ウムクラップ過程とは
うむくらっぷかてい
運動量の和が逆格子ベクトルの分だけ変わるフォノンどうしの散乱。熱流を打ち消し、高温で絶縁体の熱伝導率が下がる主な原因になる。
「ウムクラップ過程」は、1分野の1問の練習問題に出てきます(材料の熱的性質など)。
この用語の分野: 材料の熱的性質
うむくらっぷかてい
運動量の和が逆格子ベクトルの分だけ変わるフォノンどうしの散乱。熱流を打ち消し、高温で絶縁体の熱伝導率が下がる主な原因になる。
「ウムクラップ過程」は、1分野の1問の練習問題に出てきます(材料の熱的性質など)。
この用語の分野: 材料の熱的性質
フォノンどうしの衝突では、2つのフォノンが1つになったり、1つが2つに分かれたりします。このときエネルギーは保存されますが、波数ベクトル(結晶運動量)の和は、逆格子ベクトル G の分だけ変わってもかまいません。和がそのまま保存される k₁ + k₂ = k₃ の衝突を正常過程(N過程)、k₁ + k₂ = k₃ + G となる衝突をウムクラップ過程(U過程)と呼びます。ウムクラップはドイツ語で「ひっくり返る」という意味で、できたフォノンの向きが元の流れと逆向きに近くなることを表しています。1929年にパイエルスが導入した考え方です。
正常過程では、フォノン全体がもつ結晶運動量の和が変わらないので、熱の流れの向きにそろったフォノンの集団は、衝突してもその流れを保ちます。そのため、正常過程だけでは熱伝導率は無限大になってしまいます。ウムクラップ過程では、和が逆格子ベクトルの分だけ変わり、流れの向きの結晶運動量が失われるので、熱の流れが妨げられます。つまり、欠陥のない絶縁体の結晶が有限の熱伝導率をもつのは、主にウムクラップ過程のためです。正常過程は、フォノンの分布を組み替えて、ウムクラップ過程や欠陥による散乱を助ける役割をもちます。
ウムクラップ過程が起こるには、衝突するフォノンが、ブリルアン帯の端に近い大きさの波数、エネルギーにしておよそ kθD/2 程度をもつ必要があります。高温ではそのようなフォノンが十分にあり、フォノンの数が温度に比例して増えるので、熱伝導率はおよそ 1/T で下がります。温度を下げると、そのようなフォノンの数はおおよそ exp(−θD/2T) の形で急に減るので、熱伝導率は急激に大きくなります。さらに低温では、フォノンの平均自由行程が試料の大きさや粒界の間隔で頭打ちになり、熱伝導率は比熱とともに下がるので、途中に極大が現れます。
ウムクラップ過程の起こりやすさは、原子間ポテンシャルの非調和性の強さと、フォノンのエネルギーの大きさで決まります。原子が軽く、結合が強く、非調和性が小さい結晶ほど室温の熱伝導率が高くなり、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素などがその例です。逆に熱電材料では、重い原子や非調和性の強い結合をもつ結晶を選んでウムクラップ過程を強め、さらにナノ構造や点欠陥でフォノンを散乱させて、格子の熱伝導率を下げます。同位体をそろえて質量の乱れを減らすと、熱伝導率がさらに上がることも知られています。
正解:B. フォノンの数が増えて、運動量が保存されないフォノンどうしの散乱(ウムクラップ過程)が増えるから
フォノンどうしの衝突のうち、運動量の和が保存される正常過程は熱の流れをほとんど妨げませんが、運動量の和が逆格子ベクトルの分だけ変わるウムクラップ過程は熱流を打ち消す向きに働き、熱抵抗の主な原因になります。高温ではフォノンの数が温度に比例して増えるので、平均自由行程はおよそ 1/T で短くなり、比熱はほぼ一定なので κ ∝ 1/T になります。デバイ温度より上では原子1 molあたりの比熱はほぼ3Rで一定で、比熱が大きく下がるのは、むしろ低温の側です。表面や粒界での散乱は温度にほとんどよらず、フォノンの平均自由行程が長くなる極低温で効く散乱で、そこでは κ は比熱と同じように温度とともに小さくなります。
どちらもフォノンどうしの衝突ですが、正常過程では波数ベクトルの和が保存され、ウムクラップ過程では和が逆格子ベクトルの分だけ変わります。熱の流れを直接妨げて熱抵抗の原因になるのは、ウムクラップ過程のほうです。
温度が下がると、ウムクラップ過程を起こせるエネルギーの大きいフォノンが急に減り、フォノンの平均自由行程が長くなるからです。ただし、さらに冷やすと平均自由行程は試料の大きさで頭打ちになり、比熱が小さくなる効果が勝って、熱伝導率は下がります。
関係します。電子がフォノンに散乱されるときにも、波数の和が逆格子ベクトルの分だけ変わる過程があり、電子の運動量を大きく変えられるので、金属の電気抵抗、特に低温での電気抵抗の温度変化に影響します。
フォノンどうしの衝突のうち、運動量の和が保存される正常過程は熱の流れをほとんど妨げませんが、運動量の和が逆格子ベクトルの分だけ変わるウムクラップ過程は熱流を打ち消す向きに働き、熱抵抗の主な原因になります。
絶縁体の単結晶の格子熱伝導率は、デバイ温度と同程度以上の温度では、温度を上げるとおよそ 1/T に比例して下がる。主な…