析出硬化とは
せきしゅつこうか
溶体化処理・急冷・時効によって微細な析出物を分散させ、転位の運動を妨げて強化する方法。Al-Cu合金などで使われ、時効が長すぎると過時効で軟化する。
「析出硬化」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(熱処理と金属材料など)。
この用語の分野: 熱処理と金属材料
せきしゅつこうか
溶体化処理・急冷・時効によって微細な析出物を分散させ、転位の運動を妨げて強化する方法。Al-Cu合金などで使われ、時効が長すぎると過時効で軟化する。
「析出硬化」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(熱処理と金属材料など)。
この用語の分野: 熱処理と金属材料
析出硬化には、高温では溶質がよく固溶し、温度が下がると溶解度が大きく減る状態図が必要です。Al-Cu系では、Cuの最大固溶限が548℃で約5.65 wt%あるのに、室温ではごくわずかしか固溶しません。そこで約500℃で溶体化処理して均一な固溶体にし、急冷して過飽和の固溶体を室温に持ち越します。これを室温や100〜200℃程度に保つ時効で、微細な析出物を一様に分散させます。溶解度が温度でほとんど変わらない合金では、この方法は使えません。
時効の初期にできるGPゾーンやθ″相は小さく、母相と原子の並びがつながった整合な析出物で、転位は析出物を切って通ります。この場合、析出物が大きくなるほど切るのに必要な応力が増えます。析出物が大きくなり間隔も広がると、転位は析出物を切らずに、その間を弓なりに張り出して通り抜けるオロワン機構に変わり、強さは間隔に反比例して下がります。2つの機構が入れ替わる大きさで強さが最大になり、これがピーク時効の状態です。
時効の温度が高いほど析出は速く進み、短時間で硬さのピークに達しますが、ピークの硬さは低めになります。アルミニウム合金の調質の記号では、溶体化処理後に自然時効したものをT4、人工時効でピークに近づけたものをT6、さらに過時効させたものをT7と表します。時効の条件は、必要な強さと耐食性や靭性のバランスで選びます。7000系合金では、強さを少し下げてでも応力腐食割れに強くするために、意図的に過時効させたT7系の調質が航空機に使われています。
析出硬化は、Ni₃Tiなどで強化するマルエージング鋼、17-4PHのような析出硬化系ステンレス鋼、γ′相で強化するニッケル基超合金、銅合金の中で最も強いベリリウム銅などでも使われています。一方で、析出硬化した合金を高い温度で使ったり、溶接で加熱したりすると、析出物が粗大化して過時効になり、強さが下がります。溶接の熱影響部が軟化することや、使用温度の上限があることを考えて、部品の設計と材料の選択を行います。
正解:A. 溶体化処理 → 急冷 → 時効
まず固溶限より高い温度に保持してCuを固溶させる溶体化処理を行い、急冷して過飽和固溶体を室温に持ち越します。その後、室温(自然時効)や100〜200℃程度(人工時効)に保持すると、GPゾーン、θ″相、θ′相といった微細で母相と整合・半整合な析出物ができ、転位の運動を妨げて強度が上がります。時効を長く続けすぎると、安定なθ相(Al₂Cu)が粗大化して強度が下がる過時効になります。溶体化のあと徐冷すると、粗大な平衡相が析出して強化に役立たないので、急冷が欠かせません。
正解:B. 5000系(Al-Mg系)
5000系(Al-Mg系)は、Mgの固溶強化と冷間加工による加工硬化で強度を得る非熱処理型の合金で、耐食性や溶接性に優れ、船舶やタンクに使われます。2000系(Al-Cu系)はジュラルミンに代表される熱処理型で、Al-Cu系の析出物で強化されます。6000系(Al-Mg-Si系)もMg-Si系の析出物による熱処理型で、押出形材に広く使われます。ほかに7000系(Al-Zn-Mg系)は最も高強度の熱処理型、1000系(純アルミニウム)と3000系(Al-Mn系)は非熱処理型です。合金系から、強化の仕組みが析出か加工硬化かを判断できるようにしておきましょう。
ほぼ同じ意味で使われます。析出硬化は析出物で強化するという仕組みに注目した名前、時効硬化は時効という処理で硬くなることに注目した名前です。
自然時効は室温に置いて析出を進める方法、人工時効は100〜200℃程度に加熱して析出を進める方法です。人工時効のほうが早く進み、より高い強度が得られる合金が多くあります。
析出物が粗大化して数が減り、間隔が広がるので、転位が析出物の間を通り抜けやすくなるからです。整合な準安定相が安定なθ相などに変わることも、強化の効果を下げます。