破壊前降伏とは
はかいぜんこうふく
き裂があっても部材全体が先に降伏し、急な脆性破壊が起こらない状態。許されるき裂の大きさは (K_IC/σy)² に比例し、K_IC/σy が性能指数になる。
この用語の分野: 材料選択と設計
はかいぜんこうふく
き裂があっても部材全体が先に降伏し、急な脆性破壊が起こらない状態。許されるき裂の大きさは (K_IC/σy)² に比例し、K_IC/σy が性能指数になる。
この用語の分野: 材料選択と設計
き裂のある部材に荷重をかけると、き裂の先端の応力拡大係数Kが破壊靭性K_ICに達して急に壊れるか、その前に部材全体の応力が降伏応力σyに達して塑性変形するかの、どちらかが先に起こります。破壊前降伏は、後者が必ず先に起こるようにする設計の考え方です。降伏すれば部材は目に見えて変形するので、急な脆性破壊の前に異常に気づけます。K = Yσ√(πa) で σ = σy のとき K = K_IC となるき裂長さを求めると a = (1/π)(K_IC/(Yσy))² で、これより小さいき裂なら降伏が先です。
限界のき裂長さは (K_IC/σy)² に比例するので、K_IC が同じまま降伏応力を上げると、許されるき裂は2乗で小さくなります。例えば K_IC = 40 MPa·√m、σy = 400 MPa の材料(Y = 1)では限界は約3.2 mm ですが、同じ K_IC で σy を600 MPaに上げると約1.4 mm になります。実際には、熱処理などで強さを上げると靭性も下がることが多いので、許されるき裂はさらに小さくなります。強い材料ほど安全とは限らず、検査で見つけられるき裂の大きさと比べて材料を選ぶ必要があります。
K_IC/σy という比は、破壊力学のほかの場面にも現れます。き裂の先端にできる塑性域の大きさは (K/σy)² に比例し、平面応力ではおよそ (1/2π)(K/σy)² です。また、破壊靭性試験で平面ひずみの有効な K_IC を得るには、試験片の厚さやき裂長さを 2.5(K_IC/σy)² 以上にする必要があります(ASTM E399)。K_IC = 40 MPa·√m、σy = 400 MPa なら25 mm です。K_IC/σy が大きい材料は、き裂の先端で大きく塑性変形でき、ふつうの厚さの部材では脆性的に壊れにくい材料だといえます。
破壊前降伏の考え方は、圧力容器や配管の材料選びでよく使われます。破壊前降伏を目的にするときの性能指数は K_IC/σy で、アシュビーの材料選択図では K_IC と σy を両対数でとり、傾き1の線で比べます。さらに、き裂が肉厚を貫通して内容物が漏れ出しても、その時点ではまだ急な破壊が起こらないようにする破断前漏えい(リーク・ビフォア・ブレイク)の考え方では、指数は K_IC²/σy になります。温度が下がると K_IC が低下する鋼では、どちらも使用する最低温度での値で判断することが大切です。
破壊前降伏は、き裂から壊れる前に部材全体が降伏するようにする考え方で、性能指数は K_IC/σy です。破断前漏えいは、き裂が肉厚を貫通して漏れが起きても、その長さのき裂ではまだ急な破壊が起こらないようにする考え方で、圧力容器では K_IC²/σy が指数になります。
降伏が先に起こるのは、急な脆性破壊を避けられるという意味で、壊れないという意味ではありません。荷重がさらに増えれば、大きく変形したあとに延性破壊が起こります。また、疲労や応力腐食割れでき裂が成長すると、限界の長さを超えて条件が成り立たなくなることがあります。
き裂の形や位置、部材の寸法による応力拡大係数の違いを表す無次元の係数で、K = Yσ√(πa) と書きます。無限に広い板の中央の貫通き裂では Y = 1 で、表面のき裂や幅の限られた板では1から外れます。Yが大きいほど、限界のき裂長さは小さくなります。