拡散係数・拡散距離 計算ツール

振動数因子D0と活性化エネルギーQから、ある温度での拡散係数を求め、加熱時間から原子がどれくらいの深さまで拡散するかを見積もります。既定値は、オーステナイト(γ鉄)中の炭素(D0 = 2.3 × 10⁻⁵ m²/s、Q = 148 kJ/mol)を900 ℃で4時間浸炭する場合です。

入力

結果

絶対温度 T
–
拡散係数 D
–
拡散距離の目安 √(Dt)
–

表面濃度が一定のとき(半無限体)

深さxでの濃度比 (Cx − C0)/(Cs − C0)
–

D0とQは材料と拡散する元素の組み合わせで決まる値です。濃度比は、表面濃度Csが一定に保たれ、試料が十分に厚い(半無限体)とみなせる場合の誤差関数解で計算しています。気体定数 R = 8.314 J/(mol·K)。

拡散係数の温度依存性(アレニウス式)

固体中の原子は、空孔や格子間のすき間を伝ってとびとびに移動します。1回のジャンプには活性化エネルギーQを越える必要があるため、拡散係数は D = D0·exp(−Q/RT) と温度に対して指数関数的に変わります。既定値(γ鉄中の炭素、900 ℃ = 1173.15 K)では、D = 2.3 × 10⁻⁵ × exp(−148000/(8.314 × 1173.15)) ≈ 5.91 × 10⁻¹² m²/s です。温度を100 ℃上げるだけでDは数倍になるため、熱処理の温度管理が重要になります。両辺の対数をとった ln D = ln D0 − Q/(RT) は、1/Tに対して直線になり、その傾きから−Q/Rが求まります。

拡散距離の目安 √(Dt)

拡散で原子が動く距離は、時間に比例せず、時間の平方根に比例します。目安として x ≈ √(Dt) がよく使われ、既定値の4時間(14,400 s)では √(5.91 × 10⁻¹² × 14400) ≈ 0.292 mm です。拡散の深さを2倍にするには、同じ温度なら時間を4倍にする必要があります。式の係数は定義によって 2√(Dt) などとされることもあるので、比べるときは定義をそろえてください。

浸炭と誤差関数解

鋼の表面を炭素濃度Csの雰囲気に保って浸炭するとき、初期濃度C0の厚い試料の中の濃度分布は、フィックの第二法則の解 (Cx − C0)/(Cs − C0) = 1 − erf(x/(2√(Dt))) で表されます。既定値の深さ0.5 mmでは、x/(2√(Dt)) ≈ 0.857 で、濃度比は約22.6 %です。たとえば C0 = 0.20 wt%、Cs = 1.00 wt%なら、0.5 mmでの炭素濃度は約0.38 wt%になります。erf(z)はzが0で0、zが2を超えるとほぼ1になる関数です。

D0とQの代表値

拡散のしやすさは、格子間を動く小さな原子ほど大きく、置換型の原子では小さくなります。γ鉄中の炭素(格子間拡散)は D0 ≈ 2.3 × 10⁻⁵ m²/s、Q ≈ 148 kJ/mol、α鉄中の炭素は D0 ≈ 1.1 × 10⁻⁶ m²/s、Q ≈ 87 kJ/mol とされます。一方、鉄の自己拡散(γ鉄中、空孔機構)は Q ≈ 280 kJ/mol 前後と大きく、同じ温度でも何桁も遅くなります。値は文献によって幅があるので、計算に使うときは出典の値をそのまま入れてください。

結晶欠陥と拡散の問題を解く

厚さ5.0 mmの鋼板の両面で、炭素濃度がそれぞれ1.2 kg/m³と0.8 kg/m³に保たれ、定常状態で拡散している。拡散係数を3.0×10⁻¹¹ m²/sとすると、炭素の拡散流束はどれに最も近いか。濃度は板厚方向に直線的に変化するとする。

  1. A約2.4×10⁻¹² kg/(m²·s)
  2. B約7.2×10⁻⁹ kg/(m²·s)
  3. C約2.4×10⁻⁹ kg/(m²·s)
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正解:C. 約2.4×10⁻⁹ kg/(m²·s)

