マテリアルズ・インフォマティクスとは

まてりあるずいんふぉまてぃくす

材料のデータを機械学習などで解析し、性質の予測や次に試す材料の選択に役立てる方法。計算や実験と組み合わせて材料開発を速める。

「マテリアルズ・インフォマティクス」は、1分野の1問の練習問題に出てきます(計算材料科学など)。

この用語の分野: 計算材料科学

何をめざす分野か

マテリアルズ・インフォマティクス(MI)は、データ科学の手法で材料の研究開発を速める分野です。材料の候補は、元素の組み合わせ、組成、構造、製造の条件まで考えると膨大で、すべてを試すことはできません。そこで、これまでの実験や計算のデータから、組成や構造と性質の関係を学び、有望な候補を絞り込みます。2011年にアメリカで始まったマテリアルズ・ゲノム・イニシアチブをきっかけに世界に広がり、日本でも大学や企業で研究が進んでいます。多数の物質の第一原理計算を自動で行って集めたデータベースの整備も、この流れを支えています。

データから予測までの流れ

典型的な流れは、データを集め、記述子をつくり、モデルを学習して評価し、予測から次の実験や計算を選ぶ、という順です。記述子には、構成元素の電気陰性度や原子半径の平均と差、価電子の数、結晶構造の特徴などを使い、物理的な意味のある記述子を選ぶと、少ないデータでもよいモデルになりやすくなります。モデルには、線形回帰、ランダムフォレスト、ガウス過程回帰、ニューラルネットワークなどがあり、結晶構造をグラフとして直接扱うグラフニューラルネットワークも使われます。どの記述子が効いているかを調べると、性質を支配する要因の手がかりにもなります。

データの偏りと評価の落とし穴

材料のデータには、うまくいった結果ばかりが論文に載り、失敗の結果が残りにくいという偏りがあります。測定の条件や試料のつくり方が文献ごとに違い、同じ物質でも値がばらつくことも多いです。また、よく似た組成の物質が学習用と検証用の両方に入っていると、検証の誤差が小さく出て、新しい系統の材料での実力を過大に見積もってしまいます(データの漏れ)。これを避けるには、組成の系統や化合物の種類ごとにまとめてデータを分けて検証します。予測が当たらないときは、モデルよりデータの質を疑うことも大切です。

逆設計と自律的な実験

性質から材料を探す逆設計では、望む性質をもつ組成や構造を、生成モデルや最適化の手法で提案させます。予測と実験を交互にくり返す能動学習を、ロボットによる合成と測定と組み合わせ、人の手をほとんど介さずに回す自律実験の研究も進んでいます。また、温度や時間などの製造の条件と組織、性質の関係を学ぶプロセス・インフォマティクスや、時間のかかるシミュレーションを機械学習のモデルで置き換えて速くするサロゲートモデルも使われています。計算、実験、データを組み合わせることが、この分野の特徴です。

マテリアルズ・インフォマティクスの練習問題に挑戦

マテリアルズ・インフォマティクスで、既存の材料のデータから機械学習のモデルをつくり、新しい材料の性質を予測するときの注意として正しいものはどれか。

  1. A学習に使ったデータでの予測の誤差が小さいほど、新しい材料での予測も必ず正確になるので、学習データでの誤差を最小にすることだけを目標にする
  2. B学習に使わなかったデータでの誤差(交差検証など)で性能を評価し、学習データの範囲を大きく外れた予測は信頼性が低いことに注意する
  3. Cデータの数が少なくても、記述子(特徴量)の数を増やせば増やすほど情報が増えるので、新しい材料での予測は必ず正確になる
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正解:B. 学習に使わなかったデータでの誤差(交差検証など)で性能を評価し、学習データの範囲を大きく外れた予測は信頼性が低いことに注意する

機械学習のモデルは、組成や結晶構造などを数値にした記述子(特徴量)から、目的の性質を予測する関数を学習します。学習に使ったデータに合わせ込みすぎると(過学習)、そのデータでの誤差は小さくても、新しいデータでの予測は悪くなります。そこで、データを学習用と検証用に分けたり交差検証を行ったりして、学習に使わなかったデータでの誤差で性能を評価します。データが少ないのに記述子を増やしすぎると、過学習が起こりやすくなります。また、モデルは学習したデータの範囲の内挿は得意でも、大きく外れた外挿は苦手です。そのため、予測値とその不確かさの両方を使って次に試す候補を選ぶベイズ最適化などで、データを効率よく増やします。

よくある質問

マテリアルズ・インフォマティクスと計算材料科学の違いは何ですか。

計算材料科学は、物理の法則にもとづく方程式を解いて性質を求めます。マテリアルズ・インフォマティクスは、計算や実験で得たデータから統計的に関係を学びます。対立するものではなく、第一原理計算でデータをつくり、機械学習で広い範囲を探すというように組み合わせて使います。

データが少ないときはどうすればよいですか。

物理的な意味のある少数の記述子を使う、似た性質の大きなデータで学習したモデルを転用する転移学習を使う、計算で求めた値を補助のデータとして加える、などの方法があります。少ないデータでは、予測の不確かさも示せるガウス過程回帰がよく使われます。

記述子とは何ですか。

材料を機械学習のモデルに入力するために、組成や構造の特徴を数値の並びで表したもので、特徴量とも呼ばれます。元素の性質の平均や結晶の対称性などを使い、予測したい性質と物理的に関係のある記述子を選ぶと、モデルの精度と解釈のしやすさが上がります。

「マテリアルズ・インフォマティクス」が出てくる問題(1問)

  1. マテリアルズ・インフォマティクスで、既存の材料のデータから機械学習のモデルをつくり、新しい材料の性質を予測するときの注意として正しいものはどれか。

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