組織の見分け方アトラス

顕微鏡で見る金属の組織(ミクロ組織)を、模式図で見て、特徴を覚え、見分ける練習をするページです。図は描くたびに少し違う形になります。

図はすべて手続き的に描いた模式図で、顕微鏡写真ではありません。明暗の関係(どの相が明るく、どの相が暗いか)はナイタールなどで腐食したときの典型に合わせていますが、実際の写真の色・コントラスト・粒の形は、腐食液・腐食の時間・照明・倍率で大きく変わります。倍率の目安は、図を幅10 cmで見たときの倍率です。倍率の低い図(×100・×200)のパーライトの縞は、層であることを示すための描き方で、実際の層の間隔はこの倍率ではふつう分かれません。ダーク表示でも明暗は反転させず、全体を少し暗くしています。

組織の一覧

19の組織を、でき方で分けて並べています。図を押すと、その組織の見分け方が開きます。

鋼の徐冷・焼なましの組織

焼入れ・恒温変態・焼戻しの組織

鋳鉄

凝固の組織

粒の形・大きさと析出物

組織ごとの見分け方

名前を押すと、模式図・見えるもの・できる条件・見まちがえやすい組織との見分け方が開きます。

鋼の徐冷・焼なましの組織

フェライト(純鉄・極低炭素鋼)明るい等軸の粒と、細い黒い粒界の線
模式図。倍率の目安 ×200(図の幅 500 µm)

見えるもの

  • ほぼ同じ大きさの角ばった明るい粒(等軸粒)が敷きつめられ、粒の境目(粒界)が細い黒い線に見える。
  • 炭素が少しあると、粒の角などに小さな黒いパーライトが点在する(炭素約0.05%の熱間圧延材の例)。

明るく・暗く見える理由

  • 粒界は原子の並びが乱れていて粒の中より速く腐食され、溝になって光が戻らないので黒い線に見える。
  • 腐食を長めにすると、結晶の向きによって溶け方が違うため、同じ向きの粒は同じ明るさになり、粒ごとに明るさが少しずつ違って見える。

腐食液と見え方

  • ナイタール(硝酸のアルコール液)でフェライトの粒界が出る。ピクラール(ピクリン酸のアルコール液)ではフェライトの粒界は出ないので、粒の大きさを見るにはナイタールを使う。

できる条件(合金と熱処理)

  • 炭素のごく少ない鉄(純鉄や極低炭素鋼)を、オーステナイト域から冷やす・焼なます。Fe–C 状態図では、727℃で炭素を最大0.022%しか溶かせないα(体心立方)の領域。
  • 冷間加工したあと再結晶させると、ひずみのない等軸の粒にもどる。

性質

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 明るい等軸の多角形の粒だけでできている
  • 粒の中にまっすぐな平行線の帯(双晶)がない
  • 黒い部分(パーライト)はほとんどない

関連する用語: ホール・ペッチの関係 再結晶

計算ツールで確かめる: 鉄–炭素状態図ビューア

  1. ある鋼の降伏応力がホール・ペッチの関係 σy = σ₀ + k/√d に従い、σ₀ = 70 MPa、k = 0.74 MPa·√m である。平均結晶粒径 d = 25 µm のときの降伏応力はどれに最も近いか。
  2. 冷間加工した金属を加熱したときの再結晶についての説明として正しいものはどれか。
フェライト+パーライト(亜共析鋼)白いフェライトと黒いパーライト。炭素が多いほど黒が増える
模式図。倍率の目安 ×200(図の幅 500 µm)

炭素 0.4% の鋼: てこの規則によるパーライトの質量分率 51.2%

見えるもの

  • 白い(明るい)初析フェライトの粒と、黒っぽいパーライトの島がまじる。パーライトは倍率を上げると層が見える。
  • 炭素が多いほどパーライトが増える。図の下のつまみで炭素量を変えると、てこの規則で求めた割合で描き直す。

明るく・暗く見える理由

  • パーライトはフェライトとセメンタイトの細かい層で、腐食で層の段差ができ、その影で全体が暗く見える。初析フェライトは平らに溶けるので明るい。

腐食液と見え方

  • ナイタールでフェライトの粒界とパーライトの両方が見える(ふつうはこれを使う)。ピクラールはパーライトの層をよく出すが、フェライトの粒界は出さない。

できる条件(合金と熱処理)

  • 炭素0.022〜0.76%の鋼を、オーステナイト域から炉の中でゆっくり冷やす(焼なまし)か、空気中で冷やす(焼ならし)。
  • 冷えるとまずもとのオーステナイトの粒界にフェライトができ、残りのオーステナイトの炭素が増えて0.76%になると、727℃でパーライトに変わる。
  • 727℃のすぐ下のパーライトの質量分率は、てこの規則で (C − 0.022)/(0.76 − 0.022)。例: 0.40%Cなら約0.51。模式図ではこの質量分率を面積の割合として描いている。

性質

  • 焼ならし(空冷)は焼なまし(炉冷)より速く冷えるので、フェライトが少なく、パーライトが細かくなる(0.35%C の鋼の例)。 [1][2]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 白い等軸の粒と黒い島がまじる
  • 黒い島は倍率を上げると層状
  • 黒鉛の球や片はない

