骨セメントとは

こつせめんと

PMMA の粉末とメタクリル酸メチルの液を混ぜ、体内で重合させて人工関節を骨に固定する材料。接着ではなく、すき間を埋めて機械的にかみ合うことで固定する。

「骨セメント」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(生体材料など)。

この用語の分野: 生体材料

人工関節の固定での役割

骨セメントは、1960年前後にチャンレーが人工股関節の固定に導入して広まった材料です。練り合わせた直後の軟らかい状態で骨の中に詰め、そこにステムなどを挿入すると、セメントが骨の海綿状の凹凸とインプラントの間のすき間に入り込んで固まります。化学的に接着するのではなく、凹凸に入り込んで機械的にかみ合い、荷重を広い面積で骨に伝えるのが役割で、すき間を埋めるグラウトにたとえられます。手術の直後から体重をかけられることが、セメントを使わない固定と比べたときの大きな利点です。

組成と固まる仕組み

粉末は主に PMMA の粒子で、重合開始剤の過酸化ベンゾイルと、X線写真で見えるようにする造影剤の硫酸バリウムやジルコニアを含みます。液体はメタクリル酸メチルのモノマーに、室温で反応を進める促進剤の芳香族アミンと、保存中の重合を防ぐ安定剤を加えたものです。両者を混ぜると、促進剤が開始剤を分解してラジカルができ、モノマーが重合して粉末の粒子をつなぎ、全体が固まります。液状から餅のような状態を経て固まるまでの時間は温度で大きく変わるので、手術室の温度や材料の保管の温度を管理します。

規格で決められた性質

骨セメントの性質は ISO 5833 や ASTM F451 で決められていて、試験の型の中での硬化のときの最高温度は90℃以下、硬化の時間は ASTM F451 で5〜15分、ISO 5833 で3〜15分、圧縮強さは70 MPa 以上などが求められ、ISO 5833 では曲げ強さ50 MPa 以上、曲げ弾性率1800 MPa 以上も定められています。PMMA は圧縮には強いものの引張や疲労には弱く、練るときに巻き込んだ気泡は疲労き裂の起点になります。そのため、真空の中で練り混ぜて気泡を減らす方法が広く使われています。

使い方の工夫と課題

抗菌薬を混ぜて感染を防ぐ骨セメントもあり、感染した人工関節の再手術などに使われます。また、骨粗しょう症による背骨の圧迫骨折では、つぶれた椎体に骨セメントを注入して痛みを和らげる治療があります。一方で、長期間の使用では、セメントと骨やインプラントとの境目のゆるみ、セメントの疲労による割れ、摩耗粉による骨の吸収が問題になります。詰めるときの圧力でモノマーや骨髄の脂肪が血管に入り、血圧が下がる合併症も知られています。こうした理由から、患者の年齢や骨の状態でセメントを使うかどうかを選びます。

骨セメントの練習問題に挑戦

人工関節の固定に使う PMMA(ポリメタクリル酸メチル)の骨セメントについての説明として正しいものはどれか。

  1. A骨とインプラントの両方の表面に化学結合して、エポキシ樹脂のような接着剤として両者を固定する
  2. B約200℃に加熱して溶かした PMMA を注入し、体温まで冷えてガラス状に固まることで固定する
  3. CPMMA の粉末と液体のモノマーを混ぜると、室温で重合が進み、発熱しながら硬化する
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正解:C. PMMA の粉末と液体のモノマーを混ぜると、室温で重合が進み、発熱しながら硬化する

骨セメントは、PMMA の粉末と、液体のメタクリル酸メチル(モノマー)を手術中に練り合わせて使います。重合開始剤から生じるラジカルによって室温で付加重合が進み、10分前後で硬化します。この重合は発熱反応で、硬化の際の温度上昇による周りの組織への熱損傷、残ったモノマー、重合収縮が注意点です。骨セメントは化学的に接着するのではなく、骨の凹凸とインプラントの間を埋めて機械的にかみ合う充填材として、荷重を骨に分散して伝えます。PMMA は熱可塑性樹脂ですが、溶ける温度は体内に入れるには高すぎるので、モノマーの状態で入れて体内で重合させます。

よくある質問

骨セメントは接着剤ですか。

いいえ。骨セメントは骨やインプラントと化学的に接着するのではなく、すき間を埋めて凹凸にかみ合うことで固定します。そのため、骨の表面の血液や脂肪を洗い流し、セメントに圧力をかけて凹凸の奥まで入り込ませることが、固定の強さを左右します。

固まるときの熱で骨は傷みませんか。

重合は発熱反応で、試験の型の中では温度がかなり上がりますが、体内ではセメントの層が薄く血流で冷やされるので、ピークはそれより低くなります。それでも周りの骨の細胞が傷む可能性はあるので、セメントの層を必要以上に厚くしないことが勧められます。

リン酸カルシウムのセメントとはどう違いますか。

リン酸カルシウムのセメントは、粉末と水溶液を練ると水和反応でアパタイトなどになって固まり、骨と結合し、時間をかけて骨に置き換わることもあります。ただし強度は PMMA の骨セメントより低いので、人工関節の固定ではなく、荷重の小さい骨の欠損を埋めるのに使われます。

解説の中の「骨セメント」

「骨セメント」が出てくる問題(2問)

  1. 人工関節の固定に使う PMMA(ポリメタクリル酸メチル)の骨セメントについての説明として正しいものはどれか。
  2. 歯科用インプラントなどで、純チタンについて言われるオッセオインテグレーションの説明として正しいものはどれか。

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