生分解性高分子とは

せいぶんかいせいこうぶんし

体内や環境の中で、加水分解や微生物の働きによって分解される高分子。ポリ乳酸やポリグリコール酸は、吸収性の縫合糸や骨固定材に使われる。

「生分解性高分子」は、1分野の1問の練習問題に出てきます(生体材料など)。

この用語の分野: 生体材料

体内と環境の2つの意味

生分解性高分子という言葉は、2つの場面で使われます。医療では、体内で分解されて吸収される材料を指し、生体吸収性材料とも呼ばれます。ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、その共重合体の PLGA、ポリカプロラクトン(PCL)が代表で、縫合糸、骨固定材、薬を少しずつ放出する担体に使われます。環境の分野では、微生物の働きで最終的に二酸化炭素と水などにまで分解されるプラスチックを指します。体内での分解は主に水による加水分解で進むのに対し、環境の中では微生物の酵素の働きが大きいという違いがあります。

分解の進み方

加水分解では、まず高分子の鎖がランダムに切れて分子量が下がり、そのあとに強度が失われ、最後に小さな断片が溶け出して質量が減ります。水が材料の内部まで速く入り込み、全体がほぼ一様に分解するものをバルク分解、水の浸入より表面での反応が速く、表面から少しずつ薄くなるものを表面分解と呼びます。PLA や PGA などの脂肪族ポリエステルは主にバルク分解で、大きな部品では内部に酸がたまり、中心から分解が速まります。ポリ酸無水物のように表面分解を示す材料は、薬を一定の速さで放出する担体に向いています。

性質と分解の速さの目安

分解の速さは、化学構造、結晶化度、分子量、部品の大きさで大きく変わります。PGA は親水性が高く、数週間のうちに強度を失うので、短い期間の縫合糸に向きます。結晶性のポリ-L-乳酸(PLLA)はガラス転移温度が約60℃、融点が約170〜180℃で、体内で完全に吸収されるまでに数年かかります。PCL はガラス転移温度が約−60℃と低く室温で軟らかく、分解も数年単位と遅い材料です。用途に合わせて、骨や組織が治るまで強度を保ち、そのあとで吸収されるように材料と組成を選びます。

生分解性とバイオマス由来の違い

生分解性は分解されるかどうか、バイオマス由来は原料が植物などかどうかの性質で、両者は別のことです。植物を原料にしたポリエチレンは生分解しませんし、石油由来でも PBAT や PCL は生分解します。また、生分解性の試験は条件を決めて行われます。例えば PLA は、約58℃の産業用のコンポストでは分解が進みますが、ガラス転移温度より低い土の中や海水の中では、非常にゆっくりとしか分解しません。生分解性とされる製品でも、捨てた環境で分解されるとは限らないので、どの条件での生分解性かを確かめることが大切です。

生分解性高分子の練習問題に挑戦

生分解性高分子の数平均分子量Mnが、加水分解によって Mn(t) = Mn₀exp(−kt) に従って下がるとする。k = 0.030 day⁻¹ のとき、Mn が初めの値の20%になるまでの日数はどれに最も近いか。

  1. A約23日
  2. B約27日
  3. C約54日
答えと解説を見る

正解:C. 約54日

exp(−kt) = 0.20 から t = ln(1/0.20)/k = ln 5/0.030 = 1.609/0.030 ≈ 53.6日、つまり約54日です。約23日は、自然対数の代わりに常用対数の log 5 ≈ 0.699 を使った値です。約27日は、分子量が時間に比例して直線的に下がるとして 0.80/0.030 とした値です。実際には、大きな部品の内部に酸がたまって分解が加速したり、分解中に結晶化が進んだりして、単純な指数関数からずれます。また、強度は分子量の低下に遅れて失われ、質量の減少(吸収)はさらに遅れて始まります。そのため、骨が治るまでの期間に強度を保ち、そのあと吸収されるように、材料の組成や分子量を選びます。

よくある質問

生体吸収性と生分解性は同じ意味ですか。

医療ではほぼ同じ意味で使われることが多いですが、厳密には、生分解性は材料が分解されること、生体吸収性は分解でできたものが代謝や排出で体から除かれることまで含めた言い方です。体内で小さく砕けるだけで残る材料は、生体吸収性とはいえません。

分解して出てくる乳酸などは体に害がありませんか。

乳酸やグリコール酸は代謝されて二酸化炭素と水になるので、ふつうは問題になりません。ただし、大きな部品が短い期間に分解すると、局所的に酸が増えて炎症のような反応が起こることがあり、分解の速さや部品の大きさで調整します。

分解の速さはどうやって調節しますか。

共重合で結晶性や親水性を変える方法が基本で、PLA にグリコール酸を共重合させた PLGA は、組成で分解の期間を変えられます。分子量、結晶化度、部品の厚さや気孔も影響します。結晶化度を上げたり、分子量を大きくしたりすると、分解は遅くなります。

「生分解性高分子」が出てくる問題(1問)

  1. 生分解性高分子の数平均分子量Mnが、加水分解によって Mn(t) = Mn₀exp(−kt) に従って下がるとする。k = 0.030 day⁻¹ のとき、Mn が初めの値の20%になるまでの日数はどれに最も近いか。

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