遮熱コーティングとは

しゃねつこーてぃんぐ

高温部品の表面に施す、熱伝導率の低いセラミックスの被膜。ジルコニアのトップコートとボンドコートからなり、金属の温度を大きく下げる。

「遮熱コーティング」は、1分野の3問の練習問題に出てきます(高温材料とクリープなど)。

この用語の分野: 高温材料とクリープ

なぜ必要か

ガスタービンでは、タービンに入るガスの温度を上げるほど熱効率と出力が上がります。しかし、そのガスの温度は翼に使うNi基超合金の融点に近いか、それを超えることもあり、合金だけでは耐えられません。そこで、翼の内部に冷却空気を流しながら、表面に熱伝導率の低いセラミックスの層を設けて、金属の温度を下げます。大切なのは、この温度差は層を熱が流れることで生じるという点で、ΔT = qL/k の熱流束qは内部の冷却がつくっています。冷却がなければ、時間がたつと金属もガスと同じ温度になり、断熱の効果は残りません。

YSZが使われる理由

トップコートには、Y₂O₃を6〜8 wt%ほど加えて部分安定化したジルコニア(YSZ)が使われます。Yを加えると酸素の空孔ができ、酸素の空孔や置換したYの原子がフォノンを強く散乱するので、緻密な材料でも熱伝導率は1000℃で約2.3 W/(m·K)と、セラミックスとしては低い値です。熱膨張係数も約11×10⁻⁶ K⁻¹とセラミックスとしては大きく、金属との差が比較的小さくなります。添加量を部分安定化の範囲にするのは、冷却で正方晶が単斜晶に変わって約4%の体積膨張が起こるのを防ぎながら、準安定な正方晶(t')による高いじん性を得るためです。

膜のつくり方と組織

製法は主に2つあります。大気中のプラズマ溶射(APS)では、溶けた粒子が平たく積み重なり、面に平行な細かい割れや気孔が熱の流れをさえぎるので、熱伝導率は約1 W/(m·K)まで下がります。電子ビーム物理蒸着(EB-PVD)では柱状の結晶が並んだ膜ができ、柱の間の隙間が開いたり閉じたりして、熱膨張の差によるひずみを逃がします。熱伝導率は約1.5〜1.9 W/(m·K)と溶射膜より高いものの、熱サイクルに強く表面も滑らかなので、航空エンジンの動翼によく使われます。燃焼器などには、安価で厚くつけやすい溶射膜が使われます。

劣化と寿命の決まり方

使用中には、いくつかの劣化が同時に進みます。ボンドコートとの界面の熱成長酸化物はほぼ放物線則に従って厚くなり、冷却のたびに熱膨張の差による応力が集中して、トップコートのはく離を招きます。約1200℃を大きく超えて長く使うと、準安定なt'相が分解したり焼結で気孔が減ったりして、ひずみを逃がす力が失われます。さらに、吸い込んだ砂や火山灰がカルシウム・マグネシウム・アルミニウムのケイ酸塩(CMAS)として溶け、気孔にしみ込んで固まる損傷も問題です。そのため、より熱伝導率の低いジルコン酸ガドリニウム(Gd₂Zr₂O₇)などの新しいトップコートも研究されています。

遮熱コーティングの練習問題に挑戦

ガスタービンの翼に施す遮熱コーティング(TBC)の構成についての説明として正しいものはどれか。

  1. A熱伝導率の低いYSZのトップコートの下にMCrAlYなどのボンドコートを置き、その界面の薄いAl₂O₃の熱成長酸化物(TGO)が母材の酸化を防ぐ
  2. Bトップコートには熱伝導率の高い緻密なアルミナを使い、翼の熱を速く外へ逃がして金属の温度を下げ、その下のボンドコートで母材との熱膨張差を吸収する
  3. CトップコートのYSZが酸素をまったく通さないので、ボンドコートは不要で、YSZを母材に直接吹き付けるだけで母材の酸化と熱の両方を同時に防げる
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正解:A. 熱伝導率の低いYSZのトップコートの下にMCrAlYなどのボンドコートを置き、その界面の薄いAl₂O₃の熱成長酸化物(TGO)が母材の酸化を防ぐ

