ヤング率とは

やんぐりつ

弾性域での応力とひずみの比 E = σ/ε。原子間の結合で決まり、鋼は約200 GPa、アルミニウムは約70 GPa。熱処理ではほとんど変わらない。

「ヤング率」は、11分野の25問の練習問題に出てきます(複合材料, 生体材料, 材料選択と設計など)。

この用語の分野: 機械的性質と破壊

原子間の結合の固さを映す量

ヤング率は、原子間の結合のポテンシャルの曲がり具合(結合の固さ)で決まります。そのため結合が強く融点の高い物質ほど大きい傾向があり、ダイヤモンドは約1000 GPa、タングステンは約410 GPa、鋼は約200 GPa、銅は約120 GPa、アルミニウムとガラスは約70 GPaです。高分子は数GPa以下、ゴムは数MPa程度と、材料の種類によって6桁ほどの幅があります。部品の剛性やたわみ、振動の固有振動数を決める、設計の基本の量です。

測り方

引張試験の弾性域の傾きからも求められますが、弾性ひずみは0.1%程度と小さく、試験機のたわみも入るので精度は高くありません。正確な値は、試験片の共振周波数から求める共振法や、超音波の伝わる速さから求める超音波パルス法で測ります。細い棒を伝わる縦波の速さは √(E/ρ) で、ヤング率200 GPa、密度7850 kg/m³の鋼では約5000 m/sです。薄膜や微小な部分には、押し込んだ圧子の除荷曲線を解析するナノインデンテーションが使われます。

強さとの混同と結晶の向きによる違い

ヤング率は変形しにくさを表す量で、壊れにくさ(強度)とは別です。焼入れで鋼の強度が数倍になっても、ヤング率はほとんど変わりません。部品のたわみを減らしたいとき、高強度の鋼に替えても効果はなく、断面の形を変えるか、ヤング率の高い材料を選ぶ必要があります。また、単結晶では方向によって値が違い、鉄では<100>方向で約125 GPa、<111>方向で約273 GPaです。多結晶の値は、これらが平均されたものです。

設計での使い方と比剛性

引張や曲げのたわみはヤング率に反比例し、梁では断面二次モーメントIとの積EI(曲げ剛性)で決まります。軽さも求めるときは比剛性E/ρで比べますが、鋼(約200 GPa、7.85 g/cm³)、アルミニウム合金(約70 GPa、2.70 g/cm³)、チタン合金(約110 GPa、4.5 g/cm³)はどれも約25 GPa/(g/cm³)とほぼ同じです。そのため金属どうしでは、板や梁の形を工夫した設計が効き、比剛性を大きく上げるにはCFRPのような複合材料が必要になります。

ヤング率の練習問題に挑戦

鋼のヤング率についての説明として正しいものはどれか。

  1. A焼入れや冷間加工で強度が2倍になると、ヤング率もほぼ2倍になる
  2. B原子間の結合の強さで決まり、熱処理や加工による変化は小さい
  3. C降伏応力を降伏までの全ひずみで割った値で、塑性域の傾きを表す
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正解:B. 原子間の結合の強さで決まり、熱処理や加工による変化は小さい

ヤング率は弾性域での応力とひずみの比 E = σ/ε で、原子間の結合の強さ(原子間ポテンシャルの曲率)で決まる、組織に鈍感な性質です。そのため軟鋼でも焼入れ鋼でも約200 GPa前後でほとんど変わらず、強度が2倍になってもヤング率は2倍になりません。降伏強さや硬さは転位の動きやすさで決まる組織に敏感な性質で、熱処理や加工で大きく変わります。ヤング率は弾性域の直線の傾きであり、塑性域の傾き(加工硬化率)とは別のものです。温度が上がると結合が弱まり、ヤング率はゆるやかに低下します。

ヤング率200 GPaの鋼の棒(長さ2.0 m)に、弾性範囲内で100 MPaの引張応力をかけた。棒の伸びはどれに最も近いか。

  1. A約0.10 mm
  2. B約1.0 mm
  3. C約10 mm
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正解:B. 約1.0 mm

フックの法則より、ひずみは ε = σ/E = 100×10⁶ / (200×10⁹) = 5.0×10⁻⁴ です。伸びは ΔL = εL = 5.0×10⁻⁴ × 2000 mm = 1.0 mm になります。約0.10 mm や約10 mm は、GPa と MPa の換算(1 GPa = 1000 MPa)や m と mm の換算で桁を1つずらした誤りです。降伏応力が数百MPaある鋼でも、弾性ひずみは0.1〜0.2%程度にとどまります。同じ応力でも、ヤング率が約3分の1のアルミニウム合金(約70 GPa)では伸びが約3倍になり、剛性が必要な設計ではこの違いが効いてきます。

よくある質問

ヤング率と剛性率(横弾性係数)の関係は?