関連する用語: てこの規則 共析反応 パーライト

計算ツールで確かめる: 鉄–炭素状態図ビューア

  1. 0.40 wt%Cの亜共析鋼を727℃のすぐ下まで平衡冷却した。初析フェライトの質量分率はどれに最も近いか。共析組成を0.76 wt%C、727℃でのフェライトの炭素濃度を0.022 wt%C、セメンタイトを6.70 wt%Cとする。
  2. Fe-Fe₃C系状態図の共析点についての説明として正しいものはどれか。
パーライト(共析鋼)向きのそろった細い層の区画(コロニー)が敷きつめられる
模式図。倍率の目安 ×2,000(図の幅 50 µm)

見えるもの

  • フェライトとセメンタイトが交互に重なった層。層の向きがそろった区画(コロニー)ごとに向きが変わり、指紋のような縞が並ぶ。
  • 同じ試料でも、層を斜めに切ったコロニーは間隔が広く見え、垂直に近く切ったものは狭く見える。層が細かすぎて分かれないコロニーは黒く一様に見える。

明るく・暗く見える理由

  • 腐食でフェライトが先に溶け、セメンタイトがわずかに浮き出る。光学顕微鏡では両方とも白いが、セメンタイトの層は薄いので段差の影が黒い線になり、全体に暗く見える。

腐食液と見え方

  • ピクラールはフェライトの粒界をほとんど出さず、セメンタイト(パーライトの層)をくっきり出すので、パーライトの層を見るのに向く。ナイタールでもパーライトは黒く見える。

できる条件(合金と熱処理)

  • 約0.76%Cの共析鋼を、オーステナイト域から727℃より下へゆっくり冷やす(γ → α + Fe₃C)。
  • 冷却が遅い(過冷が小さい)ほど層の間隔が広い粗いパーライトに、速いほど細かいパーライトになる。空冷(焼ならし)の細かいパーライトは、光学顕微鏡では層が分かれにくい。

性質

  • 層の間隔が細かいほど硬く強い。硬さは 細かいパーライト > 粗いパーライト > 球状化組織 の順。 [7][8]
  • 光学顕微鏡で分かれるのは約500 nm までで、層の間隔が約50 nm のごく細かいパーライトは電子顕微鏡でないと層が見えない。 [9]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 全面が層状の縞
  • 区画(コロニー)ごとに縞の向きが変わる
  • 白い粒の集まりや白い網目はない

関連する用語: パーライト 共析反応

計算ツールで確かめる: 鉄–炭素状態図ビューア

  1. Fe-Fe₃C系状態図の共析点についての説明として正しいものはどれか。
初析セメンタイト+パーライト(過共析鋼)パーライトの粒を、白いセメンタイトの網目がふちどる
模式図。倍率の目安 ×1,000(図の幅 100 µm)

炭素 1.2% の鋼: てこの規則による初析セメンタイトの質量分率 7.4%

見えるもの

  • 層状のパーライトの粒(もとのオーステナイト粒)のまわりを、白く細い網目(初析セメンタイト)が囲む。
  • 炭素が多いほど網目が太くなる。図の下のつまみで炭素量を変えると、てこの規則で求めた割合の太さで描き直す。

明るく・暗く見える理由

  • 初析セメンタイトはナイタールやピクラールではほとんど溶けずに白く残り、網目の縁の段差が細い黒い線に見える。

腐食液と見え方

  • ナイタール・ピクラールでは初析セメンタイトは白く、白いフェライトと見分けにくい。アルカリ性の赤血塩(フェリシアン化カリウム)液で熱して腐食すると、セメンタイトは黒く、パーライトは茶色に見えるので見分けられる。

できる条件(合金と熱処理)

  • 0.76%Cより炭素の多い鋼(過共析鋼)を、オーステナイト域から徐冷する。Acm線を横切るとオーステナイトの粒界に初析セメンタイトが網目状に出て、残りのオーステナイトが727℃でパーライトになる。
  • 727℃のすぐ下の初析セメンタイトの質量分率は、てこの規則で (C − 0.76)/(6.70 − 0.76)。例: 1.2%Cで約0.074。模式図ではこの割合を網目の面積として描いている。

性質

  • 1.3%C の鋼を970℃から炉冷した例で、初析セメンタイトが粒界に出て、パーライトの層がよく見える。 [1]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • パーライトの粒を白く細い網目が囲む
  • 網目は粒界に沿う
  • 中はパーライトの層

関連する用語: パーライト てこの規則

計算ツールで確かめる: 鉄–炭素状態図ビューア

  1. 1.2 wt%Cの過共析鋼をオーステナイト域から徐冷したとき、室温で得られる組織はどれか。
ウィドマンシュテッテン・フェライト粒界から、平行なくさび形の白い板が粒の内側へのびる
模式図。倍率の目安 ×200(図の幅 500 µm)

見えるもの

  • もとのオーステナイト粒の粒界に白いフェライトの帯があり、そこから向きのそろった白いくさび形の板が何本も粒の内側へのびる。板のあいだは黒いパーライト。

明るく・暗く見える理由

  • ウィドマンシュテッテン・フェライトは中に細かい組織がなく、腐食されてもきれいに白く残る。細かい板と炭化物の集まりであるベイナイトは暗く腐食される。

腐食液と見え方

  • ナイタールで、白い板と黒いパーライトのコントラストがはっきり出る。

できる条件(合金と熱処理)

