粘弾性とは
ねんだんせい
弾性体のような性質と粘性流体のような性質をあわせもつこと。高分子では応力緩和やクリープとして現れ、時間と温度に依存する。
「粘弾性」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(高分子・複合材料など)。
この用語の分野: 高分子・複合材料
ねんだんせい
弾性体のような性質と粘性流体のような性質をあわせもつこと。高分子では応力緩和やクリープとして現れ、時間と温度に依存する。
「粘弾性」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(高分子・複合材料など)。
この用語の分野: 高分子・複合材料
粘弾性体は、短い時間で力をかけると弾性体のように、長い時間かけると液体のように振る舞います。どちらに見えるかは、材料の緩和時間と観察の時間の比で決まります。シリコーンでできたおもちゃのパテが、すばやく引っ張るとちぎれ、ゆっくり引くと伸び、置いておくと流れて平らになるのが身近な例です。高分子では、一定の荷重でひずみが増えるクリープ、一定のひずみで応力が下がる応力緩和、負荷と除荷で曲線が一致しないヒステリシスとして現れます。
正弦波のひずみを与えると、粘弾性体の応力は位相が δ(0〜90°)だけ進みます。応力をひずみと同じ位相の成分と90°ずれた成分に分けると、貯蔵弾性率E′(蓄えて戻るエネルギー)と損失弾性率E″(熱として失われるエネルギー)が得られ、比 tan δ = E″/E′ を損失正接とよびます。純粋な弾性体では δ = 0、純粋な粘性液体では δ = 90° です。温度を変えながら測る動的粘弾性測定(DMA)では、Tg付近でE′が急に下がり、tan δが極大になります。
ひずみが小さい範囲では、過去に加えた応力やひずみの効果を単純に足し合わせられるボルツマンの重ね合わせの原理が成り立ち、これを線形粘弾性とよびます。ばねとダッシュポットのモデルはこの範囲の振る舞いを表すもので、実際の高分子は緩和時間の異なる多数のマクスウェル要素を並べた一般化モデルで近似し、有限要素法の解析にもこの形で入力します。ひずみが大きくなると応答が線形からずれ、重ね合わせが成り立たなくなります。
高分子では、温度を上げることと長い時間で観察することが同じ効果をもちます。Tg付近ではWLF式 log a_T = −C₁(T − Tr)/(C₂ + T − Tr) がよく使われ、基準温度をTgとすると C₁ ≈ 17.44、C₂ ≈ 51.6 K が汎用の値です。これを使うと、Tgより10 K高い温度では緩和が約700倍速く進む計算になります。制振材は使う温度と周波数でtan δが大きくなるように設計し、タイヤのゴムでは低温側と高温側のtan δの値を、グリップと転がり抵抗の目安にします。
正解:A. ばねとダッシュポットを直列につないだマクスウェルモデルは、一定ひずみのもとでの応力緩和を表せる
マクスウェルモデル(直列)に一定のひずみを与えると、はじめはばねが伸びて応力が生じ、その後ダッシュポットがゆっくり伸びてばねが縮むので、応力は σ = σ₀exp(−t/τ)(τ = η/E)のように緩和します。フォークトモデル(並列)ではばねとダッシュポットのひずみが常に等しいので、一定ひずみでは応力は緩和しません。フォークトモデルが表すのは、一定応力のもとでひずみが時間とともに一定値に近づく遅延弾性(クリープ)です。マクスウェルモデルに一定応力をかけると、ひずみは一定値に近づかず、時間に比例して増え続けます。実際の高分子は、これらを組み合わせた4要素モデルなどで近似します。
正解:A. 温度を上げることは、より長い時間(より低い周波数)で測定することと同じ効果をもつ
高分子の分子運動は温度が高いほど速いので、高温で短い時間に起こる緩和は、低温では長い時間をかけて起こります。そのため、異なる温度で測った緩和弾性率の曲線を対数の時間軸に沿って平行移動すると、1本の合成曲線(マスターカーブ)に重ねられます。つまり温度を上げることは、長時間(低周波数)側で測ることと同じ効果をもちます。移動量(シフトファクター)は、Tg付近ではWLF式、Tgより十分低い温度ではアレニウス型の式で表されます。この原理を使うと、高温での短時間の試験から、室温での長期のクリープや応力緩和を予測できます。
線形の粘弾性による変形は、時間がたてば元に戻る成分を含み、応力の大きさに比例します。塑性は降伏応力を超えたときに起こる永久的な変形で、除荷しても戻りません。高分子では両方が同時に起こることもあります。
1周期の変形で、熱として失われるエネルギーと蓄えられるエネルギーの比に対応する量で、損失弾性率を貯蔵弾性率で割った値です。大きいほど振動を吸収しやすく、ゴムや制振材の評価に使われます。
あります。室温の金属でも、格子間の炭素原子の跳躍などによって、ひずみが応力に少し遅れる現象が起こり、内部摩擦として測られます。量は高分子よりずっと小さいものの、精密なばねや振動子の減衰、高温でのクリープに関係します。