等方性の材料では G = E/(2(1 + ν)) の関係があります。ν はポアソン比で、鋼(E = 200 GPa、ν = 0.3)なら G ≈ 77 GPa です。ヤング率は引張、剛性率はせん断の変形のしにくさを表します。

ヤング率の単位は何ですか?

応力と同じ Pa で、金属ではGPaがよく使われます。ひずみは単位のない量なので、ヤング率は応力と同じ単位になります。鋼の約200 GPaは、2.0×10⁵ N/mm²(MPa)とも書けます。

硬い材料ほどヤング率は高いのですか?

必ずしもそうではありません。硬さは塑性変形への抵抗で、転位の動きやすさなど組織で大きく変わりますが、ヤング率は結合の強さで決まります。焼入れした鋼と焼なました鋼は硬さが大きく違っても、ヤング率はほぼ同じです。

解説の中の「ヤング率」

「ヤング率」が出てくる問題(25問)

  1. 鋼のヤング率についての説明として正しいものはどれか。
  2. ヤング率200 GPaの鋼の棒(長さ2.0 m)に、弾性範囲内で100 MPaの引張応力をかけた。棒の伸びはどれに最も近いか。
  3. あるセラミックスの曲げ強度が300 MPa、ヤング率が380 GPa、ポアソン比が0.22、線膨張係数が8.0×10⁻⁶ K⁻¹である。急冷による熱衝撃で割れ始める温度差の目安 ΔTc = σf(1 − ν)/(Eα) はどれに最も近いか。
  4. 炭素繊維(ヤング率230 GPa)をエポキシ樹脂(ヤング率3.5 GPa)の中に体積分率60%で一方向にそろえて入れた複合材料がある。繊維方向のヤング率を複合則で見積もるとどれに最も近いか。
  5. シリコン基板(線膨張係数2.6×10⁻⁶ K⁻¹)上のアルミニウム膜(ヤング率70 GPa、ポアソン比0.35、線膨張係数23×10⁻⁶ K⁻¹)を、応力のない125℃から25℃まで冷却した。基板は十分に厚いとして、膜に生じる熱応力 σ = EΔαΔT/(1 − ν) の向きと大きさはどれか。
  6. ガラス繊維(ヤング率72 GPa)を体積分率40%で一方向に入れた樹脂(ヤング率3.0 GPa)の複合材料を、繊維に平行な方向に引っ張る。弾性範囲で、荷重のうち繊維が受け持つ割合はどれに最も近いか。
  7. ガラス繊維(ヤング率72 GPa)を体積分率50%で一方向に入れた樹脂(ヤング率3.0 GPa)の複合材料がある。繊維に垂直な方向のヤング率を、等応力の複合則で見積もるとどれに最も近いか。
  8. 一方向CFRP(繊維方向のヤング率140 GPa、密度1.6 g/cm³)と鋼(ヤング率210 GPa、密度7.9 g/cm³)の、繊維方向の比弾性率(ヤング率/密度)の比 CFRP/鋼 はどれに最も近いか。
  9. 長さと曲げ剛性が決まっている正方形断面の梁を、断面の大きさを自由に変えて最も軽くつくりたい。ヤング率をE、密度をρとすると、最大にすべき性能指数はどれか。
  10. 縦軸にヤング率E、横軸に密度ρをとった両対数の材料選択図(アシュビーの図)で、軽くて剛い梁の性能指数 √E/ρ が一定になる線(ガイドライン)の傾きはどれか。
  11. 人工股関節のステムに、骨よりはるかにヤング率の高い金属を使ったとき問題になる応力遮蔽の説明として正しいものはどれか。
  12. 皮質骨(ヤング率20 GPa)と、同じ断面積の Ti-6Al-4V(ヤング率110 GPa)の棒が平行に接合され、長さ方向に一緒に引張荷重を受けている。両者のひずみが等しいとき、全荷重のうち骨が受け持つ割合はどれに最も近いか。
  13. 開いた気孔をもつ多孔質のチタンのヤング率を、ギブソン・アシュビーの式 E* = Es(ρ*/ρs)² で見積もる。緻密なチタンのヤング率を Es = 110 GPa、気孔率を60%とすると、E* はどれに最も近いか。ρ*/ρs は相対密度とする。
  14. 完全な結晶の理論強度はヤング率の10分の1程度と見積もられるが、ガラスなどの脆い材料の実際の破壊強度は、その数十分の一から数百分の一にとどまることが多い。主な理由はどれか。
  15. ガラス(ヤング率 E = 70 GPa、表面エネルギー γs = 1.0 J/m²)に、長さ a = 1.0 µm の表面き裂がある。グリフィスの式 σf = √(2Eγs/(πa)) で見積もった破壊応力はどれに最も近いか。

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関連する用語

応力遮蔽 転位 線膨張係数 複合則 CFRP(炭素繊維強化プラスチック) 比剛性 材料選択の性能指数 不動態 β型チタン合金 原子間ポテンシャル

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