ワイブル係数とは

わいぶるけいすう

ワイブル分布で強度のばらつきの小ささを表す係数m。大きいほどばらつきが小さく、セラミックスでは5〜20程度、金属では数十以上。

「ワイブル係数」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(セラミックス・ガラスなど)。

この用語の分野: セラミックス・ガラス

ワイブル分布とmの意味

脆い材料の強度は、最も大きな欠陥で決まる最弱リンクの考え方から、破壊確率 Pf = 1 − exp[−(σ/σ₀)^m] のワイブル分布でよく表されます。σ₀は破壊確率が約63.2%になる尺度の強度、mがばらつきの小ささを表すワイブル係数です。強度の変動係数(標準偏差/平均)はおよそ 1.2/m で、m = 10 なら約12%、m = 20 なら約6%になります。mは欠陥の大きさのそろい方を表し、材料の製造品質の指標としても使われます。

データからの求め方

n本の試験片の強度を小さい順に並べ、i番目の破壊確率を (i − 0.5)/n や (i − 0.3)/(n + 0.4) などで推定します。ln ln[1/(1 − Pf)] を縦軸、ln σ を横軸にとると直線になり、その傾きがmです。ただし、この図から最小二乗で求めたmは試験片の数が少ないと偏りやすいので、ASTM C1239などの規格では最尤法による推定が採用されています。本数が少ないほどmの推定の幅(信頼区間)が広がるので、信頼できるmには数十本規模の試験片が望まれます。

強さとばらつきは別のもの

mが大きいことは強度がそろっていることを意味し、強度が高いことを意味しません。平均の強度が高くてもmが小さい材料は、低い応力で壊れるものが混じります。また、mとσ₀は試験の方法にも左右され、同じ材料でも、応力のかかる体積が大きい引張試験は、曲げ試験より低い強度を示します。金属は降伏によってき裂の先端が鈍るため、強度のばらつきが小さく、mが数十以上になるので、設計でワイブル統計を使うことはあまりありません。

設計で許せる応力

セラミックス部品では、目標の破壊確率から許容応力を決めます。破壊確率を10⁻⁶ にしたいとき、許せる応力はσ₀の (10⁻⁶)^(1/m) 倍で、m = 10 では約0.25倍、m = 20 では約0.50倍です。mを上げることが、強度そのものを上げるのと同じくらい設計に効くことがわかります。さらに、部品と試験片の有効体積の違いを補正し、出荷前に使用応力より高い応力をかけて弱いものを取り除く保証試験(プルーフテスト)を組み合わせて、信頼性を確保します。

ワイブル係数の練習問題に挑戦

あるセラミックスの強度がワイブル分布 Pf = 1 − exp[−(σ/σ₀)のm乗] に従い、尺度パラメータ σ₀ = 400 MPa、ワイブル係数 m = 10 である。300 MPaで負荷したときの破壊確率はどれに最も近いか。

  1. A約5.5%
  2. B約53%
  3. C約95%
答えと解説を見る

正解:A. 約5.5%

σ/σ₀ = 300/400 = 0.75 で、その10乗は 0.75¹⁰ ≈ 0.0563 です。よって Pf = 1 − exp(−0.0563) ≈ 0.055、約5.5%になります。約53%はm乗を忘れて 1 − exp(−0.75) とした誤りです。約95%は exp(−0.0563) ≈ 0.945 を破壊確率と取り違えた誤りで、これは壊れずに残る確率(信頼度)です。セラミックスの強度は内部の欠陥の大きさで決まるため金属よりばらつきが大きく、mは5〜20程度です。mが大きいほどばらつきが小さく、σ₀より低い応力での破壊確率は急速に小さくなります。

ワイブル係数 m = 10 のセラミックスで、体積Vの試験片の特性強度が500 MPaだった。同じ材料でできた体積10Vの部品の特性強度は、ワイブルの体積効果 σ₂/σ₁ = (V₁/V₂)の1/m乗 を使うとどれに最も近いか。

  1. A約50 MPa
  2. B約500 MPa(変わらない)
  3. C約397 MPa
答えと解説を見る

正解:C. 約397 MPa

最弱リンクの考え方では、体積が大きいほど大きな欠陥を含む確率が高くなり、強度が下がります。σ₂ = 500 × (1/10)の0.1乗 = 500 × 0.794 ≈ 397 MPa です。約50 MPa は強度が体積に反比例すると考えた誤りで、実際にはm乗根で効くので低下はゆるやかです。約500 MPa は、金属のように強度を寸法によらない材料定数とみなした誤りです。小さな試験片の曲げ強度をそのまま大きな部品の設計に使うと危険側になるため、セラミックス部品の設計では、有効体積の違いを考えて強度を補正します。

よくある質問

σ₀で破壊確率が63.2%になるのはなぜですか?

σ = σ₀ を式に代入すると Pf = 1 − exp(−1) = 1 − 1/e ≈ 0.632 になるからです。σ₀は特性強度ともよばれ、平均の強度に近い値ですが、平均値そのものではありません。

ワイブル係数を求めるには何本試験すればよいですか?

決まった本数はありませんが、推定の誤差は本数が少ないほど大きいので、数十本規模の試験が望まれます。10本程度では、mの推定値が真の値から大きくずれることがあるので、信頼区間もあわせて示します。

金属の強度にワイブル係数を使わないのはなぜですか?

金属は塑性変形でき裂の先端が鈍るので、強度が欠陥の大きさにあまり左右されず、ばらつきが小さいからです。そのため、平均値と標準偏差による通常の統計で扱うのがふつうです。

「ワイブル係数」が出てくる問題(2問)

  1. あるセラミックスの強度がワイブル分布 Pf = 1 − exp[−(σ/σ₀)のm乗] に従い、尺度パラメータ σ₀ = 400 MPa、ワイブル係数 m = 10 である。300 MPaで負荷したときの破壊確率はどれに最も近いか。
  2. ワイブル係数 m = 10 のセラミックスで、体積Vの試験片の特性強度が500 MPaだった。同じ材料でできた体積10Vの部品の特性強度は、ワイブルの体積効果 σ₂/σ₁ = (V₁/V₂)の1/m乗 を使うとどれに最も近いか。

関連する用語

圧電効果 焼結 ペロブスカイト構造 変態強化

用語集の一覧へ