定常状態ではフィックの第1法則 J = −D(dC/dx) が使えます。濃度勾配は (0.8 − 1.2)/(5.0×10⁻³ m) = −80 kg/m⁴ なので、J = 3.0×10⁻¹¹ × 80 = 2.4×10⁻⁹ kg/(m²·s) となり、高濃度側から低濃度側へ流れます。約2.4×10⁻¹² は厚さを mm のまま5.0で割った単位換算の誤り、約7.2×10⁻⁹ は濃度差の代わりに片側の濃度1.2 kg/m³を使った誤りです。濃度の差が流れを生むので、勾配を正しくとることが大切です。この考え方は、水素の透過試験やガス分離膜の評価にも使われます。

γ鉄中の炭素の拡散係数は、D₀ = 2.3×10⁻⁵ m²/s、活性化エネルギー Q = 148 kJ/mol のアレニウス型 D = D₀exp(−Q/RT) に従う。927℃における拡散係数はどれに最も近いか。気体定数は R = 8.314 J/(mol·K) とする。

  1. A約8.3×10⁻¹² m²/s
  2. B約1.1×10⁻¹³ m²/s
  3. C約2.3×10⁻⁵ m²/s
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正解:A. 約8.3×10⁻¹² m²/s

温度は絶対温度に直して T = 927 + 273 = 1200 K とします。Q/RT = 148000/(8.314 × 1200) ≈ 14.83 なので、D = 2.3×10⁻⁵ × exp(−14.83) ≈ 2.3×10⁻⁵ × 3.6×10⁻⁷ ≈ 8.3×10⁻¹² m²/s です。約1.1×10⁻¹³ は温度を℃のまま927として代入した誤りです。約2.3×10⁻⁵ は Q を kJ のまま148として指数がほぼ0になった誤りで、D₀ とほとんど同じ値になっています。Dは温度に対して指数関数的に変わるため、浸炭温度を数十℃上げるだけで処理時間を大きく短縮できます。

ある元素の拡散係数が、800 Kで1.0×10⁻¹⁴ m²/s、1000 Kで4.0×10⁻¹³ m²/sだった。アレニウス型 D = D₀exp(−Q/RT) に従うとすると、活性化エネルギーQはどれに最も近いか。R = 8.314 J/(mol·K) とする。

  1. A約53 kJ/mol
  2. B約123 kJ/mol
  3. C約245 kJ/mol
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正解:B. 約123 kJ/mol

2つの温度での式の比をとると D₀ が消え、ln(D₂/D₁) = (Q/R)(1/T₁ − 1/T₂) となります。D₂/D₁ = 40 で ln 40 ≈ 3.689、1/800 − 1/1000 = 2.5×10⁻⁴ K⁻¹ なので、Q = 8.314 × 3.689 / (2.5×10⁻⁴) ≈ 1.23×10⁵ J/mol、つまり約123 kJ/mol です。約53 kJ/mol は自然対数の代わりに常用対数(log₁₀ 40 ≈ 1.602)を使った誤り、約245 kJ/mol は exp(−Q/2RT) の形と混同して2倍した値です。実務では ln D を 1/T に対してプロットし、直線の傾き −Q/R からQを求めます。

よくある質問

拡散係数の単位は何ですか?

SI単位では m²/s です。文献では cm²/s で書かれていることも多く、1 cm²/s = 10⁻⁴ m²/s で換算します。この計算機のD0は m²/s で入力してください。

拡散距離はなぜ時間の平方根に比例するのですか?

原子はでたらめな方向にジャンプを繰り返す(ランダムウォーク)ため、平均の移動距離はジャンプ回数の平方根に比例するからです。ジャンプ回数は時間に比例するので、距離は √t に比例します。

活性化エネルギーの単位を eV で知っているときは?

1 eV/原子は約96.49 kJ/molです。たとえば1.5 eVなら約145 kJ/molを入れます。原子1個あたりで計算するときは、気体定数Rのかわりにボルツマン定数 k = 8.617 × 10⁻⁵ eV/K を使い、D = D0·exp(−Q/kT) とします。

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