デバイ温度とは

でばいおんど

格子振動の最高の振動数をエネルギーで温度に換算した値。これより十分低い温度では格子比熱が T³ に比例し、高温では約3Rに近づく。

「デバイ温度」は、1分野の4問の練習問題に出てきます(材料の熱的性質など)。

この用語の分野: 材料の熱的性質

デバイ模型の考え方

デバイは、結晶の格子振動を、弾性体の中を音速で伝わる波の集まりとみなし、振動数の低い波から順に、原子の数の3倍の数だけ振動のモードがあるとしました。そのうち最も高い振動数を ωD とすると、デバイ温度は θD = ħωD/k で定義されます。温度が θD より十分高ければ、すべてのモードが励起されて比熱は3Rに近づき、θD より十分低ければ、励起されるのは振動数の低いモードだけになります。θD は、その物質の格子振動が古典的に振る舞うか、量子的に振る舞うかの境目を表す目安の温度です。

代表的な値と決まり方

デバイ温度は、原子間の結合が強く、原子が軽いほど高くなります。代表的な値は、鉛で約105 K、金で約165 K、銅で約343 K、アルミニウムで約428 K、鉄で約470 K、ケイ素で約645 K、ダイヤモンドで約1900〜2200 K です。鉛のように θD の低い物質では室温でも比熱はほぼ3Rですが、ダイヤモンドでは室温でも3Rよりずっと小さくなります。θD は弾性定数と密度から求めた音速からも計算でき、比熱から求めた値とおおよそ一致します。ただし、どの温度の比熱に合わせたかで、値が少し変わります。

低温のT³則と数値の例

θD より十分低い温度では、格子比熱は C ≈ (12π⁴/5)R(T/θD)³、つまり約1944(T/θD)³ J/(mol·K) で表されます。例えば銅の10 K では約0.048 J/(mol·K) で、室温の値の約500分の1です。この T³ 則が精度よく成り立つのは、おおむね θD/50 より低い温度です。一方、T = θD でも比熱は3Rの約95%に達していて、θD を超えればほぼ3Rとみなせます。極低温では比熱が非常に小さくなり、わずかな熱で温度が大きく変わるので、この性質は極低温で働く放射線や光の検出器に利用されています。

金属の比熱の測定と解析

金属では、低温の比熱に伝導電子の寄与 γT が加わり、比熱は C = γT + βT³ と書けます。そこで、測った比熱を C/T にして T² に対して描くと直線になり、切片から電子比熱係数 γ が、傾きから β が求まり、β から θD が得られます。数K以下では、電子の寄与のほうが大きくなります。デバイ温度は、比熱のほかにも、熱伝導率や電気抵抗の温度変化、X線回折の強度の温度変化(デバイ・ワラー因子)の解析に現れ、融点とも相関があります。格子振動の硬さを1つの温度で表す、便利な指標として使われています。

デバイ温度の練習問題に挑戦

デバイ温度より十分低い温度で、絶縁体の結晶の比熱(格子比熱)は温度とともにどう変わるか。

  1. A温度によらず、ほぼ3Rで一定である
  2. B温度の3乗に比例して小さくなる
  3. C温度に比例して直線的に小さくなる
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正解:B. 温度の3乗に比例して小さくなる

格子振動のエネルギーは量子化されていて、kT が振動のエネルギーの単位 ħω より小さい振動はほとんど励起されません。デバイ温度より十分低い温度で励起されるのは、エネルギーの低い長波長の音響フォノンだけで、その数が温度とともに増えるので、格子比熱は T³ に比例します(デバイのT³則)。ほぼ3Rで一定になるのは、デバイ温度と同程度以上の高温での古典的な極限で、デュロン・プティの法則にあたります。温度に比例する比熱は、金属の伝導電子による電子比熱の特徴で、フェルミ準位の近くの電子だけが熱で励起されることによります。

絶縁体の単結晶の格子熱伝導率は、デバイ温度と同程度以上の温度では、温度を上げるとおよそ 1/T に比例して下がる。主な理由はどれか。

  1. Aデバイ温度を超えると比熱が温度に反比例して下がり、フォノンが運ぶ熱が減るから
  2. Bフォノンの数が増えて、運動量が保存されないフォノンどうしの散乱(ウムクラップ過程)が増えるから
  3. C温度が上がると格子が膨張して、結晶の表面や粒界でのフォノンの散乱が増え、平均自由行程が短くなるから
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正解:B. フォノンの数が増えて、運動量が保存されないフォノンどうしの散乱(ウムクラップ過程)が増えるから

フォノンどうしの衝突のうち、運動量の和が保存される正常過程は熱の流れをほとんど妨げませんが、運動量の和が逆格子ベクトルの分だけ変わるウムクラップ過程は熱流を打ち消す向きに働き、熱抵抗の主な原因になります。高温ではフォノンの数が温度に比例して増えるので、平均自由行程はおよそ 1/T で短くなり、比熱はほぼ一定なので κ ∝ 1/T になります。デバイ温度より上では原子1 molあたりの比熱はほぼ3Rで一定で、比熱が大きく下がるのは、むしろ低温の側です。表面や粒界での散乱は温度にほとんどよらず、フォノンの平均自由行程が長くなる極低温で効く散乱で、そこでは κ は比熱と同じように温度とともに小さくなります。

よくある質問

デバイ温度で何かの変化が起こるのですか。

いいえ。デバイ温度は相転移の温度ではなく、格子振動の最も高いエネルギーを温度に直した目安です。比熱はデバイ温度の前後でなめらかに変わり、その付近から3Rに近づいていきます。

デバイ温度が高い材料には、どんな特徴がありますか。

原子が軽く結合が強いので、弾性率や硬さが大きく、音速が速い傾向があります。絶縁体ではフォノンの散乱が起こりにくく、熱伝導率が高くなりやすいです。ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素などがその例です。

アインシュタイン模型とデバイ模型の違いは何ですか。

アインシュタイン模型は、すべての原子が同じ1つの振動数で振動するとし、低温で比熱が指数関数的に小さくなると予想します。デバイ模型は振動数に幅のある音波の集まりとして扱うので、低温で比熱が T³ に比例するという実験の結果を正しく表せます。

解説の中の「デバイ温度」

「デバイ温度」が出てくる問題(4問)

  1. デバイ温度より十分低い温度で、絶縁体の結晶の比熱(格子比熱)は温度とともにどう変わるか。
  2. 絶縁体の単結晶の格子熱伝導率は、デバイ温度と同程度以上の温度では、温度を上げるとおよそ 1/T に比例して下がる。主な理由はどれか。
  3. ダイヤモンドは電気の絶縁体なのに、室温の熱伝導率が約2000 W/(m·K) と、銅(約400 W/(m·K))より大きい。主な理由はどれか。
  4. グリュナイゼンの関係によれば、固体の体膨張係数はおよそ定積比熱に比例する。絶対零度に近い低温での絶縁体の線膨張係数についての説明として正しいものはどれか。

関連する用語

フォノン デュロン・プティの法則 ウムクラップ過程 線膨張係数 インバー ヴィーデマン・フランツの法則 熱拡散率

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