XRD計算ツール(ブラッグの法則と消滅則)

格子定数aとミラー指数(hkl)から面間隔と回折角2θを求め、結晶構造ごとの消滅則でピークが出るかどうかを確かめます。既定値はBCCの鉄(a = 0.2866 nm)とCu Kα線(λ = 0.15406 nm)です。

入力

結果

面間隔 d
–
回折角 2θ
–
消滅則
–

低角側から出るピーク(最大6本)

(hkl) と 2θ
–

1次の回折(n = 1)で計算しています。λ/2d が1を超える面は、その波長では回折しません。ピークの強度(構造因子の大きさや多重度、温度因子)は計算していません。

ブラッグの法則と立方晶の面間隔

結晶に波長λのX線を当てると、間隔dで並んだ原子面からの反射が強め合う角度θで、強い回折が起こります。この条件がブラッグの法則 nλ = 2d·sinθ です。立方晶では、ミラー指数(hkl)の面の間隔は d = a/√(h² + k² + l²) で求められます。既定値のBCC鉄(a = 0.2866 nm)の(110)面では、d = 0.2866/√2 ≈ 0.2027 nmで、Cu Kα線(λ = 0.15406 nm)なら sinθ = 0.15406/(2 × 0.2027) ≈ 0.380、2θ ≈ 44.68° になります。XRDの装置は2θを横軸にしたパターンを出すので、計算もふつう2θで比べます。

消滅則: 出るはずのピークが出ない理由

単位胞の中に複数の原子があると、それぞれからの散乱波が打ち消し合い、ある面の回折強度がゼロになることがあります。これを消滅則といい、構造因子 F = Σ f·exp(2πi(hx + ky + lz)) を計算すると導けます。体心立方では h + k + l が偶数の面だけが現れ、(100)は消えて(110)、(200)、(211)、(220)…と続きます。面心立方では h・k・l が全部偶数か全部奇数の面だけで、(111)、(200)、(220)、(311)…です。ダイヤモンド構造(Si、Geなど)ではさらに、全部偶数の場合は h + k + l が4の倍数でなければならず、(200)は消えて(111)、(220)、(311)、(400)…となります。

ピークの並びから結晶構造を見分ける

立方晶では sin²θ が h² + k² + l² に比例するので、低角側から順にピークの sin²θ の比をとると、構造を見分けられます。BCCでは比が 2 : 4 : 6 : 8 …(1 : 2 : 3 : 4 …)、FCCでは 3 : 4 : 8 : 11 : 12 …と並びます。SCは 1 : 2 : 3 : 4 : 5 : 6 : 8 …で、7が抜けるのが特徴です。最初の2本の比が 3 : 4 ならFCC、1 : 2 ならBCCかSC(比の並びに7が抜けていればSC)と見当がつきます。この計算機で構造を切り替えて、ピークの一覧がどう変わるかを確かめてみてください。

計算と実測がずれるとき

実測のピーク位置は、試料の高さのずれ(試料偏心)、ゼロ点の誤差、合金元素による格子定数の変化、残留応力などで、計算から0.1°程度ずれることがあります。格子定数を正確に求めるときは、高角側の複数のピークを使って外挿します。また、Cu Kα線にはKα1(0.15406 nm)とKα2(0.15444 nm)があり、高角側ではピークが2つに分かれて見えます。ピークの幅は結晶子サイズやひずみで広がり、シェラー式 D = Kλ/(β·cosθ) で結晶子サイズの目安を見積もれます。

材料分析の問題を解く

Cu Kα線(波長0.15406 nm)を用いたXRDで、面間隔0.3135 nmのSi(111)面からの1次の回折ピークが現れる回折角2θはどれに最も近いか。

  1. A約14.2°
  2. B約28.4°
  3. C約58.9°
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正解:B. 約28.4°

ブラッグの法則 2d sinθ = nλ(n = 1)より、sinθ = 0.15406/(2 × 0.3135) ≈ 0.2457 で、θ ≈ 14.2°、回折角は 2θ ≈ 28.4° です。XRDの装置やデータでは、入射X線と回折X線のなす角2θを横軸にとるのが普通です。約14.2°はθをそのまま答えた誤り、約58.9°はブラッグの式の2を落として sinθ = λ/d とした誤りです。シリコン粉末の28.4°付近のピークは強くて鋭いので、回折角の校正の標準としてもよく使われます。

FCC構造の金属の粉末XRDで、最も低角の側に現れる回折ピークの指数はどれか。

  1. A(100)
  2. B(110)
  3. C(111)
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正解:C. (111)

FCCでは、h、k、lがすべて偶数か、すべて奇数のときだけ回折が現れ、偶数と奇数が混在すると単位胞内の4個の原子からの散乱が打ち消し合って強度が0になります(消滅則)。そのためピークは(111)、(200)、(220)、(311)…の順に現れ、h² + k² + l² が最小の(111)が最も面間隔が大きく、最も低角の側になります。(100)と(110)はどちらも偶数と奇数が混在するので、FCCでは現れません。BCCでは h + k + l が偶数の面だけが現れるので、最初のピークは(110)になり、ピークの並び方からFCCとBCCを見分けられます。

Cu Kα線(波長0.15406 nm)を用いた銅(FCC)の粉末XRDで、最も低角の側のピークが 2θ = 43.30° に現れた。銅の格子定数はどれに最も近いか。

  1. A約0.209 nm
  2. B約0.295 nm
  3. C約0.362 nm
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正解:C. 約0.362 nm

θ = 21.65° で sinθ ≈ 0.3689 なので、ブラッグの法則から d = λ/(2 sinθ) ≈ 0.2088 nm です。FCCで最も低角の側のピークは(111)なので、a = d × √(1² + 1² + 1²) = 0.2088 × √3 ≈ 0.362 nm となり、銅の格子定数(約0.3615 nm)と一致します。約0.209 nm は面間隔dそのもので、格子定数への換算をしていません。約0.295 nm は最初のピークを(110)とみなして √2 を掛けた値で、BCCの消滅則を当てはめた誤りです。ピークの指数づけを正しく行うことが、格子定数を決める前提になります。

よくある質問

ブラッグの法則の n は何ですか?

回折の次数です。n = 2 の(110)面の回折は、面間隔が半分の(220)面の1次の回折と同じ角度に現れます。そのためXRDでは、ふつう n = 1 として、(220)のように指数を2倍にした面で表します。

BCCで(100)のピークが出ないのはなぜですか?

体心の原子が、角の原子がつくる(100)面のちょうど中間に同じ密度の面をつくり、そこからの散乱波が半波長ずれて打ち消し合うからです。h + k + l が奇数の面はすべて同じ理由で消えます。

Cu Kα線の波長はいくつですか?

Kα1が0.15406 nm、Kα2が0.15444 nmで、強度比はおよそ2 : 1です。分けずに扱うときは重み付き平均の約0.15418 nmを使うこともあります。ほかにCo Kα(約0.1789 nm)、Mo Kα(約0.0709 nm)などもよく使われます。

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