臨界核半径とは

りんかいかくはんけい

核生成で、これを超えると成長するほうが安定になる核の半径。球の核では r* = −2γ/ΔGv で、過冷却が大きいほど小さくなる。

「臨界核半径」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(薄膜・表面・ナノ材料など)。

この用語の分野: 薄膜・表面・ナノ材料

核が生き残るかどうかの分かれ目

液体や過飽和の母相の中に生まれた原子の小さな集まり(胚)は、体積に比例してエネルギーを下げる一方、表面積に比例して界面エネルギーの分だけエネルギーを上げます。球の自由エネルギー変化 ΔG = (4/3)πr³ΔGv + 4πr²γ は、小さな r では表面の項が勝って増え、ある半径で最大になってから減ります。この最大の位置が臨界核半径 r* です。r* より小さい胚は縮むほうが、大きい核は育つほうがエネルギーが下がるので、r* は核が生き残るかどうかの境目になります。

過冷却との関係と大きさの目安

凝固では、単位体積あたりの自由エネルギー変化を ΔGv ≈ −ΔHf ΔT/Tm(ΔHf は単位体積あたりの融解熱、ΔT は過冷却度)と近似できるので、r* = 2γTm/(ΔHf ΔT) となり、過冷却度に反比例します。金を例に、γ = 0.132 J/m²、ΔHf = 1.16×10⁹ J/m³、Tm = 1337 K とすると、ΔT = 100 K で r* は約3.0 nm、200 K で約1.5 nm です。核生成の障壁 ΔG* は ΔT² に反比例するので、過冷却が少し増えるだけで核生成の頻度は桁違いに上がります。

不均一核生成と、粒の大きさとの区別

容器の壁や不純物の粒子の上でできる不均一核生成では、核は接触角θの球冠になります。このとき臨界状態の曲率半径は均一核生成と同じ r* で、小さくなるのは核の体積と障壁です。障壁は f(θ) = (2 + cosθ)(1 − cosθ)²/4 倍になり、θ = 60° で約0.16倍、30° で約0.013倍です。また、r* は核が安定になる最小の大きさで、凝固後の結晶粒や析出物の大きさとは別物です。最終的な粒の大きさは、できた核の数と、その後の成長の速さで決まります。

組織の制御や成膜での使われ方

鋳造で接種剤を加えて結晶粒を細かくするのは、接触角の小さい基板を増やして不均一核生成の障壁を下げ、小さな過冷却でも多くの核をつくるためです。析出の熱処理では、時効の温度を下げて過飽和度(駆動力)を大きくすると r* が小さくなり、微細な析出物が高い密度でできます。薄膜の成長でも同じ考え方が使われ、基板温度を下げたり堆積速度を上げたりすると過飽和度が増して臨界核が小さくなり、島の密度が高い、細かい組織の膜になりやすくなります。

臨界核半径の練習問題に挑戦

均一核生成で、半径rの球状の核ができるときの自由エネルギー変化を ΔG = (4/3)πr³ΔGv + 4πr²γ とする。界面エネルギー γ = 0.10 J/m²、単位体積あたりの自由エネルギー変化 ΔGv = −2.0×10⁸ J/m³ のとき、臨界核半径 r* はどれに最も近いか。

  1. A約0.5 nm
  2. B約2.0 nm
  3. C約1.0 nm
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正解:C. 約1.0 nm

ΔGをrで微分して0とおくと r* = −2γ/ΔGv が得られ、r* = 2 × 0.10/(2.0×10⁸) = 1.0×10⁻⁹ m = 1.0 nm です。約0.5 nm は係数の2を落とした −γ/ΔGv の値、約2.0 nm は臨界核の直径(2r*)を半径と取り違えた値です。r* より小さい胚は縮むほうがエネルギーが下がるので消えやすく、r* を超えた核だけが成長を続けます。過冷却が大きいほど |ΔGv| が大きくなるので r* は小さくなり、核生成の障壁 ΔG* = 16πγ³/(3ΔGv²) も急に下がって、核生成が起こりやすくなります。

同じ過冷却度で比べたとき、不均一核生成の臨界核の曲率半径は、均一核生成の臨界核半径と比べてどうなるか。

  1. A小さくなる
  2. B大きくなる
  3. C変わらない
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正解:C. 変わらない

不均一核生成の核は、基板の上に接触角θでのった球冠(球の一部)の形をしています。臨界状態での曲率半径は、界面エネルギーと単位体積あたりの自由エネルギー変化だけで決まり、r* = −2γ/ΔGv で均一核生成と同じです。違うのは、同じ曲率半径でも球冠の体積が球より小さいので、核に必要な原子の数とエネルギーの障壁が f(θ) 倍に小さくなる点です。障壁が下がることを、半径が小さくなることと混同しやすいので注意しましょう。基板があるからといって臨界半径が大きくなるわけでもありません。

よくある質問

臨界核半径の式はどう導きますか?

球の核の自由エネルギー変化 ΔG = (4/3)πr³ΔGv + 4πr²γ が最大になる半径を求めます。dΔG/dr = 0 から r* = −2γ/ΔGv が得られ、これを ΔG に戻すと障壁の高さ ΔG* = 16πγ³/(3ΔGv²) になります。

臨界核にはおよそ何個の原子が含まれますか?

材料と過冷却によります。金で ΔT = 100 K のとき r* は約3 nmで、その球には約7000個の原子が入ります。ΔT = 200 K なら半径が半分になり、原子の数は約8分の1の千個弱になります。

過冷却度が0のとき臨界核半径はどうなりますか?

ΔT が0に近づくと ΔGv も0に近づくので、r* は無限に大きくなり、核はできません。融点ちょうどでは凝固が始まらず、ある程度の過冷却が必要なのはこのためです。

「臨界核半径」が出てくる問題(2問)

  1. 均一核生成で、半径rの球状の核ができるときの自由エネルギー変化を ΔG = (4/3)πr³ΔGv + 4πr²γ とする。界面エネルギー γ = 0.10 J/m²、単位体積あたりの自由エネルギー変化 ΔGv = −2.0×10⁸ J/m³ のとき、臨界核半径 r* はどれに最も近いか。
  2. 同じ過冷却度で比べたとき、不均一核生成の臨界核の曲率半径は、均一核生成の臨界核半径と比べてどうなるか。

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