  • 鋳放しの炭素鋼(0.40〜0.50%C の例)のように、冷却が平衡から遠いとき、粒界からくさび形のフェライトが育つ。粒界の層状のフェライトから二次的に育つものもある。
  • 焼なまし・焼ならし・熱間圧延で消せる。

性質

  • 針状のフェライトは靭性を下げるので、この組織のままの鋼は重要な部品には使わない方がよいとされる(鋳放しの鋼の例)。 [3]

見まちがえやすい組織と見分け方

  • 上部ベイナイト: どちらも粒界から平行にのびるが、ウィドマンシュテッテン・フェライトは白くきれいなくさびで、あいだは黒いパーライト。上部ベイナイトは束全体が暗く、細かい板のあいだに炭化物の列がある。
  • フェライト+パーライト(亜共析鋼): 焼なました亜共析鋼のフェライトは等軸の粒で、平行なくさびの列はない(焼ならしでフェライトが針状になることはある)。

見分けの手がかり

  • 白いくさびが平行に並んで粒の内側へのびる
  • 粒界に白い帯
  • あいだは黒いパーライト

計算ツールで確かめる: 鉄–炭素状態図ビューア

球状化組織(球状セメンタイト)明るいフェライトの地に、丸いセメンタイトの粒子が散らばる
模式図。倍率の目安 ×2,000(図の幅 50 µm)

見えるもの

  • 等軸のフェライトの地に、丸いセメンタイトの粒子が一様に散らばる。フェライトの粒界の上にも粒子が多い。
  • 層の縞も針もない。

明るく・暗く見える理由

  • セメンタイトの粒子は腐食されずにわずかに浮き出るので、まわりの段差が影になり、黒くふちどられた点に見える。

腐食液と見え方

  • ピクラールは球状化組織や焼戻しの炭化物の分布を見る定番の腐食液。フェライトの粒界も見たいときはナイタールと組み合わせる。

できる条件(合金と熱処理)

  • パーライトやベイナイト、焼入れした鋼を、A1(727℃)のすぐ下で長時間保つ(球状化焼なまし)。例: 0.40〜0.50%Cの鋼を830〜850℃から水焼入れし、710℃に72時間保ってからゆっくり冷やす。
  • 焼入れした鋼を600℃に長く(数日)焼き戻しても、セメンタイトの粒子が大きくなり、針状のフェライトが等軸に変わっていく。

性質

  • 硬さは 細かいパーライト > 粗いパーライト > 球状化組織 の順で、球状化組織がいちばん軟らかい。 [4]
  • 炭素約0.85%の工具鋼の熱処理前の組織(フェライトの地に数µmの炭化物)は HV165 程度。 [5]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 丸い粒子がばらばらに散らばる
  • 層の縞も針もない
  • 地のフェライトは等軸で明るい

関連する用語: オストワルド成長

計算ツールで確かめる: 鉄–炭素状態図ビューア

  1. 母相の中に大きさの異なる析出物の粒子が分散している合金を高温で長時間保持したときに起こる、オストワルド成長(オストワルド熟成)の説明として正しいものはどれか。

焼入れ・恒温変態・焼戻しの組織

上部ベイナイト粒界から育つ羽毛状の束。板のあいだに炭化物の列
模式図。倍率の目安 ×1,000(図の幅 100 µm)

見えるもの

  • もとのオーステナイトの粒界から、平行な細いフェライトの板(ラス)の束(シーフ)が羽毛のように育つ。
  • 板と板のあいだに、セメンタイトの粒子が途切れた列になって並ぶ。光学顕微鏡では一つ一つの板は分かれず、束の集まりとして見える。
  • 模式図は、途中まで変態させて焼き入れた試料の見え方(育ちはじめた束が暗く、残りは明るいマルテンサイトの地)。

明るく・暗く見える理由

  • セメンタイトの粒子のまわりが腐食されるので、ベイナイトは全体に暗く見える。

腐食液と見え方

  • ナイタールで暗く腐食される。一つ一つの板と炭化物を見るには電子顕微鏡が要る。

できる条件(合金と熱処理)

  • オーステナイトを、パーライトのできる温度のすぐ下(多くは500℃より下)まで急いで冷やし、その温度に保つ(恒温変態)。
  • 焼入れの冷却が臨界冷却速度より少し遅いと、粒界にだけ羽毛状の上部ベイナイトが出ることがある(0.35%C の水焼入れの例)。

性質

  • 4340鋼を恒温変態させて、ほぼ上部ベイナイトにした例で 32 HRC。 [1]
  • 炭化物が板のあいだにあって粗いので、下部ベイナイトより靭性が低い。 [4]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 粒界から平行な束が羽毛状に育つ
  • 束の中に途切れた黒い点の列
  • 全体に暗く腐食される

関連する用語: 焼入れ性

  1. TTT線図(恒温変態線図)とCCT線図(連続冷却変態線図)の違いとして正しいものはどれか。
  2. 鋼にMn、Cr、Moなどの合金元素を加えると焼入れ性が向上する。その理由として正しいものはどれか。
下部ベイナイト向きのそろわない、細く暗い針(板)
模式図。倍率の目安 ×1,000(図の幅 100 µm)

