溶接熱影響部とは
ようせつねつえいきょうぶ
溶接で溶けなかったが、溶接の熱で組織や性質が変わった母材の部分。HAZともいう。硬化、軟化、粗粒化、鋭敏化などが起こる。
「溶接熱影響部」は、1分野の4問の練習問題に出てきます(材料の加工と接合など)。
この用語の分野: 材料の加工と接合
ようせつねつえいきょうぶ
溶接で溶けなかったが、溶接の熱で組織や性質が変わった母材の部分。HAZともいう。硬化、軟化、粗粒化、鋭敏化などが起こる。
「溶接熱影響部」は、1分野の4問の練習問題に出てきます(材料の加工と接合など)。
この用語の分野: 材料の加工と接合
アーク溶接などの溶融溶接の継手は、溶けて凝固した溶接金属、その外側で溶けずに熱だけを受けた溶接熱影響部(HAZ)、熱の影響をほとんど受けない母材に分けられます。HAZの中でも、溶接金属との境界(ボンド部)に近いほど最高到達温度が高く、離れるほど低くなります。鋼のHAZは、最高到達温度に応じて、結晶粒が大きく育った粗粒域、変態で細かくなった細粒域、一部だけが変態した二相域、変態しない焼戻し域などの帯に分かれ、それぞれ硬さや靭性が違います。
鋼のHAZのうちオーステナイトまで加熱された部分は、周りの冷たい母材に熱を奪われて急冷されるので、焼入れ性の高い鋼ではマルテンサイトになって硬くなります。硬い組織、溶接金属から入る拡散性水素、拘束による引張応力がそろうと、溶接後しばらくしてから低温割れが起こります。焼入れ性の目安が炭素当量で、これが高い鋼では予熱や後熱で冷却を遅くし、水素を逃がします。入熱を大きくしても冷却は遅くなりますが、粗粒域の結晶粒が大きくなりすぎて靭性が下がることがあります。
HAZで起こる問題は材料によって違います。オーステナイト系ステンレス鋼では、約500〜800℃にさらされた帯で粒界にCr炭化物が析出して鋭敏化し、粒界腐食の原因になります。析出硬化させたアルミニウム合金や、冷間加工で強化した材料では、析出物が粗大化したり再結晶したりしてHAZが軟化し、継手の強度が母材より低くなります。焼入れ焼戻しで強化した高強度鋼でも、焼戻し温度より高く加熱された部分が軟化することがあります。継手の設計では、こうしたHAZの強度低下も見込む必要があります。
正解:A. 溶接部の冷却を遅くして硬いマルテンサイトをできにくくし、拡散性水素が抜け出す時間を与える
低温割れは、溶接金属に入った拡散性水素、硬く靭性の低い組織(マルテンサイト)、溶接部の拘束による引張応力の3つがそろうと起こります。予熱をすると、800〜500℃の範囲を通る冷却時間が長くなって硬化が抑えられ、さらに高温に保たれる時間が延びて水素が外へ拡散して抜けやすくなります。低水素系の溶接棒を乾燥させて使うことや、溶接直後の後熱も同じ目的の対策です。高温割れ(凝固割れ)は、凝固の最終段階でPやSなどが偏析した液膜が引き裂かれるもので、仕組みも対策も異なります。急冷して硬くすると、低温割れはむしろ起こりやすくなります。
正解:C. 約500〜800℃の熱影響部の粒界にCr炭化物が析出しCrが欠乏する。SUS304LやTi・Nb添加鋼を使う
溶接線から少し離れた熱影響部には、約500〜800℃の温度に一定時間さらされる帯があります。そこでは結晶粒界にCr₂₃C₆などのCr炭化物が析出し、粒界のすぐそばのCr濃度が不動態を保てない値まで下がるので、粒界に沿って腐食が進みます。これを鋭敏化といいます。対策は、炭化物をつくる炭素を減らした低炭素鋼(SUS304L)を使うこと、炭素をTiやNbの炭化物として固定した安定化鋼(SUS321やSUS347)を使うこと、溶接後に固溶化熱処理をして炭化物を再び固溶させることです。オーステナイト系ステンレス鋼は焼入れでマルテンサイトにならず、Crの蒸発も主な原因ではありません。
溶接法と入熱で大きく変わります。アーク溶接では数mm程度になることが多く、エネルギー密度の高いレーザー溶接や電子ビーム溶接では入熱が小さいのでずっと狭くなります。入熱が大きいほど、また板が薄く熱が逃げにくいほど、熱影響部は広くなります。
ある程度は可能です。鋼では溶接後熱処理(応力除去焼なまし)で残留応力を下げ、硬くなった部分を焼き戻して靭性を回復させます。ステンレス鋼の鋭敏化は固溶化熱処理で炭化物を再び固溶させて元に戻せます。ただし大型の構造物では全体を熱処理するのが難しいので、材料と溶接条件の選択で問題を防ぐのが基本です。
あります。材料は溶けませんが、摩擦熱で加熱されるので、攪拌部の外側に、熱と変形を受けた熱加工影響部と、熱だけを受けた熱影響部ができます。析出硬化型のアルミニウム合金では、この部分で析出物が粗大化して軟化し、継手の強度が最も低くなることがあります。
溶接線から少し離れた熱影響部には、約500〜800℃の温度に一定時間さらされる帯があります。
SUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼を溶接すると、溶接線から少し離れた熱影響部で粒界腐食が起こることがある(…Ceqが高い鋼ほど、溶接の熱影響部が急冷されて硬いマルテンサイトになりやすく、低温割れの危険が高くなります。
鋼の溶接性の目安となる炭素当量を Ceq = C + Mn/6 + (Cr + Mo + V)/5 + (Ni + C…入熱が大きいと溶接部の冷却が遅くなり、熱影響部が硬くなりにくい一方、高温にさらされる時間が長くなって結晶粒が粗大化し、靭性が下がることがあります。
アーク溶接を、電圧25 V、電流200 A、溶接速度300 mm/minで行う。アークの熱効率を0.80とすると、溶接…マルテンサイト ステンレス鋼 不動態 鋭敏化 炭素当量 焼入れ性 インベストメント鋳造 押出し スプリングバック 熱間静水圧プレス