまり約12 µm/年(11.6 µm/年)になります。約23 µm/年は n = 1 とした誤りです。約7.7 µm/年は、Fe³⁺として溶けるとして n = 3 で計算した誤りで、問題の条件と合いません。電流密度と腐食の速さが比例するので、鉄では「1 µA/cm²で約12 µm/年」が、腐食電流から寿命を見積もるときの換算の目安になります。

ある鋼管で、鉄が Fe → Fe²⁺ + 2e⁻ と溶ける腐食の電流が、平均0.10 Aで1年間(365日)流れ続けた。溶けた鉄の質量はどれに最も近いか。Feのモル質量を55.85 g/mol、ファラデー定数を96485 C/molとする。

  1. A約0.61 kg
  2. B約0.91 kg
  3. C約1.8 kg
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正解:B. 約0.91 kg

ファラデーの法則から、溶けた質量は m = ItM/(nF) です。1年は 365 × 24 × 3600 = 3.15×10⁷ s なので、流れた電気量は Q = 0.10 × 3.15×10⁷ = 3.15×10⁶ C です。Fe²⁺になるので n = 2 として、m = 3.15×10⁶ × 55.85/(2 × 96485) ≈ 913 g、つまり約0.91 kgになります。約1.8 kgは、電子の数を n = 1 としてしまった誤りです。約0.61 kgは、Fe³⁺になるとして n = 3 で計算した誤りで、問題の反応式と合いません。わずか0.10 Aの腐食電流でも1年で1 kg近い鉄が失われることになり、局部に集中すれば配管に穴をあけるのに十分な量です。

ステンレス鋼が大気や水の中でさびにくい主な理由はどれか。

  1. ANiの添加で合金の標準電極電位が金や白金と同じくらい貴になり、溶けにくくなるから
  2. B表面に厚さ数mmの緻密な酸化スケールが成長し、水や酸素を外界から完全に遮断するから
  3. CCrを約11%以上含み、表面に厚さ数nmの不動態皮膜ができて自然に再生するから
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正解:C. Crを約11%以上含み、表面に厚さ数nmの不動態皮膜ができて自然に再生するから

ステンレス鋼は、Crをおよそ11%(規格の定義では10.5%)以上含むことで、表面にCrの酸化物を主とする厚さわずか数nm程度の不動態皮膜ができ、金属がそれ以上溶け出すのを防ぎます。皮膜は酸素のある環境では、傷がついても自然に再生する点が重要です。そのため不動態は、硝酸のような酸化性の環境では保たれやすく、酸素が乏しい環境や塩化物イオンが多い環境、還元性の酸(塩酸など)では壊れやすくなります。合金全体の電位が金や白金並みに貴になるわけではなく、Niの主な役割はオーステナイト組織の安定化です。数mmもある厚い酸化スケールは高温の酸化でできるもので、割れやはく離を起こしやすく、不動態皮膜とはまったく別物です。

関連する用語

不動態 ファラデーの法則 ステンレス鋼

主な出典

  1. 原子力安全・保安院「関西電力株式会社美浜発電所3号機二次系配管破損事故について(最終報告書)」2005年3月30日(原子力委員会 定例会議 資料)
  2. 原子力委員会 原子力白書(美浜発電所3号機の事故の記述)
  3. U.S. NRC, Information Notice 2006-08: Secondary Piping Rupture at the Mihama Power Station in Japan
  4. 日本機械学会「発電用設備規格事業の変遷」
  5. 失敗知識データベース: Steam Eruption from Nuclear Power Plant Cooling System
  6. R. Beheshty, Flow Accelerated Corrosion: Synergistic effects of the influencing parameters(Institute of Corrosion)

日付・人数・寸法・温度などの値は、上の公式の報告書と、それを引いた資料で確かめたものです。

ほかの事例

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