見えるもの

  • 細く暗い針(実際は板)が、互いに平行にならずにいろいろな向きに散らばる(針状)。
  • 途中まで変態させて焼き入れた試料では、明るいマルテンサイトの地の中に暗い針として見える(模式図はこの見え方)。

明るく・暗く見える理由

  • 板の中の細かい炭化物のまわりが腐食されるので、暗く腐食される。

腐食液と見え方

  • ナイタールで暗い針に見える。板の中の炭化物(板の軸に約60°の向きで平行に並ぶ)は電子顕微鏡で見る。

できる条件(合金と熱処理)

  • オーステナイトを上部ベイナイトより低い温度(ふつう200〜350℃)まで急冷して、その温度に保つ。

性質

  • 4340鋼を280℃と330℃で恒温変態させ、ほぼ下部ベイナイトにした例で、それぞれ 50 HRC と 44 HRC。 [1]
  • 板のあいだの炭化物が少なく細かいので、上部ベイナイトより靭性が高い。 [2]

見まちがえやすい組織と見分け方

  • 焼戻しマルテンサイト: 光学顕微鏡ではよく似る。焼戻しマルテンサイトの炭化物は数種類の向き(ウィドマンシュテッテン状)に出て、下部ベイナイトの炭化物は1つの向きにそろうことが多い(電子顕微鏡で見る)。熱処理の履歴も手がかりになる。
  • レンズマルテンサイト(板状・高炭素の焼入れ組織): 焼入れままのレンズマルテンサイトの板は太く、中央に筋(ミッドリブ)があり、まわりに白い残留オーステナイトがある。下部ベイナイトの針は細く暗い。
  • 上部ベイナイト: 上部ベイナイトは粒界から平行な束が育つ。下部ベイナイトの針は向きがばらばら。

見分けの手がかり

  • 細く暗い針が向きばらばらに散らばる
  • 針の中央に筋(ミッドリブ)はない
  • 粒界から平行な束にはならない
  1. TTT線図(恒温変態線図)とCCT線図(連続冷却変態線図)の違いとして正しいものはどれか。
ラスマルテンサイト(低炭素の焼入れ組織)もとの粒の中に、細い平行な筋のそろった区画が並ぶ
模式図。倍率の目安 ×500(図の幅 200 µm)

見えるもの

  • もとのオーステナイトの粒の境界(旧オーステナイト粒界)が残り、その中が、向きのそろった細い筋の区画に分かれる。区画の中には明るさの違う帯(ブロック)が並ぶ。
  • 一本一本のラスは細すぎて、光学顕微鏡では分かれない。

明るく・暗く見える理由

  • 焼入れままのマルテンサイトはナイタールでのコントラストが弱く、区画ごとの向きの違いが明るさのわずかな違いとして見える程度。

腐食液と見え方

  • ナイタールで腐食する(コントラストは弱め)。ピクラールもマルテンサイトを腐食する。

できる条件(合金と熱処理)

  • 炭素が約0.6%より少ない鋼を、オーステナイト域から臨界冷却速度より速く急冷する(水焼入れ・油焼入れ)。炭素が約0.6〜1%ではラスと板がまじる。

性質

  • 焼入れままの硬さはほぼ炭素量だけで決まり、合金元素は硬さではなく焼きの入る深さを変える。 [2]
  • マルテンサイトの最高硬さは、炭素0.8〜1.0%で HRC 66。 [1]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 旧オーステナイト粒界が残る
  • 粒の中が細い平行な筋の区画に分かれる
  • 全体に明るめでコントラストが弱い

関連する用語: マルテンサイト 焼入れ性

計算ツールで確かめる: 鉄–炭素状態図ビューア

  1. 鋼のマルテンサイト変態についての説明として正しいものはどれか。
  2. 鋼にMn、Cr、Moなどの合金元素を加えると焼入れ性が向上する。その理由として正しいものはどれか。
レンズマルテンサイト(板状・高炭素の焼入れ組織)白い地に、中央に筋のあるレンズ形の板が交差する
模式図。倍率の目安 ×500(図の幅 200 µm)

見えるもの

  • レンズ形の板がいろいろな向きに並び、板の中央に細い筋(ミッドリブ)がある。先にできた大きな板が粒を横切り、あとの板はそのあいだを埋めるので小さい。
  • 板のあいだに白い残留オーステナイトが残る。板どうしがぶつかった所に微小な割れが入ることがある。

明るく・暗く見える理由

  • 残留オーステナイトは腐食されにくく白く残り、マルテンサイトの板はそれより暗く見える。

腐食液と見え方

  • ナイタールで腐食する。焼入れ温度が高すぎた工具鋼では、残留オーステナイトと考えられる白い組織が多く見える。

できる条件(合金と熱処理)

  • 炭素が約0.6%を超えると板(レンズ)がまじりはじめ、約1%を超えるとほぼ板になる。高炭素鋼(工具鋼など)を高い温度から焼き入れる。
  • 炭素が約0.4%を超えると、室温まで冷やしても残留オーステナイトが残りはじめる。

