平衡酸素分圧とは
へいこうさんそぶんあつ
金属とその酸化物が平衡に共存する酸素分圧。ΔG° = RT ln pO₂ で求まり、雰囲気の酸素分圧がこれより高いと金属が酸化され、低いと酸化物が還元される。
「平衡酸素分圧」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(材料の熱力学など)。
この用語の分野: 材料の熱力学
へいこうさんそぶんあつ
金属とその酸化物が平衡に共存する酸素分圧。ΔG° = RT ln pO₂ で求まり、雰囲気の酸素分圧がこれより高いと金属が酸化され、低いと酸化物が還元される。
「平衡酸素分圧」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(材料の熱力学など)。
この用語の分野: 材料の熱力学
O₂ 1 molあたりで書いた 2M + O₂ → 2MO で、金属と酸化物が純粋な固体なら、平衡定数は 1/pO₂ です。ΔG° = −RT ln K から ΔG° = RT ln pO₂ となり、標準の値だけで平衡酸素分圧が求まります。例えば ΔG° = −400 kJ/mol の反応なら、1200 K で log pO₂ = −400000/(2.303 × 8.314 × 1200) ≈ −17.4、つまり約4×10⁻¹⁸ bar です。合金や固溶体の中にあって活量が1でないときは、活量を平衡定数に入れて求めます。
平衡酸素分圧は、酸化物が安定な金属ほど極めて低くなります。例えば1000℃で 4/3 Cr + O₂ → 2/3 Cr₂O₃ の ΔG° は約−530 kJ/mol で、平衡酸素分圧は10⁻²² bar程度です。一方、1 Pa の真空でも、残った空気の酸素分圧は約2×10⁻⁶ bar もあり、これよりはるかに高い値です。そのため、真空中や純度の高い不活性ガスの中でも、Cr、Al、Ti などを含む合金の表面は加熱すると酸化されます。こうした金属の光輝熱処理では、水素など還元性のガスを使って、雰囲気の実効的な酸素分圧を下げます。
酸素の分圧を直接 10⁻²⁰ bar のように低くするのは難しいので、実際の雰囲気では H₂/H₂O や CO/CO₂ の混合ガスの比で酸素分圧を決めます。2H₂ + O₂ → 2H₂O の平衡から、H₂O と H₂ の比が決まれば、その温度での酸素分圧が決まります。工業炉では水素の中の水蒸気の量を露点で管理し、露点が低いほど酸素分圧は低くなります。どの金属が酸化されるかは、雰囲気の酸素分圧と各金属の平衡酸素分圧の大小で判断でき、合金の中の酸化しやすい成分だけが表面で酸化される選択酸化も、この考え方で扱います。
雰囲気や溶けた金属の中の酸素分圧は、ジルコニアの固体電解質を使った酸素センサーで測れます。ジルコニアの両側に酸素分圧 p₁ と p₂ のガスがあると、酸化物イオンが動いて起電力 E = (RT/4F) ln(p₁/p₂) が生じます(Fはファラデー定数)。1000 Kでは酸素分圧が1桁違うごとに約49.6 mVの起電力になり、基準の側に空気を使えば、極めて低い酸素分圧も電圧として測れます。自動車の排ガスの空燃比の制御、製鋼で溶鋼の酸素量を測るプローブ、熱処理炉の雰囲気の管理に使われています。
正解:C. 約3×10⁻¹⁶ bar
平衡では ΔG = ΔG° + RT ln(1/pO₂) = 0 なので、ΔG° = RT ln pO₂ です。log pO₂ = ΔG°/(2.303RT) = −298000/(2.303 × 8.314 × 1000) ≈ −15.6 となり、pO₂ ≈ 3×10⁻¹⁶ bar です。雰囲気の酸素分圧がこれより高ければ Ni は酸化され、低ければ NiO は還元されます。約1×10⁻³⁶ bar は、ΔG°/RT ≈ −35.8 を自然対数ではなく常用対数の値と取り違えたものです。約2×10⁻⁸ bar は、NiO 1 molあたりの ΔG°(−149 kJ/mol)を、pO₂ の指数1/2を落として RT ln pO₂ に等しいとした値です。
正解:B. 約22倍
平衡では ΔG° = −RT ln K で、K = a(Cr₂O₃)の2/3乗 ÷ (a(Cr)の4/3乗 × pO₂) です。同じ温度なら ΔG° も K も同じで、a(Cr₂O₃) = 1 のとき、a(Cr)の4/3乗 × pO₂ が一定になります。したがって pO₂ = p₀ × 0.10の −4/3 乗 ≈ 21.5 p₀、つまり約22倍です。合金中の Cr は活量が下がった分だけ酸化されにくくなり、より高い酸素分圧が必要になります。約10倍は Cr の係数4/3を1とした値、約100倍は係数を2とした値です。このように合金元素の活量と酸素分圧から、ステンレス鋼の表面でどの元素が選択的に酸化されるかを判断できます。
同じものを指します。酸化物が分解して金属と酸素になる反応で、平衡のときの酸素の圧力を酸化物の解離圧と呼びます。雰囲気の酸素分圧が解離圧より低ければ酸化物は分解(還元)され、高ければ金属が酸化されます。炭酸塩の分解などで生じる気体の平衡の圧力を、同じように解離圧と呼ぶこともあります。
多くの金属の酸化反応は ΔS° が負なので、温度が上がると ΔG° が0に近づき、平衡酸素分圧は高くなります。つまり酸化物は高温ほど分解しやすくなります。例えば Ni/NiO の平衡酸素分圧は、1000 K から1200 K に上げるだけでおよそ4桁高くなります。
金属の活量が1より小さくなるので、酸化物と平衡になる酸素分圧は純金属のときより高くなります。つまり合金の中の金属は、同じ雰囲気で純金属より酸化されにくくなります。逆に、酸化物が固溶体の中にあって活量が小さいときは、酸化物ができやすくなります。