ステンレス鋼とは

すてんれすこう

Crをおよそ11%以上含み、表面の不動態皮膜でさびにくくした合金鋼。組織によりオーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系などに分かれる。

「ステンレス鋼」は、5分野の7問の練習問題に出てきます(金属材料と合金, 腐食と表面処理, 材料の加工と接合など)。

この用語の分野: 金属材料と合金

さびにくさの源

ステンレス鋼がさびにくいのは、表面にCrの酸化物を主とする厚さ数nm程度の不動態皮膜ができ、金属が溶け出すのを防ぐからです。Crがおよそ11%を超えると皮膜が安定してでき、Crを増やすほど耐食性は上がります。皮膜は酸素のある環境では傷がついても自然に再生しますが、塩化物イオンが多い環境ではその弱い点が破られて孔食やすき間腐食が起こります。海水の環境ではMoを加えたSUS316などが選ばれます。さびにくいだけで、どんな環境でもさびないわけではない点に注意しましょう。

組織による分類

代表的なSUS304(18%Cr-8%Ni)は、Niがオーステナイトを安定にするため室温でもFCCの組織をもつオーステナイト系で、延性と溶接性がよく、焼なまし状態ではほぼ非磁性です。Niをほとんど含まないSUS430などはBCCのフェライト系で磁性をもち、比較的安価です。Cr約13%で炭素の多いSUS410などはマルテンサイト系で、焼入れで硬化するため刃物などに使われます。ほかに、オーステナイトとフェライトが半々の二相系は、強度と耐応力腐食割れ性に優れます。

鋭敏化と応力腐食割れ

オーステナイト系ステンレス鋼を500〜800℃程度に加熱すると、粒界にCr炭化物が析出し、そのまわりのCrが減って不動態が弱くなります。これを鋭敏化といい、溶接の熱影響部で粒界腐食の原因になります。対策として、炭素を減らしたSUS304Lや、炭素をTiやNbの炭化物として固定した鋼種が使われます。また、オーステナイト系は高温の塩化物環境で応力腐食割れを起こしやすく、残留応力の除去や、二相系への変更が対策になります。

ステンレス鋼の練習問題に挑戦

18%Cr-8%Niのオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の性質として正しいものはどれか。

  1. ACrを多く含むのでマルテンサイト系になり、焼入れによって大きく硬化する
  2. BBCCのフェライト系で、焼なまし状態でも磁石に強く引き付けられる
  3. CFCCのオーステナイト組織で、焼入れで硬化せず、焼なまし状態ではほぼ非磁性である
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正解:C. FCCのオーステナイト組織で、焼入れで硬化せず、焼なまし状態ではほぼ非磁性である

SUS304は、オーステナイトを安定にするNiを約8%含むため、室温でもFCCのオーステナイト組織を保ちます。冷却で変態しないので焼入れでは硬化せず、強化は冷間加工で行います。焼なまし状態ではほぼ非磁性ですが、強く冷間加工すると一部が加工誘起マルテンサイトに変わり、磁石に付くようになります。FCCなので低温でも延性脆性遷移を示さず、低温容器にも使えます。焼入れで硬化するのは、Crを約13%含み炭素の多いSUS410などのマルテンサイト系です。Niをほとんど含まず、BCCで強い磁性をもつのはSUS430などのフェライト系です。

ステンレス鋼が大気や水の中でさびにくい主な理由はどれか。

  1. ANiの添加で合金の標準電極電位が金や白金と同じくらい貴になり、溶けにくくなるから
  2. B表面に厚さ数mmの緻密な酸化スケールができ、水や酸素を外界から遮断するから
  3. CCrを約11%以上含み、表面に厚さ数nmの不動態皮膜ができて自然に再生するから
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正解:C. Crを約11%以上含み、表面に厚さ数nmの不動態皮膜ができて自然に再生するから

ステンレス鋼は、Crをおよそ11%(規格の定義では10.5%)以上含むことで、表面にCrの酸化物を主とする厚さわずか数nm程度の不動態皮膜ができ、金属がそれ以上溶け出すのを防ぎます。皮膜は酸素のある環境では、傷がついても自然に再生する点が重要です。そのため不動態は、硝酸のような酸化性の環境では保たれやすく、酸素が乏しい環境や塩化物イオンが多い環境、還元性の酸(塩酸など)では壊れやすくなります。合金全体の電位が金や白金並みに貴になるわけではなく、Niの主な役割はオーステナイト組織の安定化です。数mmもある厚い酸化スケールは高温の酸化でできるもので、割れやはく離を起こしやすく、不動態皮膜とはまったく別物です。

よくある質問

ステンレス鋼が磁石に付くことはありますか?

フェライト系やマルテンサイト系は磁石に付きます。非磁性のオーステナイト系のSUS304も、強く冷間加工すると一部が加工誘起マルテンサイトになり、磁石に付くようになります。

SUS304とSUS316の違いは何ですか?

SUS316はMoを約2〜3%含み、塩化物イオンによる孔食やすき間腐食に強くなっています。海水や塩分の多い環境ではSUS316などが選ばれます。

ステンレス鋼は焼入れで硬くなりますか?

マルテンサイト系は焼入れで硬化しますが、オーステナイト系とフェライト系は冷却で変態しないので、焼入れでは硬化しません。オーステナイト系は冷間加工で強化します。

解説の中の「ステンレス鋼」

「ステンレス鋼」が出てくる問題(7問)

  1. 18%Cr-8%Niのオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の性質として正しいものはどれか。
  2. ステンレス鋼が大気や水の中でさびにくい主な理由はどれか。
  3. SUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼を溶接すると、溶接線から少し離れた熱影響部で粒界腐食が起こることがある(ウェルドディケイ)。その原因と対策の組み合わせとして正しいものはどれか。
  4. 低温で延性から脆性への遷移(延性脆性遷移)がはっきり現れる材料はどれか。
  5. 焼なました銅の塑性域での真応力σと真ひずみεの関係が σ = Kεⁿ で表され、K = 530 MPa、n = 0.44 とする。真ひずみ0.10のときの真応力はどれに最も近いか。
  6. 応力腐食割れについての説明として正しいものはどれか。
  7. ある温度で、純粋な Cr と Cr₂O₃ が共存する平衡酸素分圧を p₀ とする。同じ温度で、Cr の活量が0.10 の合金と純粋な Cr₂O₃ が共存する平衡酸素分圧は、p₀ の約何倍か。反応を 4/3 Cr + O₂ → 2/3 Cr₂O₃ とする。

関連する用語

マルテンサイト 不動態 溶接熱影響部 鋭敏化 転位 加工硬化 応力腐食割れ 黄銅 平衡酸素分圧 活量

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