性質

  • マルテンサイトの最高硬さは炭素0.8〜1.0%で HRC 66。それより炭素が多いと残留オーステナイトが増えるので、硬さは上がらない。 [1]
  • 板どうしがぶつかってできる微小割れがあるので、板状のマルテンサイトはたいていの用途で避けられる。 [1]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 中央に筋(ミッドリブ)のあるレンズ形の板
  • 板のあいだに白い残留オーステナイト
  • 大きい板と小さい板がまじる

関連する用語: マルテンサイト

計算ツールで確かめる: 鉄–炭素状態図ビューア

  1. 鋼のマルテンサイト変態についての説明として正しいものはどれか。
焼戻しマルテンサイトマルテンサイトの形が残ったまま、地が濃くなる
模式図。倍率の目安 ×500(図の幅 200 µm)

見えるもの

  • ラスや板のもとの形と旧オーステナイト粒界が残るが、焼入れままより地が濃く(暗く)見える。
  • 高温で長く焼き戻すほど炭化物の粒子が大きくなり、針の形はしだいに消えて、等軸のフェライトに近づく(600℃で2時間と4日の比較)。

明るく・暗く見える理由

  • 焼き戻すとマルテンサイトが分解し(過飽和の炭素が細かい炭化物として出る)、地が濃く見えるようになる。

腐食液と見え方

  • ピクラールは焼入れ焼戻し鋼の炭化物の分布を見るのに使う。ナイタールでも腐食できる。

できる条件(合金と熱処理)

  • 焼入れした鋼を A1(727℃)より低い温度に再加熱する(焼戻し)。温度が高く時間が長いほど軟らかくなる。

性質

  • 4340鋼を油焼入れし200℃で焼き戻した例で 52 HRC。 [1]
  • 炭素約0.85%の工具鋼(SK85)を780℃から焼き入れた例で、200℃までの焼戻しなら 700 HV 以上、400℃では 400 HV 程度。 [4]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • マルテンサイトの筋の形が残る
  • 全体に暗く(濃く)見える
  • 旧オーステナイト粒界が見える

関連する用語: 焼戻し マルテンサイト

  1. 焼入れした鋼に焼戻しを行う主な目的はどれか。

鋳鉄

ねずみ鋳鉄(片状黒鉛鋳鉄)灰色の地に、曲がった黒い片(黒鉛)が散らばる
模式図。倍率の目安 ×100(図の幅 1 mm)

見えるもの

  • 黒く細長い片状の黒鉛が、曲がったり枝分かれしたりしながら散らばる。大きさのそろった片がばらばらの向きに分布するのが A 型の黒鉛。
  • 地(基地)はパーライト、フェライト、またはその混合。

明るく・暗く見える理由

  • 黒鉛は腐食しなくても見える。ナイタールで腐食すると、地のパーライトが出る。

腐食液と見え方

  • まず腐食せずに黒鉛の形と分布を見てから、ナイタール(2%、10〜30秒)で地の組織を出す。

できる条件(合金と熱処理)

  • 炭素の多い(Fe–C 状態図で2.14%を超える)鉄に、ケイ素を比較的多く含ませて(例: 2.5〜2.7%)鋳造し、共晶反応の温度域をゆっくり〜中くらいの速さで冷やすと、凝固のとき炭素が片状の黒鉛として晶出する。ケイ素が少なかったり冷却が速かったりすると、黒鉛になりにくい。
  • 細かい片や点が、もとのオーステナイトの枝(デンドライト)のあいだに並ぶ D 型の黒鉛は、機械的性質を下げるので望ましくない。

性質

  • 自動車用ねずみ鋳鉄の規格の例で、パーライトの地の G3000 は HB 187〜241、フェライト・パーライトの地の G1800 は HB 187 以下。 [4]
  • ねずみ鋳鉄は、削りやすく、溶ける温度が低く、耐摩耗性と鋳型の形の写りがよいなど、技術的に役立つ性質をもつ。 [1]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 曲がった黒い片が散らばる
  • 片の両端はとがる
  • 腐食しなくても黒鉛は見える

関連する用語: 共晶反応

計算ツールで確かめる: 鉄–炭素状態図ビューア

球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)黒い球を、白いフェライトの輪(ブルズアイ)が囲む
模式図。倍率の目安 ×100(図の幅 1 mm)

見えるもの

  • 黒く丸い球状の黒鉛が散らばる。
  • 黒鉛のまわりを白いフェライトが輪のように囲み(ブルズアイ組織)、その外側が暗いパーライト。地はフェライトとパーライトの混合のことが多い。

明るく・暗く見える理由

  • 黒鉛は腐食しなくても黒い。ナイタールで腐食すると、パーライトは暗い島、フェライトは明るい地になる。

腐食液と見え方

  • まず腐食せずに黒鉛の形(どれだけ丸いか)を見て、ナイタール(2%)で地を出す。

できる条件(合金と熱処理)

  • 鋳鉄の溶湯に少量のマグネシウムを加えて鋳造すると、黒鉛が球になる。
  • 鋳放しではフェライトとパーライトの混合の地が多い。焼なましで地を全部フェライトに、焼ならしでほぼパーライトにできる。

性質

  • 鋳放しでは、パーライトが増えるほど強さと硬さが上がる。 [3]
  • 地が全部フェライトのとき引張強さが小さい。JIS G 5502 の記号 FCD のあとの3桁の数字は引張強さ(N/mm²)。 [4]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 黒く丸い球
  • 球のまわりに白い輪
  • その外側は暗いパーライト

