てこの規則 計算ツール
状態図の二相領域にある合金について、全体の組成C0と、その温度でのタイラインの両端の組成(相αと相β)から、それぞれの相が何%ずつあるかを求めます。既定値は、共晶温度のすぐ上にあるPb–40 wt% Sn合金(α相 18.3 wt% Sn、液相 61.9 wt% Sn)です。
結果
- 相αの質量分率 Wα
- –
- 相βの質量分率 Wβ
- –
- 判定
- –
各相の質量
- 相αの質量
- –
- 相βの質量
- –
wt%で入れると質量分率、at%で入れると原子の数の割合(モル分率)が出ます。組成がどちらの単位かをそろえてください。
グラフで見る
ほかの入力は今の値のまま、選んだ入力だけを今の値の1/4〜4倍の範囲で変えたときの結果です。赤い点が今の値です。
てこの規則とは
二元系状態図の二相領域では、ある温度で水平線(タイライン)を引くと、その両端が共存する2相の組成を表します。全体の組成がC0の合金では、物質収支 C0 = Wα·Cα + Wβ·Cβ と Wα + Wβ = 1 から、Wα = (Cβ − C0)/(Cβ − Cα)、Wβ = (C0 − Cα)/(Cβ − Cα) が得られます。支点をC0に置いた天びん(てこ)で、反対側の腕の長さが自分の量になる形なので、てこの規則と呼ばれます。既定値のPb–40 wt% Sn合金では、Wα = (61.9 − 40)/(61.9 − 18.3) ≈ 50.2 %、液相は約49.8 %です。
初晶と共晶組織の分率
亜共晶合金を共晶温度のすぐ下まで冷やすと、共晶温度の直上にあった液相はすべて共晶組織(αとβの層状組織)になります。そのため、初晶αと共晶組織の分率は、共晶温度の直上でのα相と液相の分率に等しく、Cβに共晶組成Ceを入れて計算できます。一方、共晶温度の直下で「α相全体」と「β相全体」の分率を知りたいときは、両端にα相とβ相の組成(Pb–Sn系なら約18.3 wt%と約97.8 wt% Sn)を入れます。どちらの分率を求めているのかを区別するのが、この計算でいちばん間違えやすい点です。
質量分率と体積分率
てこの規則で求まるのは、組成をwt%で入れたときは質量分率です。顕微鏡写真で見える面積の割合は体積分率に近く、2相の密度が違うと質量分率とは一致しません。体積分率は Vα = (Wα/ρα)/(Wα/ρα + Wβ/ρβ) で換算します。組成をat%で入れると、得られるのは原子の数の割合(モル分率)です。入力する3つの組成の単位は必ずそろえてください。
Fe–C系での使い方
鋼の組織計算でもてこの規則はよく使われます。共析温度(727 ℃)の直下で、0.40 wt% Cの亜共析鋼のフェライトとパーライトの分率は、フェライト側に0.022 wt% C、もう一端に共析組成0.76 wt% Cを入れて、初析フェライト約48.8 %、パーライト約51.2 %と求まります。フェライト相全体とセメンタイト相全体の分率なら、両端を0.022 wt%と6.70 wt% Cにします。
状態図の問題を解く
- A約0.32
- B約0.68
- C約0.82
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正解:B. 約0.68
てこの規則では、ある相の分率を、合金の組成から反対側の相の組成までの距離をタイライン全体の長さで割って求めます。液相の分率は W_L = (Cα − C₀)/(Cα − C_L) = (42.5 − 35)/(42.5 − 31.5) = 7.5/11.0 ≈ 0.68 です。約0.32は同じ側の距離 (35 − 31.5)/11.0 をとった誤りで、これはαの分率にあたります。約0.82は合金の組成と固相の組成の比 35/42.5 をとった誤りで、てこの規則ではありません。2相の分率の和は必ず1になるので、片方を求めたら確かめに使えます。
- A約0.27
- B約0.73
- C約0.15
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正解:A. 約0.27
共晶組織は、共晶温度のすぐ上で残っていた液相(61.9 wt%Sn)がそのまま共晶反応で変化したものです。そこで共晶温度のすぐ上の α + L 領域でてこの規則を使い、W_共晶 = W_L = (30 − 18.3)/(61.9 − 18.3) = 11.7/43.6 ≈ 0.27 となります。約0.73は残りの初晶αの分率で、反対側の距離をとった誤りです。約0.15は共晶温度のすぐ下でのβ相全体の分率 (30 − 18.3)/(97.8 − 18.3) です。β相はすべて共晶組織の中にありますが、共晶組織にはαも含まれるので一致しません。組織(初晶・共晶)と相(α・β)を区別することがこの種の問題の要点です。
- A約0.51
- B約0.94
- C約0.49
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正解:C. 約0.49
初析フェライトは、727℃のすぐ上の α + γ 領域ですでにできているフェライトで、残りのγがすべてパーライトになります。てこの規則より W_初析α = (0.76 − 0.40)/(0.76 − 0.022) = 0.36/0.738 ≈ 0.49 です。約0.51は残りのパーライトの分率で、反対側の距離をとった誤りです。約0.94は α + Fe₃C の2相としてのフェライト全体の分率 (6.70 − 0.40)/(6.70 − 0.022) で、パーライトの中のフェライトまで含んでいます。初析フェライトとパーライトの面積の比は、顕微鏡組織から亜共析鋼の炭素量を見積もる手がかりになります。
よくある質問
てこの規則はどんなときに使えますか?
状態図の二相領域の中にある合金が、平衡状態にあるときに使えます。単相領域では相は1つなので分率は100 %、3相が共存する共晶温度ちょうどの水平線上では、2相のてこの規則だけでは分率が決まりません。
なぜ反対側の長さを使うのですか?
C0がCαに近いほどα相が多くなるはずなので、α相の分率はC0からCβまでの距離(反対側の腕)に比例します。物質収支の式を解くと、この形が自然に出てきます。
冷却が速いときにも当てはまりますか?
当てはまりません。てこの規則は平衡状態を前提にしています。実際の鋳造のように速く冷えると、固相内の拡散が追いつかずに偏析(コアリング)が起こり、平衡とは違う組成や分率になります。