ヴィーデマン・フランツの法則とは

う゛ぃーでまんふらんつのほうそく

金属の熱伝導率κと電気伝導率σの比が絶対温度に比例し κ = LσT になるという法則。L はローレンツ数で約2.44×10⁻⁸ W·Ω/K²。

「ヴィーデマン・フランツの法則」は、2分野の3問の練習問題に出てきます(材料の熱的性質, 電池・エネルギー材料など)。

この用語の分野: 材料の熱的性質

法則の内容とローレンツ数

ヴィーデマンとフランツは1853年に、室温では多くの金属で熱伝導率と電気伝導率の比がほぼ同じになることを見いだし、のちにローレンツが、この比が絶対温度に比例することを示しました。比例係数 L = κ/(σT) をローレンツ数と呼びます。自由電子の量子論では L = (π²/3)(k/e)² ≈ 2.44×10⁻⁸ W·Ω/K² となり、金属の種類によらない値が得られます。電子は電荷と熱の両方を運び、どちらも同じ散乱で妨げられるので、散乱の詳しい仕組みによらずに、両者の比が一定になるのです。

成り立つ条件と外れる場合

この法則は、散乱で電子のエネルギーがほとんど変わらない場合に成り立ちます。デバイ温度より高い温度と、不純物による散乱が主になる極低温がそれにあたります。その中間の温度では、フォノンによる散乱で電子のエネルギーが少しずつ変わり、熱の流れのほうが妨げられやすいので、L は2.44×10⁻⁸ W·Ω/K² より小さくなります。また、合金や半金属のように、フォノンが運ぶ熱の割合が大きい物質では、測った κ にその分が加わるので、見かけの L は大きくなります。半導体では、キャリアの状態によって L がさらに変わります。

電気抵抗から熱伝導率を見積もる

熱伝導率は測定に手間がかかるので、金属では電気抵抗率 ρ から κ ≈ LT/ρ で見積もることがよくあります。例えば、293 K で抵抗率が約2.7×10⁻⁸ Ω·m のアルミニウムでは約265 W/(m·K) となり、実測の約237 W/(m·K) とおおむね合います。室温がアルミニウムのデバイ温度より低く、L が少し小さくなることが差の一因です。一方、抵抗率が約7.2×10⁻⁷ Ω·m のオーステナイト系ステンレス鋼では約10 W/(m·K) となり、実測の約16 W/(m·K) より小さくなります。合金ではフォノンの寄与が効きます。

熱電材料や半導体での使い方

熱電材料の性能指数を上げるには熱伝導率を下げる必要がありますが、そのうちキャリアが運ぶ分は、電気伝導率に比例して決まってしまいます。そこで、測った熱伝導率から LσT を引いて、格子の熱伝導率を分けて評価します。このとき、縮退した半導体では L は金属の値に近いものの、キャリアの濃度が低く縮退していない半導体では約1.5×10⁻⁸ W·Ω/K² まで小さくなることがあり、ゼーベック係数から L を見積もる方法も使われます。電気伝導率を上げると熱伝導率も上がってしまうことが、熱電材料の設計を難しくしている理由の一つです。

ヴィーデマン・フランツの法則の練習問題に挑戦

ヴィーデマン・フランツの法則 κ = LσT(ローレンツ数 L = 2.44×10⁻⁸ W·Ω/K²)を使い、300 Kで電気伝導率 σ = 5.9×10⁷ S/m の銅の熱伝導率を見積もるとどれに最も近いか。

  1. A約430 W/(m·K)
  2. B約39 W/(m·K)
  3. C約1.4 W/(m·K)
答えと解説を見る

正解:A. 約430 W/(m·K)

κ = 2.44×10⁻⁸×5.9×10⁷×300 ≈ 432 W/(m·K) で、約430 W/(m·K) です。実測の約400 W/(m·K) に近く、金属の熱の大部分を伝導電子が運んでいることがわかります。電子は電荷と熱の両方を運び、どちらも同じ散乱で妨げられるので、κ/σ は絶対温度に比例し、比例係数はほぼ金属によらないローレンツ数になります。約39 W/(m·K) は、絶対温度の代わりにセルシウス温度の27を使った値です。約1.4 W/(m·K) は、温度を掛け忘れた値です。合金にして電気伝導率が下がると、熱伝導率もほぼ同じ割合で下がります。

よくある質問

ローレンツ数はどの金属でも同じですか。

理論の値 2.44×10⁻⁸ W·Ω/K² は金属の種類によりませんが、実測の値は温度や純度でずれます。室温付近の純金属では多くが約2.2〜2.6×10⁻⁸ W·Ω/K² の範囲に入りますが、それより大きい金属もあり、合金ではフォノンの寄与で大きめになります。

絶縁体にもヴィーデマン・フランツの法則は使えますか。

使えません。絶縁体では熱はほとんどフォノンが運び、電気を運ぶ電子はほとんどないので、熱伝導率と電気伝導率は結びつきません。ダイヤモンドのように、電気をほとんど通さないのに、熱伝導率が金属より高い物質もあります。

比が温度に比例するのはなぜですか。

電子による熱伝導率は電子の比熱に比例し、金属の電子比熱は温度に比例するからです。電気伝導率は電子の電荷で決まり、比熱にはよりません。電子の速さや平均自由行程は両方に共通に効くので打ち消し合い、比 κ/σ は温度に比例します。

解説の中の「ヴィーデマン・フランツの法則」

「ヴィーデマン・フランツの法則」が出てくる問題(3問)

  1. ヴィーデマン・フランツの法則 κ = LσT(ローレンツ数 L = 2.44×10⁻⁸ W·Ω/K²)を使い、300 Kで電気伝導率 σ = 5.9×10⁷ S/m の銅の熱伝導率を見積もるとどれに最も近いか。
  2. 熱電材料の性能指数 ZT を大きくする方針として正しいものはどれか。
  3. 純銅(室温の熱伝導率約400 W/(m·K))に亜鉛を約30%固溶させた黄銅では、熱伝導率が約120 W/(m·K) に下がる。主な理由はどれか。

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