計算ツールで確かめる: 鉄–炭素状態図ビューア

凝固の組織

デンドライト(樹枝状晶)幹から直角に枝の並んだ、木の枝のような模様
模式図。倍率の目安 ×50(図の幅 2 mm)

見えるもの

  • 幹(1次の枝)から、ほぼ直角に2次の枝が並んで出た、木の枝やシダの葉のような模様。
  • 枝の芯と、枝のあいだ(最後に固まった所)で明るさが違う。

明るく・暗く見える理由

  • 鋳造で冷えるのが速いと固体の中の拡散が追いつかず、芯から外側へ組成が変わる(偏析・有芯組織)。組成によって腐食の速さが違うので、芯と枝のあいだで明るさが変わる。

腐食液と見え方

  • 銅合金(Cu–4%Sn の青銅)では、塩化鉄(III)のアルコール液で Sn の偏析がはっきり出る。

できる条件(合金と熱処理)

  • 合金を鋳造し、液体から固まるとき。凝固の温度の幅が広い合金ほど偏析が出やすい(Cu–4%Sn は凝固の幅が100℃を超える)。
  • 焼なましで偏析を減らすと、等軸の粒の組織になる(Cu–4%Sn を700℃で2時間焼なました例)。

性質

  • 凝固のときの体積の収縮で、微小な空孔(ミクロポロシティ)が残ることがある。 [2]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 幹から直角に並ぶ枝
  • 芯と枝のあいだで明るさが違う
  • 鋳造したままの組織

関連する用語: 柱状晶 引け巣

  1. Cu-Ni合金を、実際の鋳造のように速く冷却して凝固させたとき、デンドライト(樹枝状晶)の中心部の組成として正しいものはどれか。
  2. 同じ形状の炭素鋼の部品を、鋳造でつくった場合と熱間鍛造でつくった場合で比べると、一般に鍛造品のほうが靭性や疲労強度に優れる。その理由として正しいものはどれか。
共晶組織(Pb–Sn など)暗い層と明るい層が交互に並ぶ。2つの層の太さが近い
模式図。倍率の目安 ×1,000(図の幅 100 µm)

見えるもの

  • 暗い層と明るい層が交互に並び、層の向きのそろった区画(コロニー)ごとに向きが変わる。
  • 層を斜めに切った所では、曲がった線や点に見える。

明るく・暗く見える理由

  • Pb–Sn の共晶では、暗い層が Pb に富む α 相、明るい層が Sn に富む β 相。
  • 共晶温度での2相の質量分率は、てこの規則で α が (97.8 − 61.9)/(97.8 − 18.3) ≈ 0.45 なので、2つの層の太さが近い。

腐食液と見え方

  • 腐食液は合金ごとに違う(Bi–Cd の共晶の例では塩化鉄(III)のアルコール液)。

できる条件(合金と熱処理)

  • 共晶組成(Pb–Sn では 61.9 wt% Sn)の合金を液体から冷やすと、共晶温度(183℃)で液体が2つの固相に同時に変わり(L → α + β)、2相が協力して層状に育つ。
  • 共晶組成からずれた合金(例: Pb–30 wt% Sn)では、先にできた初晶 α の粒のまわりを共晶組織が埋める。

性質

  • 共晶組成の合金は、液体がすべて共晶温度という1つの温度で固まる。 [3]

見まちがえやすい組織と見分け方

  • パーライト(共析鋼): パーライトは固体の鋼の中でできる共析組織で、セメンタイトの層はフェライトの層よりずっと薄い(質量分率で約0.11)。Pb–Sn の共晶の2相は層の太さが近い。
  • 上部ベイナイト: 上部ベイナイトは粒界から育つ羽毛状の束で、層が交互にそろって並ぶ縞にはならない。

見分けの手がかり

  • 暗い層と明るい層が交互に並ぶ
  • 2つの層の太さが近い
  • 区画ごとに層の向きが変わる

関連する用語: 共晶反応 てこの規則 ギブスの相律

計算ツールで確かめる: 2元系状態図ラボ(てこの規則 計算ツール)

  1. Pb-Sn系の共晶温度を183℃、共晶組成を61.9 wt%Sn、その温度でのα相の組成を18.3 wt%Sn、β相の組成を97.8 wt%Snとする。30 wt%Snの合金を共晶温度のすぐ下まで平衡冷却したとき、組織に占める共晶組織の質量分率はどれに最も近いか。
  2. 圧力一定のもとで、二元系の共晶点(液相と2つの固相が共存する点)における自由度はどれか。

粒の形・大きさと析出物

オーステナイト(焼なまし双晶)等軸の粒の中を、まっすぐで平行な2本線の帯が横切る
模式図。倍率の目安 ×200(図の幅 500 µm)

見えるもの

  • 等軸の粒の中に、まっすぐで平行な2本の境界にはさまれた帯(焼なまし双晶)がある。帯は粒を端から端まで横切ることが多い。
  • 粒ごとに明るさが違う。

明るく・暗く見える理由

  • 粒の明るさの違いは、結晶の向きによる腐食の速さの違い。双晶の帯はまわりと結晶の向きが違うので、明るさが違って見える。

腐食液と見え方

  • オーステナイト系ステンレス鋼では、グリセレジア(粒界と双晶を出す一般用)や10%シュウ酸の電解腐食を使う。黄銅などの銅合金では、塩化鉄(III)の液や過硫酸アンモニウムで腐食する。

