化学ポテンシャルとは
かがくぽてんしゃる
成分を1 mol加えたときの系のギブスエネルギーの増え方(部分モルギブスエネルギー)。相平衡では、各成分の化学ポテンシャルがすべての相で等しくなる。
「化学ポテンシャル」は、2分野の3問の練習問題に出てきます(材料の熱力学, 薄膜・表面・ナノ材料など)。
この用語の分野: 材料の熱力学
かがくぽてんしゃる
成分を1 mol加えたときの系のギブスエネルギーの増え方(部分モルギブスエネルギー)。相平衡では、各成分の化学ポテンシャルがすべての相で等しくなる。
「化学ポテンシャル」は、2分野の3問の練習問題に出てきます(材料の熱力学, 薄膜・表面・ナノ材料など)。
この用語の分野: 材料の熱力学
化学ポテンシャルは、温度、圧力、ほかの成分の量を一定にして成分iを少し加えたときの、ギブスエネルギーの増え方 µᵢ = (∂G/∂nᵢ) です。単位は J/mol です。ある成分を相αから相βへ少量移すと、Gは (µᵢ(β) − µᵢ(α)) × 移した量 だけ変わるので、成分は化学ポテンシャルの高い場所から低い場所へ移ろうとします。電位の差で電荷が流れ、温度の差で熱が流れるのと同じように、化学ポテンシャルの差は物質を動かす駆動力です。純物質では、化学ポテンシャルは1 molあたりのギブスエネルギーに等しくなります。
溶液の中の成分の化学ポテンシャルは、基準の状態の値 µ° と活量aを使って µ = µ° + RT ln a と書けます。理想気体では a = p/p°、理想溶液では a = x です。2成分の溶液では、1 molあたりのGを組成に対して描き、ある組成で接線を引くと、接線が x = 0 と x = 1 の縦軸と交わる値が各成分の化学ポテンシャルです。また、2成分の化学ポテンシャルは独立には変えられず、x_A dµ_A + x_B dµ_B = 0 のギブス・デュエムの式で結ばれているので、一方の活量を測ればもう一方も求まります。
拡散はふつう濃度の高いほうから低いほうへ進みますが、本当の駆動力は化学ポテンシャルの勾配です。1949年にダーケンは、炭素の濃度がほぼ同じでケイ素の量が違う2つの鋼をつないで加熱すると、炭素がケイ素の少ない側へ移り、接合面の近くで炭素の濃度に大きな差が生まれることを示しました。ケイ素は炭素の活量を上げるので、ケイ素の多い側の炭素は化学ポテンシャルが高く、そこから逃げ出したのです。スピノーダル分解の上り坂拡散も、濃度ではなく化学ポテンシャルの差で原子が動く例です。
化学ポテンシャルは粒子の大きさや電荷でも変わります。半径rの粒子では、表面エネルギーγのために化学ポテンシャルが 2γV_m/r(V_mはモル体積)だけ高くなります。仮に γ = 1 J/m²、V_m = 1×10⁻⁵ m³/mol とすると、r = 10 nm で約2 kJ/mol 高く、1000 Kでのまわりへの溶解度は平らな面に比べて約1.27倍になります。この差で小さな粒子が溶けて大きな粒子が育つのがオストワルド成長です。電荷のある粒子には電位の項を加えた電気化学ポテンシャルを使い、固体の中の電子ではこれがフェルミ準位にあたります。
正解:A. 小さな粒子ほどまわりの溶解度が高いので溶けて消え、その原子が大きな粒子へ拡散して大きな粒子が成長する
曲率半径の小さな粒子は、界面エネルギーのぶんだけ化学ポテンシャルが高く、まわりの母相での平衡溶解度が高くなります(ギブス・トムソン効果)。そのため小さな粒子のまわりでは溶質の濃度が高く、大きな粒子のまわりでは低くなるので、溶質は小さな粒子から大きな粒子へ拡散します。こうして小さな粒子は消え、大きな粒子が成長して、全体の界面の面積(界面エネルギー)が減っていきます。析出強化合金の過時効による軟化や、ナノ粒子の粗大化の主な原因です。溶解度の大小関係が逆の選択肢は誤りで、粒子の衝突・合体はオストワルド成長とは別の機構です。
正解:C. 純粋な固体や液体を基準(活量1)にとると、理想溶液では成分の活量はモル分率に等しい
活量aは、溶液中の成分の化学ポテンシャルを μ = μ° + RT ln a と書けるように定めた「熱力学的な実効濃度」です。純物質の状態を基準にとると、純粋な固体や液体の活量は1で、理想溶液ではラウールの法則により a = x(モル分率)です。実在の溶液では a = γx と書き、活量係数γが理想からのずれを表します。異種原子どうしの引き合いが同種どうしより弱いと、成分は溶液から逃げ出しやすくなって γ > 1(正のずれ)となり、相分離の傾向をもちます。異種どうしが強く引き合う場合は γ < 1 で、規則化や化合物の形成の傾向を示します。活量をモル濃度とみなすのは、希薄な水溶液での近似にすぎません。
ギブスエネルギーは系全体がもつ量で、物質の量に比例します。化学ポテンシャルは成分を1 mol加えたときのその増え方で、部分モルギブスエネルギーとも呼ばれ、量によらない示強性の量です。系全体のGは、各成分の量と化学ポテンシャルの積の和 G = Σnᵢµᵢ で表されます。
1 molあたりのエネルギーなので J/mol です。物理の分野では1粒子あたりのエネルギーとして eV などで表すこともあり、その場合は J/mol の値をアボガドロ定数で割った値になります。1 eV/粒子は約96.5 kJ/mol に相当します。
圧力が一定なら、温度による変化の割合は部分モルエントロピーにマイナスを付けた値なので、温度が上がると化学ポテンシャルは下がり、エントロピーの大きい相ほど速く下がります。そのため、低温では固体の化学ポテンシャルが低くても、高温では液体や気体のほうが低くなり、融解や蒸発が起こります。
曲率半径の小さな粒子は、界面エネルギーのぶんだけ化学ポテンシャルが高く、まわりの母相での平衡溶解度が高くなります(ギブス・トムソン効果)。
母相の中に大きさの異なる析出物の粒子が分散している合金を高温で長時間保持したときに起こる、オストワルド成長(オストワル…活量aは、溶液中の成分の化学ポテンシャルを μ = μ° + RT ln a と書けるように定めた「熱力学的な実効濃度」です。
溶液(液体または固溶体)の中の成分の活量についての説明として正しいものはどれか。接線の両端(x = 0 と x = 1)での値が、それぞれの成分の化学ポテンシャルです。
一定の温度と圧力で、二元系のα相とβ相が平衡に共存するための条件として正しいものはどれか。