デュロン・プティの法則とは

でゅろんぷてぃのほうそく

室温付近の多くの固体元素のモル比熱が約3R(約25 J/(mol·K))になるという法則。高温での格子振動の古典的な極限にあたる。

「デュロン・プティの法則」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(材料の熱的性質など)。

この用語の分野: 材料の熱的性質

法則の内容と歴史

デュロン・プティの法則は、1819年にデュロンとプティが、多くの固体元素で比熱と原子量の積がほぼ一定になることから示した経験則です。今の言い方では、固体元素のモル比熱が約3R、つまり約25 J/(mol·K) になるということです。当時は原子量が正確に決まっていなかったので、比熱を測って原子量を推定したり、誤った値を正したりするのにも使われました。例えば銅では、3R をモル質量63.55 g/mol で割ると約0.39 J/(g·K) となり、実測の約0.385 J/(g·K) とよく合います。

古典論での説明と量子論での位置づけ

古典統計力学のエネルギー等分配の法則では、固体の原子1個は3方向の調和振動子とみなせ、運動エネルギーと位置エネルギーを合わせて 3kT のエネルギーをもちます。これを温度で微分すると、1 mol あたり 3N_A k = 3R の比熱になります。しかし、この説明では比熱は温度によらないはずで、低温で比熱が小さくなることは説明できません。アインシュタインとデバイは振動のエネルギーが量子化されていることから低温の振る舞いを説明し、デュロン・プティの法則は、すべての振動が十分に励起される高温での極限として位置づけられました。

法則から外れる元素

室温での値が3Rから大きく外れるのは、軽い原子が強く結合していて、デバイ温度が室温よりはるかに高い元素です。ダイヤモンドのモル比熱は室温で約6.1 J/(mol·K) と3Rの4分の1ほどしかなく、ベリリウム(約16 J/(mol·K))やケイ素(約20 J/(mol·K))も3Rより小さくなります。これらでは、室温でもエネルギーの大きい振動が十分に励起されていないためです。一方、室温より十分高い温度では、多くの元素の定圧比熱が3Rを少し上回ります。熱膨張の効果、振動の非調和性、金属では伝導電子の寄与などが加わるためです。

化合物への拡張と実用での使い方

化合物のモル比熱は、構成する元素のモル比熱の和にほぼ等しいというノイマン・コップの法則があり、デュロン・プティの法則と組み合わせると、組成式の原子1個あたり約3Rになります。例えば NaCl は原子2個分なので約6R ≈ 50 J/(mol·K) と見積もられ、室温の実測の約50.5 J/(mol·K) に近い値です。比熱のデータがない材料でも、デバイ温度が室温よりあまり高くなければ、この方法でおおよその値を見積もれます。質量あたりに直すと、原子量の小さい元素からなる材料ほど比熱が大きくなります。

デュロン・プティの法則の練習問題に挑戦

デュロン・プティの法則では、室温付近の多くの固体元素のモル比熱が約3R(R は気体定数8.31 J/(mol·K))になる。アルミニウム(モル質量26.98 g/mol)の質量あたりの比熱を、この法則で見積もるとどれに最も近いか。

  1. A約0.31 J/(g·K)
  2. B約0.46 J/(g·K)
  3. C約0.92 J/(g·K)
答えと解説を見る

正解:C. 約0.92 J/(g·K)

固体の原子は3方向に振動し、各方向の振動が運動エネルギーと位置エネルギーで kT/2 ずつ、1原子あたり合わせて 3kT のエネルギーをもつので、モル比熱は 3R ≈ 24.9 J/(mol·K) になります。これをモル質量で割ると 24.9/26.98 ≈ 0.92 J/(g·K) で、アルミニウムの実測値の約0.90 J/(g·K) に近い値です。約0.31 J/(g·K) は係数3を落として R だけを割った値、約0.46 J/(g·K) は単原子の気体の定積モル比熱 (3/2)R を使った値で、振動の位置エネルギーの分を数えていません。モル比熱がほぼ同じなので、軽い元素ほど質量あたりの比熱は大きくなります。

よくある質問

デュロン・プティの法則は、定圧比熱と定積比熱のどちらについての法則ですか。

理論で導かれる3Rは定積比熱の値です。固体では定圧比熱と定積比熱の差が室温で数%程度と小さいので、測りやすい定圧比熱と比べることが多くあります。高温では差が大きくなり、定圧比熱は3Rを上回ります。

ダイヤモンドの比熱が小さいのはなぜですか。

炭素原子が軽く結合が非常に強いので、格子振動の振動数が高く、デバイ温度が約1900〜2200 K と室温よりはるかに高いからです。室温では多くの振動が励起されず、エネルギーを受け取れる振動が少ないため、モル比熱は約6.1 J/(mol·K) にとどまります。

質量あたりの比熱を見積もるにはどうしますか。

3R ≈ 24.9 J/(mol·K) をモル質量で割ります。例えば鉄(55.85 g/mol)では約0.45 J/(g·K) となり、実測の約0.45 J/(g·K) とよく合います。原子量の大きい元素ほど、質量あたりの比熱は小さくなります。

解説の中の「デュロン・プティの法則」

「デュロン・プティの法則」が出てくる問題(2問)

  1. デュロン・プティの法則では、室温付近の多くの固体元素のモル比熱が約3R(R は気体定数8.31 J/(mol·K))になる。アルミニウム(モル質量26.98 g/mol)の質量あたりの比熱を、この法則で見積もるとどれに最も近いか。
  2. デバイ温度より十分低い温度で、絶縁体の結晶の比熱(格子比熱)は温度とともにどう変わるか。

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