できる条件(合金と熱処理)

  • 面心立方の金属(SUS304 などのオーステナイト系ステンレス鋼、銅や黄銅など)を冷間加工し、焼なまして再結晶・粒成長させる。
  • SUS304 は Ni を含むので、室温まで冷やしてもオーステナイトのまま残る(焼入れで硬くならない)。

性質

  • オーステナイト系ステンレス鋼は熱処理では硬化できず、高温から急冷すると最も軟らかくなる。強さは冷間加工で調整する。 [4]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 粒の中にまっすぐで平行な2本線の帯
  • 粒は等軸
  • 粒界は細い線

関連する用語: ステンレス鋼 再結晶 黄銅

  1. 18%Cr-8%Niのオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の性質として正しいものはどれか。
  2. 冷間加工した金属を加熱したときの再結晶についての説明として正しいものはどれか。
析出物(粒界に並ぶ析出と粒内の粒子)粒界が黒い粒子の列や溝でふちどられ、粒の中にも点が散らばる
模式図。倍率の目安 ×500(図の幅 200 µm)

見えるもの

  • 粒界に沿って析出物の粒子が並ぶと、粒界が太く黒い線(溝)になる。粒の中にもまばらに粒子が見える。
  • 鋭敏化したオーステナイト系ステンレス鋼をシュウ酸で電解腐食すると、粒が溝ですっかり囲まれた溝状組織(ditch)になる。粒界に溝のない段状組織(step)は鋭敏化していないと判定され、一部の粒界だけに溝があって溝で囲まれた粒のない混合組織(dual)はその中間。模式図は溝状組織の見え方。

明るく・暗く見える理由

  • 析出物とそのまわりは、母相と腐食の速さが違うので、粒界が線や点の列として浮かび上がる。

腐食液と見え方

  • 10%シュウ酸の電解腐食(ASTM A262 の Practice A)で、step・dual・ditch を判定する。シグマ相や炭化物も出る。

できる条件(合金と熱処理)

  • 過飽和の固溶体を加熱して保つと、第2相が粒界や粒の中に析出する。
  • オーステナイト系ステンレス鋼が約500〜800℃に加熱されると(溶接の熱影響部など)、粒界に Cr 炭化物が析出して鋭敏化する。
  • 光学顕微鏡で分かれるのは約500 nm より大きいものなので、析出硬化に効く細かい析出物は電子顕微鏡で見る。

性質

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 粒界が太く黒い溝や粒子の列
  • 粒の中にまばらな点
  • 粒の中に層や針はない

関連する用語: 鋭敏化 析出硬化 ステンレス鋼 溶接熱影響部

  1. SUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼を溶接すると、溶接線から少し離れた熱影響部で粒界腐食が起こることがある(ウェルドディケイ)。その原因と対策の組み合わせとして正しいものはどれか。
  2. Al-Cu合金(ジュラルミン系)の析出硬化処理の手順として正しいものはどれか。
混粒(粒の大きさの不ぞろい)大きな粒と、細かい粒の集まりがまじる
模式図。倍率の目安 ×100(図の幅 1 mm)

見えるもの

  • 大きさの大きく違う粒がまじる。粗い粒が細かい粒の中に散らばるもの、細かい粒が粗い粒のまわりを鎖のように囲むもの(ネックレス組織)、大きさの違う粒が帯状に交互に並ぶもの(多くは加工の方向に伸びる)などがある。

明るく・暗く見える理由

  • 粒界の線と粒ごとの明るさの違いは、ふつうの等軸の粒と同じ。

腐食液と見え方

  • その金属で粒界を出すふつうの腐食液を使う(鋼ならナイタール)。

できる条件(合金と熱処理)

  • 粒の大きさが、部分ごとに違う分布になったとき。大きさがランダムにまじる型と、模様(ネックレス・帯・断面での変化)をつくる型に分けて記述する。

性質

  • 大きさの違う粒がまじった試料に平均の粒度番号を1つだけ付けても組織を正しく表せず、実際にはない大きさを報告することもある。ASTM E1181 で混粒の型と割合を記述する。 [1]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 粗い粒と細かい粒の集まりがまじる
  • 粒の形は等軸
  • 粒の大きさが場所によって大きく違う

関連する用語: 再結晶 ホール・ペッチの関係

加工組織(冷間加工で伸びた粒)加工の方向に伸びた粒と、粒の中の平行なすべり帯
模式図。倍率の目安 ×200(図の幅 500 µm)

見えるもの

  • 圧延や引抜きの方向に粒が伸び、粒の中に平行な線(すべり帯)が出る。違う向きのすべり帯が交差する所もある。
  • 加工の前にあった双晶は曲がる(黄銅の例)。

明るく・暗く見える理由

  • すべり帯は変形が集中した所で、細い平行線として見える。

腐食液と見え方

  • 銅合金では塩化鉄(III)のアルコール液で腐食する。鋼ならナイタール。

できる条件(合金と熱処理)

