強化ガラスとは

きょうかがらす

加熱した板ガラスを空気で急冷し、表面に圧縮、内部に引張の応力を残して強くしたガラス。割れると細かい粒に砕ける。

「強化ガラス」は、1分野の1問の練習問題に出てきます(ガラスと非晶質材料など)。

この用語の分野: ガラスと非晶質材料

強くなる仕組み

ガラスの破壊は、表面の微小な傷に引張の応力がかかって始まります。強化ガラスは、表面にあらかじめ圧縮の応力を残しておくことで、外から引張がかかっても、その圧縮を打ち消すまでは傷が開かないようにしたものです。そのため、曲げや衝撃に対する強さが、ふつうの徐冷したガラスの3〜5倍程度になります。厚さの中央には、表面の圧縮と釣り合う引張の応力が残ります。ガラスの材料そのものが強くなったわけではなく、残留応力によって表面の傷を閉じた状態に保っている点が本質です。

製造の条件と、強化しにくいガラス

板ガラスを、ガラス転移温度より高い約650℃まで加熱し、両面に空気を均一に吹き付けて急冷します。冷やすときの表面と内部の温度差が大きいほど、残る応力は大きくなります。そのため、薄い板では温度差をつけにくく、厚さ3 mm 程度より薄い板を風冷で十分に強化するのは難しくなります。また、残る応力は線膨張係数にほぼ比例するので、ホウケイ酸ガラスや石英ガラスのように熱膨張の小さいガラスは、風冷ではあまり強化できません。強化したあとは切断や穴あけができないので、加工はすべて強化の前に済ませます。

割れ方と自然破損

強化ガラスは、割れると内部に蓄えられたひずみエネルギーが一気に解放され、全体が数mm程度の角の鈍い粒に砕けるので、大きな鋭い破片でけがをする危険が小さくなります。この割れ方は、決められた範囲の中の破片の数を数える破砕試験で確かめます。一方で、ガラスの中に入った微小な硫化ニッケルの粒が、時間がたってから結晶の形を変えて膨らみ、中央の引張の層から割れが始まる自然破損が知られています。これを減らすため、強化したガラスを約290℃に保持して、そうした粒を含むものをあらかじめ割っておくヒートソーク処理が行われます。

倍強度ガラスと使われる場所

冷却をゆるやかにして、表面の圧縮応力を強化ガラスの半分程度に抑えたものを、倍強度ガラスと呼びます。強さは徐冷したガラスの約2倍で、割れたときはふつうのガラスに近い大きな破片になって枠から落ちにくいので、高い場所の窓などに使われます。強化ガラスは、ドアや間仕切り、家具、自動車の側面や後ろの窓に使われます。自動車の前面のガラスは、割れても視界と形を保てるよう、樹脂の膜を挟んだ合わせガラスにします。このように、強さだけでなく割れ方の違いも考えて使い分けます。

強化ガラスの練習問題に挑戦

厚さ t = 10 mm の風冷強化ガラスで、厚さの中央からの距離を y とすると、応力が σ(y) = σc(1 − 12y²/t²)(引張を正、σcは中央の引張応力)の放物線で分布しているとする。表面の圧縮応力が120 MPaのとき、中央の引張応力σcと、表面から圧縮の層が終わるまでの深さの組み合わせとして正しいものはどれか。

  1. A約120 MPa、約2.1 mm
  2. B約60 MPa、約2.1 mm
  3. C約60 MPa、約2.9 mm
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正解:B. 約60 MPa、約2.1 mm

表面 y = t/2 では σ = σc(1 − 3) = −2σc なので、2σc = 120 MPa から σc = 60 MPa です。応力が0になるのは 12y²/t² = 1、つまり y = t/√12 ≈ 2.89 mm のところで、表面からの深さは 5.0 − 2.89 ≈ 2.1 mm(厚さの約21%)です。この分布は、厚さ方向に応力を足し合わせると0になる力の釣り合いを満たしています。約2.9 mmは、中央から測った距離をそのまま表面からの深さとした値です。中央の引張を表面の圧縮と同じ120 MPaとする組み合わせは、力の釣り合いを満たしません。表面の圧縮が中央の引張のおよそ2倍で、圧縮層が厚さの約5分の1になるのが、風冷強化の目安です。

よくある質問

強化ガラスの表面には、どれくらいの圧縮応力がありますか。

建築用の強化ガラスでは、表面の圧縮応力はおよそ70〜150 MPa で、100 MPa 前後のことが多くあります。下限は規格で決められていて、例えば ASTM C1048 では69 MPa 以上です。倍強度ガラスはその半分程度です。応力は偏光を使った光弾性の方法で、ガラスを壊さずに測ります。

強化ガラスと化学強化ガラスはどう違いますか。

強化ガラスは急冷による温度差で、化学強化ガラスはイオン交換で、表面に圧縮応力をつくります。強化ガラスは圧縮の層が板厚の約5分の1と厚い一方、薄い板には向きません。化学強化ガラスは圧縮の層が数十µm と薄いものの応力が大きく、1 mm 以下の薄い板にも使えます。

強化ガラスが割れると細かい粒になるのはなぜですか。

厚さの中央に大きな引張の応力が蓄えられていて、き裂が一度その層に入ると、解放されるひずみエネルギーでき裂が次々に枝分かれしながら進むからです。中央の引張の応力が大きいほど、破片は細かくなります。

「強化ガラス」が出てくる問題(1問)

  1. 厚さ t = 10 mm の風冷強化ガラスで、厚さの中央からの距離を y とすると、応力が σ(y) = σc(1 − 12y²/t²)(引張を正、σcは中央の引張応力)の放物線で分布しているとする。表面の圧縮応力が120 MPaのとき、中央の引張応力σcと、表面から圧縮の層が終わるまでの深さの組み合わせとして正しいものはどれか。

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