ピリング・ベドワース比とは

ぴりんぐべどわーすひ

酸化物の体積と、それをつくるのに使われた金属の体積の比。1より小さいと皮膜が割れやすく、1〜2程度で保護的になりやすいとされる目安。

「ピリング・ベドワース比」は、1分野の1問の練習問題に出てきます(高温材料とクリープなど)。

この用語の分野: 高温材料とクリープ

比の意味

ピリングとベドワースは1923年に、金属の酸化のしかたを、できた酸化物の体積と、消費された金属の体積の比で整理しました。金属原子の数をそろえて比べるのがポイントで、酸化物 M_aO_b の1 molの体積を、その中に含まれる金属a mol分の体積で割ります。比が1より小さいと、酸化物は金属の表面を覆いきれず、1より大きいと、皮膜は横に押し縮められた圧縮の状態で成長します。密度とモル質量だけで計算できるので、皮膜が保護的かどうかを見積もる最初の目安として使われてきました。

代表的な値

室温の密度から計算すると(使う密度の値で0.1〜0.2ほど変わります)、PBRはNaで約0.57、Caで約0.65と1より小さく、これらの金属の酸化が止まりにくいことと合います。Alは約1.3、NiとCu(Cu₂O)は約1.7で、保護的な皮膜になりやすい範囲です。Ti(ルチル型のTiO₂)は約1.8、Cr(Cr₂O₃)は約2.0です。一方、Nb(Nb₂O₅)は約2.7、W(WO₃)は約3.4と大きく、皮膜に大きな圧縮の応力がたまって、割れやはく離が起こりやすくなります。Wは酸化物も高温で揮発しやすく、高温の空気中ではそのままでは使いにくい金属です。

目安が外れる例

PBRだけでは保護性を判断できない例は多くあります。鉄は約1.8のFeOをつくりますが、高温でできるFeOは欠陥が非常に多く、イオンが速く拡散するので、皮膜は厚く速く成長します。SiやCrは2前後と大きめの値でも、緻密なSiO₂やCr₂O₃が優れた保護皮膜になります。PBRは皮膜が金属との界面で成長することを前提にしていますが、金属のイオンが外へ拡散して皮膜の表面で酸化物ができる場合は、体積の差による応力はそれほどたまりません。保護性は、皮膜の中の拡散の速さ、密着性、冷却時の熱膨張の差なども合わせて判断します。

Siの熱酸化での使い方

PBRの考え方は、皮膜の厚さと、消費される金属の厚さの関係を求めるときにも役立ちます。半導体の製造でSiを熱酸化して非晶質のSiO₂をつくる場合、密度を Si 2.33 g/cm³、SiO₂ 2.20 g/cm³ とすると、比は約2.27です。面積が変わらず厚さだけが増えるとすると、厚さxのSiO₂をつくると約0.44xのSiが消費され、酸化膜の約44%が元のSiの表面より下に、残りが上に成長します。100 nmの酸化膜なら約44 nmのSiが消えるので、素子の寸法や段差の設計ではこの分を見込みます。

ピリング・ベドワース比の練習問題に挑戦

金属の酸化皮膜のピリング・ベドワース比(PBR、酸化物の体積と、それをつくるのに使われた金属の体積の比)を PBR = (M_ox ρ_M)/(n M_M ρ_ox) で求める(Mはモル質量、ρは密度、nは酸化物の化学式1つに含まれる金属原子の数)。マグネシウム(24.31 g/mol、1.74 g/cm³)と MgO(40.30 g/mol、3.58 g/cm³、n = 1)について、PBRと皮膜の性質の組み合わせとして正しいものはどれか。

  1. A約1.24で、皮膜に適度な圧縮応力がかかり、金属を覆う保護的な皮膜になる
  2. B約0.81で、1より小さいので皮膜は緻密に縮んで、金属をよく保護する
  3. C約0.81で、皮膜が金属の表面を覆いきれずに割れやすく、保護的になりにくい
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正解:C. 約0.81で、皮膜が金属の表面を覆いきれずに割れやすく、保護的になりにくい

PBR = (40.30 × 1.74)/(1 × 24.31 × 3.58) = 70.1/87.0 ≈ 0.81です。PBRが1より小さいと、酸化物の体積が消費された金属の体積より小さく、皮膜には引張の応力がかかって割れたり隙間ができたりして、酸素が金属まで届きやすくなります。1〜2程度では皮膜が金属を隙間なく覆いやすく、Al₂O₃(PBR ≈ 1.29)をつくるアルミニウムのように保護的になりやすい一方、2を大きく超えると圧縮の応力が大きくなりすぎて、はがれやすくなります。約1.24は分子と分母を逆にした値です。PBRはあくまで目安で、保護性は皮膜の中の拡散の速さや密着性にも左右されます。

よくある質問

ピリング・ベドワース比はどう計算しますか。

PBR = (M_ox ρ_M)/(n M_M ρ_ox) で求めます。M_ox と ρ_ox は酸化物のモル質量と密度、M_M と ρ_M は金属のもの、nは酸化物の化学式1つに含まれる金属原子の数です。単位のない比なので、密度とモル質量の単位をそろえれば計算できます。

PBRが2を超えるとなぜはがれやすいのですか。

酸化物が元の金属の体積の2倍以上にふくらもうとするのに、横方向は金属に拘束されているため、皮膜に大きな圧縮の応力がたまるからです。皮膜が厚くなるほどたまるエネルギーも増え、ある厚さを超えると、皮膜が浮き上がったり割れたりしてはがれます。

PBRは温度によって変わりますか。

金属と酸化物の熱膨張がわずかに違うので値は少し変わりますが、目安としては室温の密度で計算した値が使われます。むしろ大きく効くのは、どの酸化物ができるかで、温度や酸素分圧によってできる酸化物が変われば、その酸化物の値を使う必要があります。

解説の中の「ピリング・ベドワース比」

「ピリング・ベドワース比」が出てくる問題(1問)

  1. 金属の酸化皮膜のピリング・ベドワース比(PBR、酸化物の体積と、それをつくるのに使われた金属の体積の比)を PBR = (M_ox ρ_M)/(n M_M ρ_ox) で求める(Mはモル質量、ρは密度、nは酸化物の化学式1つに含まれる金属原子の数)。マグネシウム(24.31 g/mol、1.74 g/cm³)と MgO(40.30 g/mol、3.58 g/cm³、n = 1)について、PBRと皮膜の性質の組み合わせとして正しいものはどれか。

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