再結晶とは

さいけっしょう

加工ひずみを蓄えた金属を加熱したとき、ひずみのない新しい結晶粒が生まれて成長する現象。強度が下がり延性が回復する。

「再結晶」は、4分野の7問の練習問題に出てきます(熱処理と金属材料, 金属材料と合金, 材料の加工と接合など)。

この用語の分野: 金属材料と合金

駆動力と核の生まれ方

再結晶の駆動力は、加工で蓄えられた転位のエネルギーです。加熱すると、ひずみの大きな領域で、回復でできた亜結晶粒の一部が周囲より速く成長し、大きな角度の粒界をもつ新しい粒(再結晶核)になります。この粒は、転位の多いまわりの組織を食いながら粒界を移動させて広がり、最後には全体がひずみの少ない粒で置き換わります。再結晶の進み方は時間に対してS字形の曲線になり、ジョンソン・メール・アブラミ・コルモゴロフ(JMAK)の式 X = 1 − exp(−ktⁿ) でよく表されます。

再結晶温度と加工度

再結晶温度は、ふつう1時間で再結晶が終わる温度として定義され、目安は融点(絶対温度)の0.3〜0.5倍です。純度が高いほど低く、例えば高純度の銅は約120℃と、融点の約0.3倍で再結晶します。少量の溶質は粒界の移動を妨げるので、再結晶温度を大きく上げます。また、加工度が大きいほど蓄積エネルギーと核の数が増えるので、再結晶温度は下がり、再結晶後の粒は細かくなります。再結晶が終わるまでの時間は温度に強く依存し、温度を少し上げるだけで大きく短くなります。

粒成長・二次再結晶との区別

再結晶が終わったあとも加熱を続けると、粒界のエネルギーを減らすために大きな粒が小さな粒を食って成長します。駆動力が粒界のエネルギーで、蓄積エネルギーが駆動力の再結晶とは別の段階です。一部の粒だけが異常に大きくなる現象を二次再結晶(異常粒成長)といい、方向性電磁鋼板では、析出物で通常の粒成長を抑えておき、ゴス方位の粒だけを二次再結晶させて方位をそろえています。再結晶したばかりの粒も特定の方位に偏っていることが多く(再結晶集合組織)、板の成形性に影響します。

熱間加工と製造工程での役割

熱間加工と冷間加工は、再結晶温度より上で加工するかどうかで区別します。熱間圧延や鍛造では、変形の途中や直後に再結晶(動的再結晶・静的再結晶)が起こり、粗い鋳造組織が細かい粒に変わります。冷間加工の工程では、加工硬化して伸びが少なくなった材料を中間焼なましで再結晶させ、延性を戻してから次の加工に進みます。最終の焼なましの温度と時間を変えると粒の大きさを調整でき、ホール・ペッチの関係を通して強さと成形性を作り分けられます。

再結晶の練習問題に挑戦

冷間加工した金属を加熱したときの再結晶についての説明として正しいものはどれか。

  1. Aひずみの少ない新しい結晶粒が生成し、強度は下がって延性が回復する
  2. B加工度が大きいほど、再結晶の温度は高くなる
  3. C再結晶が終わると、加熱を続けても結晶粒は大きくならない
答えと解説を見る

正解:A. ひずみの少ない新しい結晶粒が生成し、強度は下がって延性が回復する

冷間加工した金属を加熱すると、まず転位の再配列で内部応力が下がる回復が起こり、さらに高温では、蓄積したひずみエネルギーを駆動力として、ひずみの少ない新しい結晶粒が生まれて成長する再結晶が起こります。転位密度が大きく下がるため、強度と硬さは低下し、延性が回復します。加工度が大きいほど蓄積エネルギーが大きいので、再結晶の温度は低くなります。再結晶の温度の目安は融点(絶対温度)の0.3〜0.5倍程度ですが、加工度や純度で変わります。再結晶のあとも加熱を続けると、粒界のエネルギーを減らすために粒成長が進みます。

冷間加工した金属を、再結晶が起こらない程度の温度で加熱したときに起こる回復についての説明として正しいものはどれか。

  1. A転位が再配列して内部応力が下がるが、硬さや強度はあまり下がらない
  2. Bひずみのない新しい結晶粒に置き換わり、転位密度が下がって硬さが大きく下がる
  3. C粒界が移動して結晶粒が数倍の大きさまで粗大化し、硬さも強度も大きく下がる
答えと解説を見る

正解:A. 転位が再配列して内部応力が下がるが、硬さや強度はあまり下がらない

回復は、加工で増えた転位が消滅したり、低いエネルギーの配列(小角粒界をつくるポリゴン化)に並び替わったりする過程です。転位の総量は大きくは減らないので、硬さや強度はあまり下がりませんが、内部応力(残留応力)が下がり、点欠陥の減少などで電気抵抗はよく回復します。加工品の形を保ったまま応力だけを除きたいときの応力除去焼なましは、この回復を利用しています。ひずみのない新しい結晶粒が生まれ、転位密度が大きく下がって硬さが低下するのは、より高温で起こる再結晶です。結晶粒の成長は再結晶のあとに続く粒成長で、どちらも回復とは別の段階です。

よくある質問

再結晶温度は融点の何倍ですか?

目安は融点(絶対温度)の0.3〜0.5倍です。ただし純度、加工度、加熱時間で大きく変わるので、材料ごとの値は実験で確かめる必要があります。

再結晶で結晶構造は変わりますか?

変わりません。再結晶は同じ相のまま、ひずみの多い粒がひずみの少ない粒に置き換わる現象です。鋼のオーステナイトへの変態のように結晶構造が変わる変化とは別物です。

臨界加工度とは何ですか?

再結晶が起こるのに必要な最小の加工度で、数%程度のことが多いです。この付近の加工度で焼なますと核が少ないので粒が非常に粗くなり、表面の肌荒れや強度の低下の原因になります。

解説の中の「再結晶」

「再結晶」が出てくる問題(7問)

  1. 冷間加工した金属を加熱したときの再結晶についての説明として正しいものはどれか。
  2. 冷間加工した金属を、再結晶が起こらない程度の温度で加熱したときに起こる回復についての説明として正しいものはどれか。
  3. 再結晶温度の目安を融点(絶対温度)の0.4倍とするとき、熱間加工にあたるのはどれか。融点は鉛327℃、タングステン3422℃、鉄1538℃とする。
  4. 直径10.0 mmの銅線を引き抜いて直径8.0 mmにした。冷間加工度(断面減少率)はどれか。
  5. 変圧器の鉄心に使う方向性電磁鋼板(Fe-約3%Si)が、圧延方向に磁化したときに特に損失が小さく透磁率が高い理由として正しいものはどれか。
  6. 同じ形状の炭素鋼の部品を、鋳造でつくった場合と熱間鍛造でつくった場合で比べると、一般に鍛造品のほうが靭性や疲労強度に優れる。その理由として正しいものはどれか。
  7. 摩擦攪拌接合(FSW)の特徴として正しいものはどれか。

関連する用語

回復 転位 加工硬化 結晶磁気異方性 渦電流損失 柱状晶 引け巣 黄銅 固溶強化 ステンレス鋼

用語集の一覧へ