黄銅とは

おうどう

銅に亜鉛を加えた合金で、真鍮ともいう。Zn約30%の7-3黄銅はα相単相で延性が大きく、約40%の6-4黄銅はβ相を含み強度が高い。

「黄銅」は、5分野の5問の練習問題に出てきます(結晶欠陥と拡散, 材料の熱的性質, 熱処理と金属材料など)。

この用語の分野: 金属材料と合金

亜鉛の量と相の変化

Cu-Zn系の状態図では、FCCのα相が亜鉛を最大で約39%(450℃付近)まで固溶でき、それより亜鉛が多くなるとBCCのβ相が現れます。β相は450℃付近より低い温度で原子が規則正しく並んだβ′相になり、硬く、冷間では変形しにくくなります。そのため、亜鉛約30%の7-3黄銅はα単相で冷間の深絞りに向き、約40%の6-4黄銅はα+β′の2相で、高温ではβ相が増えて軟らかくなるので熱間で加工します。亜鉛が約50%を超えるともろいγ相が現れるので、実用の黄銅はそれより亜鉛の少ない範囲に限られます。

代表的な黄銅と用途

JISでは、7-3黄銅がC2600、6-4黄銅がC2801などと番号が付いています。7-3黄銅は伸びが大きく、薬きょうや電球の口金、ラジエーターの部品など、深く絞る部品に使われてきました。6-4黄銅は強く、熱間で鍛造しやすいので、ボルトやナット、バルブなどに使われます。快削黄銅(C3604など)は鉛を数%含み、鉛が細かく散らばって切りくずを分断するので、自動旋盤で大量につくる小さな部品に向きます。飲み水に触れる部品では、鉛の代わりにビスマスやケイ素を使った黄銅も使われています。

黄銅に特有の腐食

黄銅は環境によって、亜鉛だけが選択的に溶け出して多孔質の銅が残る脱亜鉛腐食を起こします。外形は残っても強度がほとんどなくなる危険な腐食で、6-4黄銅のようにβ相を含む黄銅や、よどんだ水、塩化物を含む水の中で起こりやすくなります。α黄銅では、ヒ素、アンチモン、リンを微量加えると脱亜鉛を抑えられます。また、アンモニアを含む環境で引張の残留応力があると、粒界に沿って割れる時期割れ(応力腐食割れ)を起こすので、加工後に低温で焼なまして応力を除きます。

銅と比べたときの性質

亜鉛は銅より安いので、黄銅は銅より材料費が安く、しかも強くなります。亜鉛は銅の中で固溶強化に働き、α黄銅では強さだけでなく伸びも純銅より大きくなるのが特徴です。一方、溶け込んだ亜鉛が電子を散乱するので、電気伝導率と熱伝導率は純銅の3割ほどに下がり、電線や放熱の用途には向きません。色は亜鉛が少ないと赤みのある金色で、増えるほど黄色が強くなり、加工しやすさと美しい色から、装飾品や建築の金物、トランペットなどの金管楽器にも使われます。

黄銅の練習問題に挑戦

銅と黄銅(Cu-Zn合金)を接合して加熱すると、元の界面に置いた不活性なマーカーが黄銅の側へ移動する(カーケンドール効果)。この現象が示すこととして正しいものはどれか。

  1. A2種類の原子の拡散の速さが異なり、拡散が空孔機構で進んでいる
  2. B原子は格子間機構だけで拡散し、格子点の数は界面の両側で変わらない
  3. C界面に生じた熱応力によって、マーカーが黄銅の側へ押し流されている
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正解:A. 2種類の原子の拡散の速さが異なり、拡散が空孔機構で進んでいる

亜鉛が銅の中へ拡散する速さは、銅が黄銅の中へ拡散する速さより大きいため、黄銅の側から出ていく原子が入ってくる原子より多くなります。置換型の拡散は空孔との入れ替わりで進むので、原子の正味の流れと逆向きに空孔が流れ、黄銅の側で格子面が減ってマーカーが黄銅の側へ移動します。これは拡散が空孔機構で進むことを示した歴史的な実験です。格子間機構だけなら格子点の数は変わらず、マーカーは動きません。余った空孔が集まるとカーケンドールボイドになり、はんだ接合部などの信頼性を下げる原因になります。

純銅(室温の熱伝導率約400 W/(m·K))に亜鉛を約30%固溶させた黄銅では、熱伝導率が約120 W/(m·K) に下がる。主な理由はどれか。

  1. A亜鉛は熱をほとんど伝えない物質なので、その体積の分だけ熱の通り道が減るから
  2. B固溶によって格子が軟らかくなり、熱の大部分を運ぶフォノンの速さが大きく下がるから
  3. C溶質原子が伝導電子を散乱して平均自由行程が短くなり、電気伝導率とともに熱伝導率が下がるから
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正解:C. 溶質原子が伝導電子を散乱して平均自由行程が短くなり、電気伝導率とともに熱伝導率が下がるから

金属の熱は主に伝導電子が運ぶので、熱伝導率は電気伝導率とほぼ比例し、ヴィーデマン・フランツの法則で結ばれています。銅の格子に入った亜鉛原子は原子の並びの周期性を乱して電子を散乱するので、電子の平均自由行程が短くなり、黄銅の電気伝導率は純銅の3割ほどになります。熱伝導率も同じように約400から約120 W/(m·K) へ下がります。亜鉛そのものは熱伝導率が約116 W/(m·K) の金属で、熱を伝えない物質ではありません。金属ではフォノンが運ぶ熱はもともと一部にすぎないので、格子の性質が少し変わっても、ここまで大きな低下の説明にはなりません。

よくある質問

黄銅と真鍮は違うものですか?

同じものです。真鍮は昔からの呼び名で、JISや工業の分野では黄銅と呼びます。英語では brass で、金管楽器を使う吹奏楽団をブラスバンドと呼ぶのもこの語に由来します。

黄銅と青銅の違いは何ですか?

黄銅は銅に亜鉛、青銅は銅に錫を加えた合金です。青銅は鋳造性と耐摩耗性、耐食性に優れ、軸受や鋳物、銅像などの美術品に使われます。青銅の名は、古くなると表面にできる青緑色のさび(緑青)の色に由来するといわれます。

黄銅は錆びますか?

鉄のような赤さびは出ませんが、空気中で表面が酸化して色がくすみ、湿気や汗で緑青ができることがあります。水の環境によっては、脱亜鉛腐食や時期割れにも注意が必要です。

解説の中の「黄銅」

「黄銅」が出てくる問題(5問)

  1. 銅と黄銅(Cu-Zn合金)を接合して加熱すると、元の界面に置いた不活性なマーカーが黄銅の側へ移動する(カーケンドール効果)。この現象が示すこととして正しいものはどれか。
  2. 純銅(室温の熱伝導率約400 W/(m·K))に亜鉛を約30%固溶させた黄銅では、熱伝導率が約120 W/(m·K) に下がる。主な理由はどれか。
  3. 置換型の固溶強化についての説明として正しいものはどれか。
  4. 銅合金の名称と、主な合金元素の組み合わせとして正しいものはどれか。
  5. 応力腐食割れについての説明として正しいものはどれか。

関連する用語

空孔 ヴィーデマン・フランツの法則 フォノン 固溶強化 転位 応力腐食割れ ステンレス鋼 回復 加工硬化 再結晶

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