結晶化度とは

けっしょうかど

結晶性高分子の中で結晶部が占める割合。密度、DSCの融解熱、XRDなどから求め、高いほど密度・弾性率が上がり透明性は下がる。

「結晶化度」は、2分野の4問の練習問題に出てきます(高分子・複合材料, 生体材料など)。

この用語の分野: 高分子・複合材料

高分子が完全には結晶にならない理由

高分子の長い鎖はからみ合っているので、全体が規則正しく並ぶことはできません。溶融状態から冷えると、鎖が折りたたまれた厚さ10 nm程度の板状の結晶(ラメラ)と、その間の非晶部が交互に重なり、さらにそれが放射状に集まった球晶をつくります。結晶化度はこの結晶部の割合です。鎖の構造が規則的なほど結晶になりやすく、枝分かれの少ない高密度ポリエチレンは高く、側鎖の向きが不規則なアタクチックのポリスチレンやPMMAはほとんど結晶になりません。

測り方と値の違い

DSCでは、試料の融解熱ΔHmを完全結晶の融解熱ΔHm°で割って結晶化度を求めます。ΔHm°はポリエチレンでは約293 J/gがよく使われ、融解熱が176 J/gなら結晶化度は約60%です。PETのように昇温中に結晶化(冷結晶化)する試料では、その発熱を差し引きます。ほかに、密度から求める方法や、XRDで結晶のピークと非晶のハローの面積を分ける方法もあります。測定法ごとに「結晶」とみなす範囲が違うので、値を比べるときは方法をそろえます。

成形の条件で変わる

同じ樹脂でも、冷却が速いと結晶が育つ時間がなく結晶化度は低くなり、ゆっくり冷やしたり、融点より低い温度で保持(アニール)したりすると高くなります。PETボトルは、急冷して透明な非晶のプリフォームをつくってから、延伸ブローで分子鎖を引きそろえて結晶化させ、透明のまま強さとガスバリア性を高めています。ポリプロピレンでは造核剤を加えて球晶を細かくし、透明性や剛性を上げます。成形品の性質を考えるときは、材料の銘柄だけでなく成形条件も重要です。

性質と使い分けへの影響

結晶部は融点Tmまで融けないので、Tgより高い温度でも、結晶部が分子鎖をつなぎとめて形を保ちます。ポリエチレンやポリプロピレンが、Tgより高い室温で軟らかくも自立した形を保てるのはこのためです。結晶化度が高いほど、弾性率、耐熱性、耐薬品性、ガスバリア性は上がりますが、耐衝撃性や透明性は下がりがちです。また結晶性の樹脂は、結晶化による体積の減少のため、非晶性の樹脂より成形収縮が大きくなる傾向があり、金型の設計で考慮します。

結晶化度の練習問題に挑戦

ポリエチレンの完全結晶の密度を1.000 g/cm³、完全非晶の密度を0.850 g/cm³とする。密度0.925 g/cm³の試料の結晶化度(質量分率)はどれに最も近いか。

  1. A約46%
  2. B約50%
  3. C約54%
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正解:C. 約54%

結晶部と非晶部の体積が足し合わされるとすると、質量基準の結晶化度は Xc = ρc(ρs − ρa)/[ρs(ρc − ρa)] = 1.000 × (0.925 − 0.850)/[0.925 × (1.000 − 0.850)] = 0.075/0.13875 ≈ 0.54、つまり約54%です。約50%は (ρs − ρa)/(ρc − ρa) で求めた体積分率で、質量分率とは密度の比の分だけ異なります。約46%は非晶部の質量分率(1 − 0.54)です。密度法は簡便な結晶化度の測定法で、DSCの融解熱やX線回折の結晶ピークの面積の比からも結晶化度を求められます。完全結晶の密度は、結晶構造の格子定数から計算できます。

同じ種類の高分子で結晶化度が高くなると、一般にどうなるか。

  1. A密度と弾性率が上がり、透明性は下がる
  2. B密度は下がり、弾性率は上がる
  3. C密度と弾性率がともに下がり、透明性は上がる
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正解:A. 密度と弾性率が上がり、透明性は下がる

結晶部では分子鎖が規則正しく密に詰まっているので、結晶化度が高いほど密度が上がり、分子鎖間の相互作用も強くなって、弾性率、降伏強さ、耐熱性、耐薬品性が向上します。高密度ポリエチレン(HDPE)が低密度ポリエチレン(LDPE)より硬いのはこのためです。一方、結晶部と非晶部では屈折率が異なり、光の波長程度以上の大きさの球晶などが光を散乱するので、透明性は下がって乳白色になります。気体も結晶部を通りにくいので、気体の透過性は低くなります。密度が下がるというのは逆で、透明性が高いのはPMMAやポリカーボネートのような非晶性の高分子の特徴です。

よくある質問

結晶化度とガラス転移温度・融点の関係は?

Tgは非晶部の分子運動が始まる温度、Tmは結晶部が融ける温度です。結晶化度が高いとTgでの変化は小さくなり、Tmでの融解熱が大きくなります。完全に非晶の高分子にはTmがありません。

結晶化度100%の高分子はありますか?

ふつうの成形品ではありません。希薄な溶液から成長させた単結晶はそれに近くなり、超高分子量ポリエチレンを強く延伸した繊維では90%前後に達することがありますが、からみ合いや鎖の末端があるため完全な結晶にはなりません。

DSCで結晶化度を求めるときの注意点は?

完全結晶の融解熱の値を文献でそろえること、昇温中の冷結晶化の発熱を差し引くこと、昇温速度や熱履歴で値が変わることに注意します。1回目の昇温は成形時の状態、2回目は一定条件で冷やした状態を表します。

解説の中の「結晶化度」

「結晶化度」が出てくる問題(4問)

  1. ポリエチレンの完全結晶の密度を1.000 g/cm³、完全非晶の密度を0.850 g/cm³とする。密度0.925 g/cm³の試料の結晶化度(質量分率)はどれに最も近いか。
  2. 同じ種類の高分子で結晶化度が高くなると、一般にどうなるか。
  3. ポリ塩化ビニル(PVC)に可塑剤を加えると、ガラス転移温度Tgと材料の性質はどうなるか。
  4. L体だけからなる結晶性のポリ-L-乳酸(PLLA)の骨固定ピンは、体内で完全に吸収されるまでに数年かかる。分解を速くする方法として正しいものはどれか。

関連する用語

XRD(X線回折) ガラス転移温度 熱硬化性樹脂 粘弾性 複合則

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