酸化の放物線則とは

さんかのほうぶつせんそく

酸化皮膜の厚さの2乗が時間に比例して増える関係 x² = k_p t。緻密な皮膜の中のイオンの拡散が成長の速さを決めるときに成り立つ。

「酸化の放物線則」は、1分野の1問の練習問題に出てきます(高温材料とクリープなど)。

この用語の分野: 高温材料とクリープ

式の成り立ちとワグナーの理論

皮膜の中の拡散が成長を決めるとき、皮膜を通る物質の流れは厚さxに反比例するので、成長速度は dx/dt ∝ 1/x となり、積分すると x² = k_p t になります。ワグナーは1933年に、皮膜の中の点欠陥を通ってイオンと電子が移動する速さから、k_p を酸化物の欠陥の濃度や拡散係数、皮膜の両側の酸素分圧の差と結びつけました。この理論から、酸化物の欠陥の濃度を変える微量の添加元素で k_p が変わることも説明できます。k_p は温度とともにアレニウス型 k_p = k₀exp(−Q/RT) で増えます。

質量の増加で測る

実際の試験では、熱天秤で試料の質量の増え方を連続して測ることが多く、単位面積あたりの質量の増加 Δm/A を使って (Δm/A)² = k_p t と書きます。このときの k_p の単位は g²/(cm⁴·s) などで、厚さで書いた m²/s の k_p とは数値が違うので、文献の値を比べるときは定義を確かめます。増えた質量は、皮膜に取り込まれた酸素の質量です。例えばAl₂O₃では酸素が質量の約47%を占めるので、密度を3.95 g/cm³ とすると、0.1 mg/cm² の増加は約0.54 µmの皮膜にあたります。

ほかの速度則との違い

放物線則は、緻密で密着した皮膜が成長を支配しているしるしです。皮膜が割れたり多孔質だったりすると、厚さに関係なく一定の速さで進む直線則になり、室温付近の薄い皮膜では、数nmで成長がほとんど止まる対数則が見られます。高温で皮膜が揮発する場合は、拡散による成長と揮発による減少が重なる放物線・直線則(パラリニア則)になり、厚さは一定の値に近づきますが、金属は一定の速さで失われ続けます。Cr₂O₃がCrO₃になって揮発する場合が代表例です。途中で皮膜が割れて急に速くなるブレークアウェイ酸化にも注意が必要です。

Siの熱酸化への応用

半導体のSiの熱酸化では、ディールとグローブが1965年に、酸化膜の厚さxと時間tの関係を x² + Ax = B(t + τ) とまとめました。酸素がSiO₂の膜の中を拡散する過程と、Siとの界面で反応する過程が直列につながったモデルです。膜が薄いうちは界面の反応が遅い過程になって厚さが時間にほぼ比例し、厚くなると拡散が支配して放物線則 x² ≈ Bt に近づきます。放物線速度定数Bは乾燥酸素より水蒸気のほうが大きいので、厚い膜は水蒸気で速くつくります。ただし、乾燥酸素による非常に薄い膜は、このモデルより速く成長することが知られています。

酸化の放物線則の練習問題に挑戦

ある合金を高温の空気中で酸化させたところ、緻密な酸化皮膜の中の拡散が速さを決める放物線則 x² = k_p t に従い、100 hで皮膜の厚さが2.0 µmになった。同じ温度で900 h酸化させたときの皮膜の厚さはどれに最も近いか。

  1. A約18 µm
  2. B約6.0 µm
  3. C約4.2 µm
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正解:B. 約6.0 µm

放物線則では厚さは時間の平方根に比例するので、x = 2.0 × √(900/100) = 2.0 × 3 = 6.0 µmです。皮膜が厚くなるほど、イオンや電子が皮膜を通り抜ける距離が長くなって成長が遅くなるため、この形になります(ワグナーの理論)。約18 µmは厚さが時間に比例する直線則として計算した値で、直線則は皮膜が多孔質だったり割れたりして保護的でないときや、界面での反応が速さを決めるときに見られます。約4.2 µmは厚さが時間の3乗根に比例する3乗則として計算した値です。放物線速度定数k_pが小さい皮膜ほど保護性が高く、合金を選ぶときの目安になります。

よくある質問

放物線速度定数k_pの単位は何ですか。

厚さで書いた x² = k_p t では m²/s や cm²/s、質量の増加で書いた (Δm/A)² = k_p t では g²/(cm⁴·s) や mg²/(cm⁴·h) などです。x² = 2k_p t のように係数2を含める定義もあるので、文献の値を使うときは式の形と単位を確かめます。

放物線則に従っているかはどう確かめますか。

厚さか質量の増加の2乗を時間に対して描いて直線になるか、両対数のグラフで傾きが0.5になるかを見ます。初めの短い時間には別の過程が混じることが多いので、その部分を除いて判断します。傾きが1に近ければ直線則、約0.33なら3乗則に近いと考えます。

放物線則と拡散の距離 √(Dt) にはどんな関係がありますか。

どちらも、拡散で進む現象の距離が時間の平方根に比例するという同じ性質の表れです。皮膜の中の拡散が成長を決めるので、k_p は皮膜の中の拡散係数と酸素分圧の差に関係した量になり、拡散係数と同じように温度とともにアレニウス型で増えます。

解説の中の「酸化の放物線則」

「酸化の放物線則」が出てくる問題(1問)

  1. ある合金を高温の空気中で酸化させたところ、緻密な酸化皮膜の中の拡散が速さを決める放物線則 x² = k_p t に従い、100 hで皮膜の厚さが2.0 µmになった。同じ温度で900 h酸化させたときの皮膜の厚さはどれに最も近いか。

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