六方最密構造とは

ろっぽうさいみつこうぞう

最密充填面をABAB…と積み重ねた結晶構造(HCP)。配位数12、理想的な c/a は約1.633。Mg、Ti、Znなど。

「六方最密構造」は、1分野の1問の練習問題に出てきます(結晶構造とミラー指数など)。

この用語の分野: 結晶構造とミラー指数

積み重ね方と単位胞

HCPは、最密面をABAB…の順に積み重ねた構造です。よく描かれる六角柱には、頂点に12×1/6、上下の面の中心に2×1/2、内部に3個で、正味6個の原子が含まれます。格子としての単位胞(底面がひし形の柱)には原子が2個です。剛体球が理想的に接するとき c/a は √(8/3) ≈ 1.633 で、配位数12、充填率約0.74とFCCと同じ最密充填になります。Mg、Ti、Zr、Zn、Co、Beなどが室温でこの構造をとります。

実在の金属のc/aとすべりの起こり方

実際のHCP金属の c/a は理想値からずれていて、Znは約1.86、Cdは約1.89と大きく、Mgは約1.62とほぼ理想値、TiやZrは約1.59、Beは約1.57と小さくなります。c/a が大きい金属では底面の面間隔が広く、底面すべりが主になります。c/a が理想値より小さいTiやZrでは、柱面すべりが起こりやすくなります。同じHCPでも、どのすべり系が働くかで変形のしやすさや集合組織のでき方が変わるので、c/a は重要な目安です。

延性が低くなりがちな理由

多結晶が自由に形を変えるには、独立なすべり系が5つ必要です。HCPの底面すべり{0001}<11-20>は3系統しかなく、独立なものは2つだけで、c軸方向の変形を担えません。そのため、c軸方向の成分をもつ錐面すべりや、双晶変形が働かないと、粒界で変形が食い違って割れやすくなります。マグネシウム合金の板が室温でプレスしにくく、温めて成形されることが多いのはこのためで、チタンも冷間加工はFCC金属ほど容易ではありません。

方向による性質の違いと集合組織

HCPは結晶の対称性が低いので、ヤング率や熱膨張係数、すべりのしやすさがc軸の方向とそれに垂直な方向で違います。圧延した板では底面が板面にそろった集合組織ができやすく、強度や成形性が板の方向によって変わります。原子炉の燃料被覆管に使うジルコニウム合金では、集合組織を制御して、析出する水素化物の向きを割れにくい方向にそろえています。HCP金属の部品では、結晶の向きのそろい方まで含めて性質を考える必要があります。

六方最密構造の練習問題に挑戦

理想的な六方最密構造(HCP)についての説明として正しいものはどれか。

  1. Ac/a ≈ 1.633で、充填率はFCCと同じ約0.74
  2. Bc/a ≈ 1.633で、充填率はBCCと同じ約0.68
  3. Cc/a ≈ 1.414で、充填率はFCCと同じ約0.74
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正解:A. c/a ≈ 1.633で、充填率はFCCと同じ約0.74

HCPは最密充填面をABAB…と積み重ねた構造で、剛体球が理想的に接するとき c/a = √(8/3) ≈ 1.633 になります。配位数は12、充填率は約0.74で、ABCABC…と積み重ねるFCCと同じ最密充填です。約0.68はBCCの充填率、1.414(√2)はFCCの面対角線と稜の長さの比で、HCPの c/a ではありません。実在のHCP金属は c/a が理想値からずれていて、Mgは約1.62、Tiは約1.59、Znは約1.86です。すべり系が少ないため、HCP金属は室温での延性がFCC金属より低くなりがちです。

よくある質問

理想的な c/a が1.633になるのはなぜですか?

下の層の3個と上の1個の球が接して正四面体をつくり、その高さは原子間距離aの √(2/3) 倍です。c はこの高さの2倍なので、c/a = 2√(2/3) = √(8/3) ≈ 1.633 になります。

HCPの単位胞に原子は何個ありますか?

底面がひし形の基本の単位胞では2個です。六角柱で数えると、頂点12×1/6 + 上下の面心2×1/2 + 内部3 = 6個で、基本の単位胞3つ分にあたります。

HCPとFCCの違いは何ですか?

どちらも最密面を重ねた構造ですが、積み重ねがHCPはABAB…、FCCはABCABC…です。積み重ねの1か所の乱れでFCCの中にHCPの並びができるので、コバルトのように約420℃でHCPとFCCが入れ替わる金属もあります。

「六方最密構造」が出てくる問題(1問)

  1. 理想的な六方最密構造(HCP)についての説明として正しいものはどれか。

関連する用語

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