TBCは、翼の内部を冷却空気で冷やしながら、表面の断熱層で金属の温度を下げる被膜です。トップコートのYSZ(イットリア部分安定化ジルコニア)は熱伝導率が約1〜2 W/(m·K)と低く、セラミックスとしては熱膨張係数が大きい材料です。多孔質の溶射膜や柱状の蒸着膜にして、母材との熱膨張差によるひずみを逃がします。YSZは酸化物イオンをよく通すので酸素を止められず、ボンドコートのAlが酸化して薄いAl₂O₃のTGOができ、これが母材の酸化を防ぎます。TGOが厚くなったり熱サイクルを受けたりすると、その付近からトップコートがはく離することが、寿命を決める主な原因です。熱伝導率の高い材料では断熱の役目を果たせません。

遮熱コーティングのトップコート(厚さ250 µm、熱伝導率1.2 W/(m·K))を、1.0 MW/m²の熱流束が厚さ方向に一様に通っている。定常状態の1次元の熱伝導として、トップコートの表と裏の温度差はどれに最も近いか。

  1. A約300 K
  2. B約21 K
  3. C約208 K
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正解:C. 約208 K

フーリエの法則 q = kΔT/L から、ΔT = qL/k = (1.0×10⁶ × 250×10⁻⁶)/1.2 ≈ 208 Kです。厚さ0.25 mmほどの膜で約200 Kも金属の温度を下げられることが、遮熱コーティングの効果です。Ni基超合金のクリープ強度は温度に敏感なので、この温度差は寿命や許容されるガス温度を大きく左右します。約300 Kは熱伝導率で割る代わりに掛けた値、約21 Kは厚さを25 µmと1桁小さく換算した値です。熱伝導率が低いほど、また膜が厚いほど温度差は大きくなりますが、膜を厚くすると熱応力ではく離しやすくなるので、厚さには限りがあります。

よくある質問

遮熱コーティングで金属の温度はどのくらい下がりますか。

膜の厚さL、熱伝導率k、膜を通る熱流束qで決まり、ΔT = qL/k で見積もれます。厚さと熱流束が同じなら、熱伝導率が半分の膜では温度差が2倍になります。内部の冷却で熱を流し続けることが前提なので、温度差は運転の条件で大きく変わります。

遮熱コーティングと耐環境コーティング(EBC)の違いは何ですか。

遮熱コーティングは、金属の部品の温度を下げるのが主な目的です。耐環境コーティングは、SiC繊維強化SiC複合材料などのセラミックスの部品が、高温の水蒸気で表面のSiO₂を失ってやせていくのを防ぐ被膜で、イッテルビウムのケイ酸塩などが使われます。

「部分安定化」とはどういう意味ですか。

ZrO₂は温度によって単斜晶、正方晶、立方晶に変わります。Y₂O₃を多く加えると立方晶だけの完全安定化ジルコニアになりますが、遮熱コーティングでは少なめに加えて、正方晶が主の状態にとどめます。こうすると、相変態による体積の変化を抑えつつ、じん性の高い膜が得られます。

解説の中の「遮熱コーティング」

「遮熱コーティング」が出てくる問題(3問)

  1. ガスタービンの翼に施す遮熱コーティング(TBC)の構成についての説明として正しいものはどれか。
  2. 遮熱コーティングのトップコート(厚さ250 µm、熱伝導率1.2 W/(m·K))を、1.0 MW/m²の熱流束が厚さ方向に一様に通っている。定常状態の1次元の熱伝導として、トップコートの表と裏の温度差はどれに最も近いか。
  3. 1000℃を超える高温の空気中で使う耐熱合金の保護皮膜についての説明として正しいものはどれか。

関連する用語

Ni基超合金 線膨張係数 クリープ 熱応力 拡散クリープ 酸化の放物線則 ピリング・ベドワース比 べき乗則クリープ 変形機構図 ラーソン・ミラー・パラメータ

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