β型チタン合金とは

べーたがたちたんごうきん

Nb、Ta、Mo などのβ安定化元素を多く含み、室温でもBCCのβ相をもつチタン合金。ヤング率が低く、生体用では応力遮蔽を減らせる。

「β型チタン合金」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(生体材料など)。

この用語の分野: 生体材料

チタンの相とβ安定化元素

純チタンは882℃より低い温度でHCPのα相、高い温度でBCCのβ相をとります。Mo、V、Nb、Ta はβ相に広く固溶して変態の温度を下げ、Fe や Cr などは共析型のβ安定化元素として働きます。これらを十分に加えると、焼入れや空冷で室温までβ相が残り、これをβ型チタン合金と呼びます。多くは室温で準安定な状態にあり、時効すると微細なα相などが析出します。一方、Al や O、N はα相を安定にする元素で、Ti-6Al-4V はαとβの2相からなるα+β型合金です。どの相が主かで性質が大きく変わります。

ヤング率が低い理由

β型合金のヤング率は、生体用の組成で約55〜80 GPa と、Ti-6Al-4V の約110 GPa より低くなります。BCC のβ相は、安定に存在できる限界に近い組成ほど、原子面をずらす向きの変形に対する抵抗が小さくなり、ヤング率が下がります。そのため、β相がかろうじて残るくらいの組成に合わせると、低いヤング率が得られます。Ti-Nb-Ta-Zr 系や Ti-Mo 系などがその例です。骨(約10〜30 GPa)にはまだ届かないものの、ステンレス鋼(約200 GPa)や Co-Cr 合金と比べれば、かなり骨に近づいています。

熱処理とヤング率・強度の兼ね合い

溶体化して急冷しただけのβ型合金は、ヤング率は低いものの、強度はそれほど高くありません。時効して微細なα相を析出させると強度は大きく上がりますが、α相はヤング率が高いので、全体のヤング率も上がります。また、低めの温度で時効すると、ω相と呼ばれる微細な相ができて、ヤング率が上がり、もろくなることがあります。そこで生体用では、冷間加工や時効の条件を選んで、低いヤング率を保ちながら必要な強度と疲労強度が得られるように組織を調整します。ヤング率と強度の両立が、合金の設計の中心になります。

生体以外の用途と弱点

β型合金は BCC なので冷間で加工しやすく、熱処理で高い強度にできることから、航空機のばねや締結部品、冷間で成形する板材にも使われてきました。生体用では、V や Al を含まない組成にでき、Nb、Ta、Zr などの細胞毒性が低いとされる元素で構成できることも利点です。一方で、Nb や Ta は重く高価な元素なので、密度とコストが上がります。また、チタン合金に共通して耐摩耗性が低く、すべり合う部分には向きません。Ni を含まない超弾性や形状記憶の合金も、β型の Ti-Nb 系などで研究されています。

β型チタン合金の練習問題に挑戦

Ti-Nb-Ta-Zr 系のようなβ型チタン合金が、骨を固定するインプラント用に開発されてきた主な理由はどれか。

  1. ABCCのβ相を室温まで残すとヤング率を Ti-6Al-4V より低くでき、応力遮蔽を減らせる
  2. Bβ相はHCP構造で原子の結合が強く、ヤング率を Ti-6Al-4V より高くしてインプラントの変形を防げる
  3. Cβ相にするとチタン表面の不動態皮膜ができなくなり、骨と化学的に結合しやすくなる
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正解:A. BCCのβ相を室温まで残すとヤング率を Ti-6Al-4V より低くでき、応力遮蔽を減らせる

チタンは低温でHCPのα相、高温でBCCのβ相をとり、Nb、Ta、Mo などのβ安定化元素を多く加えると、室温でもβ相が残ります。β型合金はヤング率が約55〜80 GPa と、α+β型の Ti-6Al-4V(約110 GPa)より低く、骨(約10〜30 GPa)に近づくので、応力遮蔽を減らせます。また、Nb、Ta、Zr は細胞毒性が低いとされ、V や Al を使わずにすむ利点もあります。HCP なのはα相のほうで、β相をHCPとするのは結晶構造の取り違えです。インプラントの剛性を上げることは、応力遮蔽を強める方向です。β型合金も表面に不動態皮膜をつくって耐食性を保ち、皮膜がなくなれば溶出が増えるだけで骨との結合にはつながりません。

よくある質問

α型、α+β型、β型の違いは何ですか。

室温で主にどの相からなるかによる分類です。α型は HCP のα相からなり、高温での強度やクリープ強さ、溶接性に優れます。α+β型の Ti-6Al-4V は強度と加工性の釣り合いがよく、最も広く使われます。β型は BCC で冷間加工しやすく、熱処理で高い強度にでき、ヤング率を低くできます。

生体用で V や Al を含まない合金が求められるのはなぜですか。

Ti-6Al-4V の V は細胞毒性が、Al は神経系への影響が懸念されてきたためです。通常の使用で問題が確かめられているわけではありませんが、長く体内に置くインプラントでは、溶け出したときの影響が小さいとされる Nb、Ta、Zr などを使う合金が開発されてきました。

β型チタン合金のヤング率を骨と同じにできますか。

緻密な合金のままでは、特に低い組成でも約40〜50 GPa で、皮質骨の約10〜30 GPa までは下げられません。さらに近づけるには、気孔を入れた多孔体にしてヤング率を下げる方法を組み合わせます。ただし、気孔を増やすと強度も下がるので、両者の兼ね合いで決めます。

解説の中の「β型チタン合金」

「β型チタン合金」が出てくる問題(2問)

  1. Ti-Nb-Ta-Zr 系のようなβ型チタン合金が、骨を固定するインプラント用に開発されてきた主な理由はどれか。
  2. 皮質骨(ヤング率20 GPa)と、同じ断面積の Ti-6Al-4V(ヤング率110 GPa)の棒が平行に接合され、長さ方向に一緒に引張荷重を受けている。両者のひずみが等しいとき、全荷重のうち骨が受け持つ割合はどれに最も近いか。

関連する用語

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