  • 再結晶温度より低い温度で、圧延・引抜き・圧縮などの塑性加工をする(冷間加工)。
  • 加工したあと焼なますと、回復・再結晶でひずみのない等軸の粒にもどる。

性質

  • 塑性加工で転位の密度が上がって動きにくくなり、加工硬化する(焼なまし材で約10¹⁰ m⁻²、冷間加工材で約10¹⁶ m⁻²)。 [3]

見まちがえやすい組織と見分け方

見分けの手がかり

  • 粒が一方向に伸びる
  • 粒の中に平行なすべり帯
  • 粒界は残る

関連する用語: 加工硬化 回復 再結晶

  1. 直径10.0 mmの銅線を引き抜いて直径8.0 mmにした。冷間加工度(断面減少率)はどれか。
  2. 冷間加工した金属を加熱したときの再結晶についての説明として正しいものはどれか。
  3. 冷間加工した金属を、再結晶が起こらない程度の温度で加熱したときに起こる回復についての説明として正しいものはどれか。

結晶粒度(粒度番号と平均粒径)

結晶粒の大きさは、規格の粒度番号 G で表します。番号が1つ大きくなると、同じ面積に入る粒の数が2倍になります(粒が細かいほど番号が大きい)。つまみで G を変えると、その番号の大きさの粒で図を描き直し、換算の値を出します。

規格

比較法のイメージ

同じ倍率で、番号が1つずつ違う粒を並べます。比較法では、このような標準図と試料を見比べて番号を決めます。

測り方

比較法
腐食した試料を ×100 で見て、標準図(粒度の違う図の組)と見比べ、いちばん近い番号を選ぶ方法。手早いが、人によって ±0.5 ほどばらつき、粗めに判定する傾向がある。×100 以外の倍率 M で見比べたときは、読んだ番号に Q = 6.6439 × log₁₀(M/100) を足す。
計数法(面積法)
決まった面積の中の粒を数える方法。枠の中にすっかり入った粒を1、枠に掛かる粒を1/2、四隅の粒を合わせて1と数え、1 mm²当たりの粒の数を出す。
切断法(線分法)
試験線を引き、粒界と交わる点の数 P を数える方法。試験線 1 mm当たりの交点の数 P_L = P/L から、平均の線分長 ℓ̄ = 1/P_L を出し、番号に換算する。

換算の式

JIS G 0551 は ISO 643 にもとづき、1 mm² 当たり m = 8 × 2^G 個と定めます。ASTM E112 では 1 mm² 当たり 15.50 × 2^(G−1) = 7.75 × 2^G 個なので、同じ組織を数えても JIS の番号は ASTM の番号より約0.05小さくなります。切断法の換算(G = 0 で ℓ̄ = 0.320 mm)は両方の規格で同じです。模式図の粒は平面でつくった多角形(ボロノイ分割)で、枠の外まで続いています。計数法で出す番号は、数える粒が少ないほどばらつきます。切断法の番号への換算(平均の線分長と粒の数の関係)は立体の等軸粒を切った断面の形を前提にしているので、形のそろった多角形の図では、切断法の番号がやや大きめに出ることがあります。

見分ける練習

模式図を見て、組織の名前を選びます。答えると、見分けの手がかりと、選んだ組織との見分け方が出ます。図は毎回少し違う形で描かれます。

この模式図の組織はどれ?

記録はこのブラウザの中だけに保存し、どこにも送りません。答える前にコピーしたリンクなら、受け取った人も同じ図で解けます。答えたあとのリンクは、選んだ答えと結果を開きます。

よくある質問

この図は顕微鏡写真ですか?

いいえ。すべて手続き的に描いた模式図です。粒界はボロノイ分割、パーライトや共晶は層、マルテンサイトはラスや板、黒鉛は片や球の簡単な形で描き、描くたびに乱数で少し形を変えています。明暗の関係は典型的な腐食の見え方に合わせていますが、実際の写真とは色・コントラスト・形が違うことがあります。

なぜパーライトは黒く見えるのですか?

腐食でフェライトが先に溶け、硬いセメンタイトの薄い層がわずかに浮き出るためです。光学顕微鏡では両方の相とも白いのですが、層の段差の影が黒い線になり、層が細かいほど全体が暗く見えます。

ナイタールとピクラールはどう使い分けますか?

ナイタールはフェライトの粒界を出すので、粒の大きさやフェライトの量を見るときに使います。ピクラールはフェライトの粒界をほとんど出さず、セメンタイトをくっきり出すので、パーライトの層や球状化組織・焼戻しの炭化物の分布を見るときに使います。両方を見たいときは組み合わせます。

下部ベイナイトと焼戻しマルテンサイトを光学顕微鏡で見分けられますか?

難しいことが多いです。どちらも暗く腐食される針状の組織で、違いは板の中の炭化物の向き(下部ベイナイトは1つの向きにそろうことが多く、焼戻しマルテンサイトは数種類の向き)にあり、電子顕微鏡で見ます。どんな熱処理をしたか(恒温変態か、焼入れのあとの焼戻しか)も大事な手がかりです。

練習の記録はどこに保存されますか?

連続正解の数と、まちがえた組織の記録は、このブラウザの中(localStorage)だけに保存されます。サーバーには送られません。問題と選んだ答えは URL に残るので、リンクを送ると同じ問題と答え合わせを開けます。

関連する分野