Ni基超合金とは

にっけるきちょうごうきん

NiのFCCの母相に、L1₂型の規則相γ'(Ni₃Al)を多量に整合析出させた耐熱合金。タービン翼などに使われ、融点に近い温度まで強度を保つ。

「Ni基超合金」は、3分野の7問の練習問題に出てきます(高温材料とクリープ, 計算材料科学, 材料の加工と接合など)。

この用語の分野: 高温材料とクリープ

組織と強化のしくみ

Ni基超合金は、NiのFCC固溶体である母相γの中に、L1₂型の規則相γ'(Ni₃(Al,Ti))を立方体状に析出させた合金です。γとγ'は格子定数がほぼ等しく整合な界面をもつので、γ'は高温でも粗大化しにくく、単結晶翼用の合金では体積の60〜70%を占めます。γ中の転位がγ'に入ると規則配列が乱れて逆位相境界ができるため、転位は対になって進む必要があり、大きな抵抗を受けます。さらに、Cr、Mo、W、Reなどが母相を固溶強化します。

結晶粒の制御と単結晶翼

高温で長時間引っ張られるタービン翼では、応力に垂直な粒界がクリープ損傷の起点になります。そこで、鋳型の底から一方向に凝固させて粒界を応力の方向にそろえた柱状晶の翼がつくられ、さらに結晶を1つだけ選んで成長させた単結晶翼が開発されました。単結晶では粒界を強化するための元素を減らせるので、高温で溶体化処理を行ってγ'を均一に微細化できます。翼の長さ方向はヤング率が低い〈001〉方位にそろえ、熱応力を小さくします。

耐酸化性と被覆

高温のガスにさらされる翼の表面では、合金中のAlやCrが酸化してAl₂O₃やCr₂O₃の保護皮膜をつくります。強度を高める元素を多く加えるとAlやCrを減らさざるをえないこともあるため、表面にAlを多く含む被膜(アルミナイド被膜やMCrAlYの被覆)を施して耐酸化性を補います。さらに、ジルコニアの遮熱コーティングを重ねて金属の温度を下げ、内部の冷却の穴から空気を流して翼を冷やすことで、合金の融点を超えることもある温度のガスの中でも使えるようにしています。

Ni基超合金の練習問題に挑戦

Ni基超合金の高温強度を担うγ'相についての説明として正しいものはどれか。

  1. ABCCのB2型の規則相で、母相γとの格子定数の差が大きく界面が非整合なので、粒界や粒内に粗い粒子として析出して転位を強く止める
  2. BL1₂型の規則構造をもつNi₃Al(FCCをもとにした規則相)で、母相γと格子定数がほぼ等しく、整合な界面で微細に析出する
  3. C粒界に連続した膜状に析出するM₂₃C₆などの炭化物で、量が多いほど粒界すべりがよく止まり、高温での延性とクリープ強度がともに高まる
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正解:B. L1₂型の規則構造をもつNi₃Al(FCCをもとにした規則相)で、母相γと格子定数がほぼ等しく、整合な界面で微細に析出する

γ'相はNi₃(Al,Ti)の組成をもつL1₂型の規則相で、FCCの格子の頂点をAl、面心をNiが占めます。母相γ(NiのFCC固溶体)との格子定数の差(ミスフィット)が小さいので、立方体状の微細な粒子が整合な界面で析出し、単結晶翼用の合金では体積の60〜70%に達します。γ中の転位がγ'に入ると規則配列が乱れて逆位相境界ができるので、転位は2本が対になって進む必要があり、大きな抵抗になります。γ'は高温まで安定で、降伏応力が約700〜800℃まで温度とともに上がる逆温度依存性も示します。BCCとする説明は結晶構造を、粒界の炭化物とする説明は別の相を取り違えており、膜状の炭化物はむしろもろさの原因になります。

ジェットエンジンのタービン翼に、一方向凝固による柱状晶や単結晶のNi基超合金が使われる理由として正しいものはどれか。

  1. A単結晶にすると転位がまったく存在しなくなり、クリープ変形が起こらなくなるから
  2. B単結晶にすると、粒界の強化に使う炭素やホウ素を多く加えられるようになり、それらの炭化物やホウ化物で強化できるから
  3. C応力に垂直な粒界をなくしてクリープ損傷の起点を除き、単結晶では粒界の強化元素を減らせるので、高温で溶体化処理してγ'を均一に微細化できるから
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正解:C. 応力に垂直な粒界をなくしてクリープ損傷の起点を除き、単結晶では粒界の強化元素を減らせるので、高温で溶体化処理してγ'を均一に微細化できるから

タービン翼は遠心力で長さ方向に引っ張られ、応力に垂直な粒界がクリープのボイドやき裂の起点になります。一方向凝固では結晶粒を応力の方向にそろえた柱状晶にして、垂直な粒界をなくします。さらに、結晶を1つだけ選んで成長させた単結晶翼では、粒界そのものがありません。粒界を強化するためのC、B、Zrなどが不要になると、合金が溶け始める温度が上がり、溶体化処理を高温で行ってγ'をいったん固溶させ、均一に微細に析出させられます。強化元素を多く加えるとする説明は、この関係を逆にしています。単結晶にも転位はあり、クリープは粒内の転位の運動として起こります。

よくある質問

なぜ超合金と呼ばれるのですか。

一般の鉄鋼などでは強度が大きく下がる高温でも、高い強度と耐酸化性を保つ合金として、この名前で呼ばれるようになりました。Ni基のほかに、Co基やFe-Ni基の超合金もあります。

γ'は温度が上がると弱くなりますか。

γ'のNi₃Alは、降伏応力が温度とともに上がる逆温度依存性を示し、およそ700〜800℃で最も強くなります。転位が動きにくい形に変わる交差すべりが熱で促されるためです。ただし、さらに高温ではγ'が粗大化したり固溶したりして、強度は下がります。

Reを入れすぎるとどうなりますか。

Reは拡散を遅くしてクリープ強度を高めますが、多すぎると、σ相などのもろいTCP相が針状や板状に析出しやすくなり、強度や延性が下がります。Reは高価で密度も大きいので、添加量はこれらのつり合いで決められます。

解説の中の「Ni基超合金」

「Ni基超合金」が出てくる問題(7問)

  1. Ni基超合金の高温強度を担うγ'相についての説明として正しいものはどれか。
  2. ジェットエンジンのタービン翼に、一方向凝固による柱状晶や単結晶のNi基超合金が使われる理由として正しいものはどれか。
  3. 単結晶のNi基超合金に、レニウム(Re)などの重い元素を数%加える主な狙いとして正しいものはどれか。
  4. 10種類近くの元素を含むNi基超合金や鋼で、CALPHAD法を使って析出する相とその分率を予測する。その考え方と注意点の組み合わせとして正しいものはどれか。
  5. ろう(ワックス)で製品と同じ形の模型をつくり、そのまわりを耐火物のスラリーで何層も覆って固めたあと、加熱してろうを溶かし出し、できた鋳型に溶湯を注ぐ鋳造法はどれか。
  6. 1000℃を超える高温の空気中で使う耐熱合金の保護皮膜についての説明として正しいものはどれか。
  7. 遮熱コーティングのトップコート(厚さ250 µm、熱伝導率1.2 W/(m·K))を、1.0 MW/m²の熱流束が厚さ方向に一様に通っている。定常状態の1次元の熱伝導として、トップコートの表と裏の温度差はどれに最も近いか。

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