変形機構図とは
へんけいきこうず
規格化した応力と相同温度を軸に、最も速く変形させる機構(転位のすべり、べき乗則クリープ、拡散クリープなど)の領域を示した図。
「変形機構図」は、1分野の1問の練習問題に出てきます(高温材料とクリープなど)。
この用語の分野: 高温材料とクリープ
へんけいきこうず
規格化した応力と相同温度を軸に、最も速く変形させる機構(転位のすべり、べき乗則クリープ、拡散クリープなど)の領域を示した図。
「変形機構図」は、1分野の1問の練習問題に出てきます(高温材料とクリープなど)。
この用語の分野: 高温材料とクリープ
変形機構図は、アシュビーが1972年に提案し、フロストとの1982年の著書で多くの金属とセラミックスについてまとめられた図です。転位のすべり、べき乗則クリープ、拡散クリープなど各機構の速度式に、拡散係数、剛性率、原子の体積、粒径などの値を入れ、応力と温度の組み合わせごとに速度を計算します。互いに独立に働く機構は速度を足し合わせ、どちらか一方が働く関係にある機構は速いほうを選んで、最も寄与の大きい機構の領域を塗り分けます。境界線は、隣り合う2つの機構の速度が等しくなる条件です。
横軸に、絶対温度を融点Tmで割った相同温度 T/Tm をとると、融点の違う材料の高温のふるまいを同じ目盛りで比べられます。クリープが目立ち始めるのは、目安として T/Tm が0.4前後を超えるあたりです。室温の20℃は、タングステン(Tm ≈ 3695 K)では T/Tm ≈ 0.08 にすぎませんが、鉛(Tm ≈ 601 K)では約0.49にもなります。古い鉛の配管や屋根材が自重でゆっくり垂れ下がるのは、室温でもクリープの領域にあるためです。逆に、純Niで T/Tm = 0.6 は約1040 K、つまり760℃あたりにあたります。
変形機構図は、決まった粒径と純度について、モデルの速度式と文献の定数から計算した図です。粒を細かくすると拡散クリープの領域が広がるように、組織が変われば境界は大きく動き、析出物を含む合金に純金属の図はそのまま使えません。速度式の定数には誤差があるので、境界の位置は実験で確かめる必要があります。また、図が表すのは定常の変形の速さで、いつ壊れるかは示しません。破壊については、へき開、粒界破壊、延性破壊などの領域を同じように描いた破壊機構図が別につくられています。
使用する応力と温度の点を図に置くと、どの機構が支配的かがわかり、図に描かれた等ひずみ速度の線から変形の速さの見当もつきます。その点が拡散クリープの領域なら粒を粗くし、べき乗則クリープの領域なら析出物や固溶元素で転位の動きを妨げる、というように、効果のある対策が変わります。点が境界の近くにあると、わずかな条件の違いで機構が入れ替わり、短時間の試験からの外挿が外れやすくなります。地球科学でも、岩石や氷の図を使って、マントルや氷河の流れの機構を考えるのに使われています。
正解:A. 粒径などを決めて、各応力と温度で最も速く変形させる機構の領域を示した図で、低い応力・高温の側に拡散クリープ、より高い応力にべき乗則クリープがある
変形機構図では、各機構の速度式から、ある応力と温度で最も速く変形させる機構を求めて領域を塗り分けます。複数の機構は並行して働くので、最も速いものが支配的になるという考え方です。理想強度に近い高い応力では転位のすべりが、中間の応力の高温では転位の上昇運動を伴うべき乗則クリープが、低い応力の高温では拡散クリープが支配的です。拡散クリープの速度は粒径の2乗や3乗に反比例するので、粒径を細かくすると拡散クリープの領域が広がり、境界は動きます。図には一定のひずみ速度の線も描かれ、使用条件での機構と変形の速さを読み取れます。低い応力の側に転位のすべりを置く説明は、配置を取り違えています。
絶対温度Tを融点Tm(絶対温度)で割った値 T/Tm です。原子の拡散のしやすさは、融点を基準にすると材料によらず似てくるので、高温の変形の目安に使います。セルシウス温度のまま割ると意味のない値になるので、必ず絶対温度で計算します。
転位の運動やクリープの速さは、応力そのものより、原子間の結合の強さに対する応力の大きさで決まるからです。剛性率Gで割った σ/G を使うと、強さの違う材料を同じ目盛りで比べられます。図には、実際の応力(MPa)の目盛りも並べて描かれることが多いです。
隣り合う2つの機構が同じ速さで変形を起こす、応力と温度の組み合わせです。線の上では両方の寄与が等しく、線から離れるほど一方が支配的になります。境界は機構が急に切り替わる線ではなく、その近くでは両方の機構が働いています。
変形機構図では、各機構の速度式から、ある応力と温度で最も速く変形させる機構を求めて領域を塗り分けます。
アシュビーらの変形機構図(縦軸に剛性率で規格化した応力 σ/G、横軸に相同温度 T/Tm をとった図)についての説明と…転位 べき乗則クリープ 拡散クリープ 酸化の放物線則 遮熱コーティング Ni基超合金 ピリング・ベドワース比 ラーソン・ミラー・パラメータ