ガラス転移温度とは

がらすてんいおんど

非晶質の物質や高分子の非晶部で、分子や原子の運動が凍結され、ガラス状とゴム状(過冷却液体)が切り替わる温度。Tgと書く。

「ガラス転移温度」は、4分野の7問の練習問題に出てきます(ガラスと非晶質材料, 高分子・複合材料, セラミックス・ガラスなど)。

この用語の分野: 高分子・複合材料

何が起きている温度か

液体や高分子の融液を冷やしていくと、分子の再配列がだんだん遅くなります。冷却に再配列が追いつかなくなると、構造がそのまま凍結されて固体のようにふるまうガラス状態になります。この切り替わりが起こる温度がガラス転移温度Tgで、比容積や比熱、熱膨張係数の温度変化がここで折れ曲がります。高分子では、主鎖のいくつかの単位がまとまって動くセグメント運動がTgより上で活発になり、ゴム状の柔らかい状態になります。

融点との違い

融点Tmは結晶が融解する熱力学的な相転移の温度で、決まった値をもちます。一方Tgは、緩和の時間と観測の時間の兼ね合いで決まる速度論的な現象で、冷却速度や加熱速度、測定の周波数で値が変わります。冷却が速いほど高い温度で構造が凍結し、Tgは高くなります。結晶性高分子には結晶部の融点Tmと非晶部のTgの両方があり、TgはTmより必ず低く、絶対温度の比で約0.5〜0.8になることが多いです。非晶性高分子にはTmがなく、Tgだけがあります。

Tgを左右する要因

分子鎖が動きにくいほどTgは高くなります。主鎖に芳香環などの剛直な構造があるもの、側鎖が大きいもの、分子鎖どうしの相互作用が強いもの、架橋が多いものはTgが高く、ポリカーボネートは約150℃、ポリスチレンは約100℃です。反対に、柔軟な主鎖のポリエチレンやシリコーンゴムはTgが室温よりはるかに低くなります。可塑剤や水分は分子鎖の間に入って自由体積を増やし、Tgを下げます。エポキシ樹脂では吸湿でTgが下がることが信頼性の問題になります。

測定法と実務での注意

Tgは、DSCでの比熱の階段状の変化、熱膨張の測定(TMA)での膨張係数の折れ曲がり、動的粘弾性測定(DMA)での貯蔵弾性率の急な低下や損失正接tanδのピークなどで測定します。同じ材料でも手法や昇温速度、DMAでは周波数によって値が10℃以上違うことがあるので、データを比べるときは測定条件を確かめる必要があります。半導体の封止材や基板の樹脂では、Tgを超えると膨張係数と弾性率が大きく変わるので、リフローなどの温度との関係が重要です。

ガラス転移温度の練習問題に挑戦

ガラスを融液から冷却するときのガラス転移温度Tgについての説明として正しいものはどれか。

  1. A冷却速度によらず、物質ごとに一定の値である
  2. B冷却速度を大きくするほど、Tgは低くなる
  3. C冷却速度を大きくするほど、Tgは高くなる
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正解:C. 冷却速度を大きくするほど、Tgは高くなる

融液を冷やすと粘度が急に上がり、原子の再配列が冷却に追いつかなくなった温度で構造が凍結されて、比容積の温度変化の傾きが変わります。この温度がガラス転移温度Tgで、粘度の目安は約10¹² Pa·sです。冷却が速いほど原子が再配列する時間が短いので、より高い温度で構造が凍結され、Tgは高くなります。このとき凍結された構造は密度の低い状態になります。Tgは融点のような熱力学的な相転移の温度ではないので、冷却速度によらず一定というわけではありません。この性質は、ガラスの徐冷(アニール)による残留応力の除去にも関わります。

結晶性高分子(半結晶性高分子)のガラス転移温度Tgと融点Tmについての説明として正しいものはどれか。

  1. ATgはTmより高い
  2. BTgは非晶部の分子鎖の運動が凍結・解放される温度で、Tmより低い
  3. CTgは結晶部が融解する温度で、結晶をもたない非晶性高分子には存在しない
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正解:B. Tgは非晶部の分子鎖の運動が凍結・解放される温度で、Tmより低い

結晶性高分子は結晶部と非晶部からなります。Tgは非晶部の分子鎖のセグメント運動が凍結されたり解放されたりする温度で、Tgより下では硬いガラス状、上ではゴム状になります。Tmは結晶部が融解する温度で、TgはTmより必ず低く、多くの高分子で Tg/Tm(絶対温度の比)は約0.5〜0.8です。例えばPETはTgが約70〜80℃、Tmが約260℃です。結晶部の融解を表すのはTmのほうで、ポリスチレンのような非晶性高分子にはTmはありませんが、Tgはあります。ポリエチレンのようにTgが室温より低い高分子は、室温で非晶部がゴム状なので、しなやかです。

よくある質問

ガラス転移温度より上では、高分子は液体になりますか?

非晶性高分子は、Tgより上ではまずゴム状の領域になり、さらに温度を上げると流動するようになります。架橋した熱硬化性樹脂は、Tgより上でもゴム状のまま流動しません。

DSCとDMAでTgの値が違うのはなぜですか?

Tgは速度論的な現象なので、測定の時間尺度によって値が変わります。DMAの tanδ のピークは、DSCの中点の値より高めに出ることが多く、どの定義の値かを明記して比べる必要があります。

ガラスのTgと高分子のTgは同じものですか?

どちらも構造の凍結によるガラス転移で、仕組みは同じです。ケイ酸塩ガラスでは数百℃、高分子では−100℃程度から200℃程度までと、値の範囲が大きく違います。

解説の中の「ガラス転移温度」

「ガラス転移温度」が出てくる問題(7問)

  1. ガラスを融液から冷却するときのガラス転移温度Tgについての説明として正しいものはどれか。
  2. 結晶性高分子(半結晶性高分子)のガラス転移温度Tgと融点Tmについての説明として正しいものはどれか。
  3. ポリ塩化ビニル(PVC)に可塑剤を加えると、ガラス転移温度Tgと材料の性質はどうなるか。
  4. 高分子の試料を加熱しながら測定するとき、ガラス転移温度Tgを検出するのに適した手法と、その現れ方として正しいものはどれか。
  5. あるソーダ石灰ガラスの粘度η(Pa·s)が、VFT式 log₁₀η = A + B/(T − T₀)(A = −2.5、B = 4300 K、T₀ = 520 K)で表されるとする。粘度が10¹² Pa·s(徐冷点の目安で、ガラス転移温度に近い)になる温度はどれに最も近いか。
  6. ターンブルの目安では、換算ガラス転移温度 Trg = Tg/Tl(Tgはガラス転移温度、Tlは液相線温度、どちらも絶対温度)が大きいほど、融液を冷やしたときにガラスになりやすい。次の合金のうち、この目安で最もガラスになりやすいものはどれか。
  7. SiO₂ガラスにNa₂Oを加えると、ガラスの構造と性質はどう変わるか。

関連する用語

結晶化度 換算ガラス転移温度 非架橋酸素 線膨張係数 熱硬化性樹脂 粘弾性 複合則

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