加工硬化とは

かこうこうか

塑性変形で転位が増えて互いに絡み合い、変形に必要な応力が高くなる現象。強度は上がるが延性は下がる。ひずみ硬化ともいう。

「加工硬化」は、6分野の9問の練習問題に出てきます(金属材料と合金, 熱処理と金属材料, 機械的性質と破壊など)。

この用語の分野: 金属材料と合金

転位が増えて強くなる

金属を塑性変形させると、転位が増殖して密度が数けたも増え、互いの応力場で引き合ったり絡み合ったりして動きにくくなります。そのため、さらに変形させるにはより大きな応力が必要になります。これが加工硬化です。冷間圧延した板や引き抜いた線が加工前より強いのはこのためで、熱処理で強化できない純金属や、5000系アルミニウム合金、オーステナイト系ステンレス鋼などでは、加工硬化が主な強化法として使われます。その代わり、延性や靭性は下がります。

加工硬化指数n

塑性域の真応力と真ひずみの関係は、多くの金属で σ = Kεⁿ と近似でき、nを加工硬化指数(ひずみ硬化指数)、Kを強度係数と呼びます。nが大きいほど変形が進むにつれて強くなりやすく、局所的な変形が広がりにくいので、くびれが遅れて一様伸びが大きくなります。体積一定のもとでは、くびれは真ひずみがnに等しくなったところで始まると見積もれます。焼なましたFCCの銅やオーステナイト系ステンレス鋼はnが大きく、張出し成形のように板が伸びて薄くなる成形に向いています(深絞りのしやすさは、おもに r 値で決まります)。

加熱による軟化

加工硬化した金属を加熱すると、まず転位の再配列で内部応力が下がる回復が起こり、さらに高温では新しい結晶粒が生まれる再結晶によって強度が大きく下がり、延性が戻ります。冷間加工と焼なましを繰り返すと、大きな変形を割れずに加えられます。再結晶温度より上で加工する熱間加工では、加工中に回復と再結晶が進むので加工硬化がほとんど残らず、大きな変形を小さな力で加えられますが、表面の酸化や寸法精度の点では冷間加工に劣ります。

加工硬化の練習問題に挑戦

鋼のヤング率についての説明として正しいものはどれか。

  1. A焼入れや冷間加工で強度が2倍になると、ヤング率もほぼ2倍になる
  2. B原子間の結合の強さで決まり、熱処理や加工による変化は小さい
  3. C降伏応力を降伏までの全ひずみで割った値で、塑性域の傾きを表す
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正解:B. 原子間の結合の強さで決まり、熱処理や加工による変化は小さい

ヤング率は弾性域での応力とひずみの比 E = σ/ε で、原子間の結合の強さ(原子間ポテンシャルの曲率)で決まる、組織に鈍感な性質です。そのため軟鋼でも焼入れ鋼でも約200 GPa前後でほとんど変わらず、強度が2倍になってもヤング率は2倍になりません。降伏強さや硬さは転位の動きやすさで決まる組織に敏感な性質で、熱処理や加工で大きく変わります。ヤング率は弾性域の直線の傾きであり、塑性域の傾き(加工硬化率)とは別のものです。温度が上がると結合が弱まり、ヤング率はゆるやかに低下します。

次のアルミニウム合金のうち、析出硬化による熱処理での強化ができない(非熱処理型の)ものはどれか。

  1. A2000系(Al-Cu系)
  2. B5000系(Al-Mg系)
  3. C6000系(Al-Mg-Si系)
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正解:B. 5000系(Al-Mg系)

5000系(Al-Mg系)は、Mgの固溶強化と冷間加工による加工硬化で強度を得る非熱処理型の合金で、耐食性や溶接性に優れ、船舶やタンクに使われます。2000系(Al-Cu系)はジュラルミンに代表される熱処理型で、Al-Cu系の析出物で強化されます。6000系(Al-Mg-Si系)もMg-Si系の析出物による熱処理型で、押出形材に広く使われます。ほかに7000系(Al-Zn-Mg系)は最も高強度の熱処理型、1000系(純アルミニウム)と3000系(Al-Mn系)は非熱処理型です。合金系から、強化の仕組みが析出か加工硬化かを判断できるようにしておきましょう。

よくある質問

加工硬化と析出硬化の違いは何ですか?

どちらも転位の運動を妨げて強くしますが、加工硬化は変形で増えた転位どうしの絡み合い、析出硬化は時効でできた微細な析出物が障害物になります。

加工度はどのように表しますか?

引き抜きや圧延では、断面積の減少率(冷間加工度)で表すのが一般的です。直径ではなく断面積で計算する点に注意しましょう。

加工硬化した材料を元の軟らかさに戻せますか?

再結晶温度より高い温度で焼なますと、ひずみのない新しい結晶粒ができて、強度と延性はほぼ加工前の状態に戻ります。

解説の中の「加工硬化」

「加工硬化」が出てくる問題(9問)

  1. 鋼のヤング率についての説明として正しいものはどれか。
  2. 次のアルミニウム合金のうち、析出硬化による熱処理での強化ができない(非熱処理型の)ものはどれか。
  3. 直径10.0 mmの銅線を引き抜いて直径8.0 mmにした。冷間加工度(断面減少率)はどれか。
  4. アルミニウム合金の記号「A6061-T6」の「T6」が表す処理はどれか。
  5. 焼なました銅の塑性域での真応力σと真ひずみεの関係が σ = Kεⁿ で表され、K = 530 MPa、n = 0.44 とする。真ひずみ0.10のときの真応力はどれに最も近いか。
  6. 再結晶温度の目安を融点(絶対温度)の0.4倍とするとき、熱間加工にあたるのはどれか。融点は鉛327℃、タングステン3422℃、鉄1538℃とする。
  7. 同じ形状の炭素鋼の部品を、鋳造でつくった場合と熱間鍛造でつくった場合で比べると、一般に鍛造品のほうが靭性や疲労強度に優れる。その理由として正しいものはどれか。
  8. 金属ガラスの室温での塑性変形についての説明として正しいものはどれか。
  9. 一定の荷重と温度のもとで測ったクリープ曲線(ひずみと時間の関係)の3つの段階についての説明として正しいものはどれか。

関連する用語

転位 再結晶 回復 ヤング率 原子間ポテンシャル 析出硬化 固溶強化 ステンレス鋼 柱状晶 引け巣

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