熱拡散率とは

ねつかくさんりつ

熱伝導率を体積あたりの比熱で割った量 α = κ/(ρc)。温度の変化が材料の中を伝わる速さを表し、単位は m²/s。

「熱拡散率」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(材料の熱的性質など)。

この用語の分野: 材料の熱的性質

熱伝導率との違い

熱伝導率 κ は、温度勾配があるときにどれだけの熱が流れるかという、定常の熱の流れやすさを表します。これに対して熱拡散率 α = κ/(ρc) は、熱を流しやすいことと、温まりにくいこと(体積あたりの比熱 ρc)の比で、温度の変化がどれだけ速く広がるかを表します。非定常の熱伝導の式は ∂T/∂t = α∇²T となり、温度の時間変化は κ だけでなく α で決まります。厚さLの板の内部まで温度が変わる時間の目安は L²/α で、加熱や冷却にかかる時間の見積もりに使えます。

代表的な値

室温付近の熱拡散率は、銅で約1.1×10⁻⁴ m²/s、アルミニウムで約1×10⁻⁴ m²/s、炭素鋼で約1×10⁻⁵ m²/s、ステンレス鋼で約4×10⁻⁶ m²/s、ガラスで約5×10⁻⁷ m²/s、木材や高分子で約1×10⁻⁷ m²/s 程度です。ダイヤモンドは 10⁻³ m²/s を超えます。体積あたりの比熱は固体どうしでは数倍しか違わないので、熱拡散率の大小は、おおむね熱伝導率の大小と同じ順になります。気体は熱伝導率が小さくても密度が小さいので、熱拡散率は固体の高分子より大きくなります。

測定と使い方

熱拡散率は、レーザーフラッシュ法で測るのが一般的です。円板の試料の表面にパルス光を当て、裏面の温度上昇が最大値の半分に達する時間 t½ から α = 0.1388L²/t½ で求めます。試料が小さくてよく、高温まで測れるので、熱伝導率は測った α に密度と比熱を掛けて κ = αρc として求めることが多いです。熱拡散率は、溶接や熱処理での温度の広がり、急冷時の表面と内部の温度差、半導体素子の過渡的な発熱の見積もりなど、時間を含む熱の問題で重要になります。

熱拡散率の練習問題に挑戦

アルミニウム(熱伝導率237 W/(m·K)、密度2700 kg/m³、比熱900 J/(kg·K))の熱拡散率 α = κ/(ρc) はどれに最も近いか。

  1. A約9.8×10⁻⁵ m²/s
  2. B約9.8×10⁻² m²/s
  3. C約0.26 m²/s
答えと解説を見る

正解:A. 約9.8×10⁻⁵ m²/s

α = 237/(2700×900) = 237/(2.43×10⁶) ≈ 9.75×10⁻⁵ m²/s で、約9.8×10⁻⁵ m²/s です。熱拡散率は、温度の変化が材料の中をどれだけ速く伝わるかを表す量で、非定常の熱伝導の式 ∂T/∂t = α∇²T に現れます。厚さ L の材料の内部まで温度が変わる時間の目安は L²/α で、厚さ10 mmのアルミニウムでは約1 sです。約9.8×10⁻² m²/s は、比熱を J/(g·K) の0.9のまま使って1000倍にずれた値です。約0.26 m²/s は密度を掛け忘れて κ/c とした値で、単位も m²/s になりません。

レーザーフラッシュ法で、厚さ L = 2.0 mm の円板の表面にパルス光を当てたところ、裏面の温度上昇が最大値の半分に達するまでの時間が t½ = 0.050 s だった。熱の損失を無視したパーカーの式 α = 0.1388L²/t½ で求めた熱拡散率はどれに最も近いか。

  1. A約8.0×10⁻⁵ m²/s
  2. B約1.1×10⁻⁵ m²/s
  3. C約5.6×10⁻³ m²/s
答えと解説を見る

正解:B. 約1.1×10⁻⁵ m²/s

L = 2.0×10⁻³ m なので L² = 4.0×10⁻⁶ m² で、α = 0.1388×4.0×10⁻⁶/0.050 ≈ 1.1×10⁻⁵ m²/s です。表面で吸収された熱が厚さ方向に拡散して裏面に届くまでの時間は L²/α に比例するので、温度上昇が半分になる時間から熱拡散率が求まります。約8.0×10⁻⁵ m²/s は係数0.1388を掛け忘れた値、約5.6×10⁻³ m²/s は厚さを2乗し忘れた値で、単位も m²/s になりません。熱伝導率は、別に測った密度と比熱を使って κ = αρc で求めます。時間は厚さの2乗で変わるので、熱拡散率の大きい材料ほど厚い試料を使って、測りやすい時間にします。

よくある質問

熱伝導率が大きい材料は、必ず熱拡散率も大きいですか。

固体どうしでは多くの場合そうですが、体積あたりの比熱 ρc が大きい材料では、熱伝導率のわりに熱拡散率が小さくなります。比べる目的が定常の熱の流れか、温度の変化の速さかで、使う量を選びます。

熱拡散率と熱浸透率は何が違いますか。

熱拡散率 κ/(ρc) は温度の変化が材料の中を伝わる速さ、熱浸透率 √(κρc) は表面に熱を加えたときにどれだけ熱を吸い込むかを表します。触ったときの冷たさや、表面の瞬間的な温度上昇には熱浸透率が効きます。

熱拡散率の単位が拡散係数と同じ m²/s なのはなぜですか。

非定常の熱伝導の式 ∂T/∂t = α∇²T が、物質の拡散のフィックの第2法則 ∂C/∂t = D∇²C と同じ形だからです。温度の広がりは原子の拡散と同じように扱え、距離の目安が √(αt) で表されます。

解説の中の「熱拡散率」

「熱拡散率」が出てくる問題(2問)

  1. アルミニウム(熱伝導率237 W/(m·K)、密度2700 kg/m³、比熱900 J/(kg·K))の熱拡散率 α = κ/(ρc) はどれに最も近いか。
  2. レーザーフラッシュ法で、厚さ L = 2.0 mm の円板の表面にパルス光を当てたところ、裏面の温度上昇が最大値の半分に達するまでの時間が t½ = 0.050 s だった。熱の損失を無視したパーカーの式 α = 0.1388L²/t½ で求めた熱拡散率はどれに最も近いか。

関連する用語

インバー ヴィーデマン・フランツの法則 ウムクラップ過程 線膨張係数 デバイ温度 デュロン・プティの法則 フォノン

用語集の一覧へ