熱膨張・熱応力 計算ツール
材料の温度が変わると、線膨張係数 α に比例して伸び縮みします。自由に伸び縮みできれば応力は生じませんが、拘束されると熱応力になります。既定値は、長さ1000 mmの鋼の棒(α = 12×10⁻⁶ K⁻¹、E = 200 GPa)を20 ℃から70 ℃に加熱する例で、自由なら0.60 mm伸び、両端を動かない壁で止めると約120 MPaの圧縮応力になります。
結果
- 温度変化 ΔT
- –
- 自由な伸び ΔL = αLΔT
- –
- 熱ひずみ αΔT
- –
拘束したときの熱応力
- 熱応力 σ(引張が正)
- –
- 応力の向き
- –
- |σ| が強さに達する温度変化 ΔTc
- –
αsは、棒を止めている枠や薄膜の基板の線膨張係数です。拘束する側は十分に剛い(変形しない)とみなし、熱応力は −E(α − αs)ΔT(等二軸では ÷(1 − ν))で計算します。物性値の温度依存、塑性変形やクリープによる応力の緩和は考えていません。
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ほかの入力は今の値のまま、選んだ入力だけを今の値の1/4〜4倍の範囲で変えたときの結果です。赤い点が今の値です。
熱膨張の式
固体の長さは、温度が上がると原子間の平均距離が広がるために伸びます。温度範囲が広すぎなければ、伸びは温度変化に比例し、ΔL = αLΔT と書けます。αは線膨張係数で、鋼で約12×10⁻⁶ K⁻¹、アルミニウムで約23×10⁻⁶ K⁻¹、シリコンで約2.6×10⁻⁶ K⁻¹、石英ガラスで約0.5×10⁻⁶ K⁻¹です。等方的な材料の体積膨張係数は、およそ3αになります。原子間の結合が強く融点の高い材料ほど、αは小さい傾向があります。
拘束されたときの熱応力
両端を動かない壁で止めた棒を加熱すると、伸びようとする熱ひずみ αΔT を、同じ大きさの弾性ひずみが打ち消します。そのため熱応力は σ = −EαΔT となり、加熱では圧縮、冷却では引張になります。応力は棒の長さによらず、Eとαの積で決まります。既定値の鋼では 200×10⁹ × 12×10⁻⁶ × 50 = 1.2×10⁸ Pa、約120 MPaの圧縮です。枠のほうも膨張するときは、αの代わりに差 Δα = α − αs を使います。
薄膜の熱応力(等二軸)
厚い基板の上の薄膜は、面内の2方向に同時に拘束されます。この等二軸の状態では、二軸弾性率 E/(1 − ν) を使い、σ = −EΔαΔT/(1 − ν) になります。たとえば、シリコン基板上のアルミニウム膜(E = 70 GPa、ν = 0.35、α = 23×10⁻⁶ K⁻¹)を応力のない125 ℃から25 ℃まで冷やすと、約220 MPaの引張応力になります。膜の線膨張係数が基板より大きければ冷却後に引張、小さければ圧縮です。
熱衝撃の目安
高温のセラミックスを急冷すると、表面だけが先に縮もうとして内部に拘束され、表面に等二軸の引張応力が生じます。この応力が強さ σf に達する温度差は ΔTc = σf(1 − ν)/(Eα) と見積もれます。曲げ強度300 MPa、E = 380 GPa、ν = 0.22、α = 8.0×10⁻⁶ K⁻¹なら約77 Kです。このツールで等二軸を選び、αs = 0、強さに σf を入れると同じ値が出ます。実際には熱伝導や部品の寸法の影響を受けるので、材料どうしを比べる目安として使います。
薄膜・表面・ナノ材料の問題を解く
- A圧縮、約220 MPa
- B引張、約143 MPa
- C引張、約220 MPa
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正解:C. 引張、約220 MPa
Δα = 23×10⁻⁶ − 2.6×10⁻⁶ = 20.4×10⁻⁶ K⁻¹、ΔT = 100 K なので、σ = 70×10⁹ × 20.4×10⁻⁶ × 100/(1 − 0.35) ≈ 2.2×10⁸ Pa、約220 MPa です。冷却するとアルミニウムはシリコンより大きく縮もうとしますが、基板に拘束されて縮めないので、膜は引っ張られて引張応力になります。圧縮とするのは向きの取り違えです。約143 MPa は (1 − ν) で割り忘れた値です。膜は面内の2方向に同時に拘束される二軸の応力状態なので、二軸弾性率 E/(1 − ν) を使う必要があります。このような熱応力は、配線のストレスマイグレーションやボイドの原因になります。
- A引張応力
- B圧縮応力
- C応力は生じない
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正解:B. 圧縮応力
冷却すると、シリコンはSiO₂より大きく縮みます。SiO₂の膜は、自分が縮もうとする量より多く縮まされるので、面内で押し縮められて圧縮応力になります。熱応力の向きは、膜の線膨張係数が基板より大きければ冷却後に引張、小さければ圧縮と判断できます。シリコン上のアルミニウム膜とは膨張係数の大小が逆なので、応力の向きも逆になります。膨張係数に差がある限り、成膜温度から温度が変われば応力は生じるので、応力は生じないという選択肢は誤りです。熱酸化膜の圧縮応力は数百MPa程度になり、ウエハの反りの測定から求められます。
- A約77 K
- B約99 K
- C約127 K
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正解:A. 約77 K
Eα = 380×10⁹ × 8.0×10⁻⁶ = 3.04×10⁶ Pa/K、σf(1 − ν) = 300×10⁶ × 0.78 = 2.34×10⁸ Pa なので、ΔTc = 2.34×10⁸/(3.04×10⁶) ≈ 77 K です。約99 K は (1 − ν) を掛け忘れた値、約127 K は (1 − ν) で割ってしまった値です。熱衝撃への強さは、強度が高いほど、ヤング率と熱膨張係数が小さいほど大きくなります。熱膨張係数が約0.5×10⁻⁶ K⁻¹ と非常に小さい石英ガラスは、熱衝撃に非常に強い材料です。熱伝導率が高いと表面と内部の温度差がつきにくいことも有利に働きます。
よくある質問
熱応力は棒の長さで変わりますか?
完全に拘束された場合は変わりません。熱ひずみ αΔT が長さによらないので、応力 EαΔT も長さによりません。長い部材で問題になるのは、伸びの量 ΔL のほうで、橋やレールに伸縮のすき間を設けるのはこのためです。
なぜ薄膜では (1 − ν) で割るのですか?
薄膜は面内の2方向に同時に縮むのを止められます。一方向の応力は、ポアソン効果で直交する方向のひずみを少し打ち消すので、同じ熱ひずみを打ち消すのに大きな応力が必要になります。その結果、弾性率が E から E/(1 − ν) に増えた形になります。
計算した応力が降伏応力を超えたらどうなりますか?
その先は弾性の式が成り立たず、金属では塑性変形が起こって応力はおよそ降伏応力で頭打ちになります。温度を戻すと逆向きの残留応力が残ることもあります。ぜい性のセラミックスやガラスでは、引張側で割れが生じるおそれがあります。