金属ガラスとは

きんぞくがらす

金属の融液を結晶化させずに固めた非晶質の合金。転位がなく、強度と弾性ひずみの限界が大きい。厚いものをバルク金属ガラスと呼ぶ。

「金属ガラス」は、1分野の4問の練習問題に出てきます(ガラスと非晶質材料など)。

この用語の分野: ガラスと非晶質材料

つくり方とガラス形成能

金属の融液は粘度が低く原子がすばやく再配列するので、ふつうは冷やすとすぐに結晶になります。1960年にAu-Si合金を約10⁶ K/sで急冷して非晶質の合金がつくられて以来、初期の金属ガラスは、回転する銅のロールに融液を吹き付けるロール急冷などでつくる、厚さ数十µmの薄帯でした。1990年前後から、Zr、Pd、Mg、Feなどを主成分とする多成分の合金で臨界冷却速度が1〜100 K/s程度まで下がり、銅の鋳型に流し込むだけで厚さ数mmからcm級のバルク金属ガラスがつくれるようになりました。

機械的性質

金属ガラスには転位や粒界がないので、降伏強さは同じ元素からなる結晶の合金よりずっと高く、Zr基で約1.8 GPa、Co基では5 GPaを超えるものもあります。ヤング率は結晶より3割ほど低く、弾性ひずみの限界は約2%と、多くの結晶性の金属の数倍です。一方で、室温では変形が細いせん断帯に集中し、加工硬化もないため、引張ではほとんど伸びずに破断します。この脆さを補うため、結晶相を分散させた複合材料などが研究されています。

過冷却液体域での成形と用途

金属ガラスを加熱すると、ガラス転移温度Tgを超えたところで粘度の下がった過冷却液体になり、さらに高い結晶化温度Txで結晶化します。TgとTxの間の温度域では、樹脂のように小さな力で大きく変形できるので、微細な型の形を写し取る精密な成形ができます。用途としては、大きな弾性エネルギーを生かしたばねやスポーツ用品、精密部品のほか、結晶磁気異方性がなく保磁力が小さいFe基の薄帯が、損失の小さい変圧器の鉄心に使われています。

金属ガラスの練習問題に挑戦

数mm以上の厚さでもガラスになるバルク金属ガラスをつくりやすい合金の条件として、経験的に知られている組み合わせ(井上の経験則)はどれか。

  1. A2種類の元素だけからなり、融点の高い純金属に近い組成で、液相線温度が高い
  2. B原子半径がほぼ等しい3種類以上の元素を組み合わせ、元素どうしの混合熱が正になるようにする
  3. C3種類以上の元素からなり、主な元素の原子半径の差が約12%以上で、混合熱が負である
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正解:C. 3種類以上の元素からなり、主な元素の原子半径の差が約12%以上で、混合熱が負である

井上の経験則は、多成分であること、主な元素の原子半径の差が約12%以上あること、混合熱が負であることの3つです。大きさの違う原子が引き合いながら混ざると、液体は原子が密に詰まった乱れた配列になり、原子の拡散と再配列が遅くなります。また、多くの元素を含む液体から結晶ができるには原子を大きく並べ替える必要があり、結晶の核生成と成長が起こりにくくなります。深い共晶に近い組成で液相線温度が下がることも助けになります。原子半径が等しく混合熱が正の組み合わせは固溶体や相分離をつくりやすく、純金属に近い組成は10⁶ K/s程度の急冷でもほとんどガラスになりません。

銅の鋳型に流し込んで板状の金属ガラスをつくる。板の中心の冷却速度が板厚dの2乗に反比例するとし、厚さ1.0 mmのときの冷却速度を1.0×10³ K/sとする。臨界冷却速度が10 K/sの合金をガラスにできる最大の板厚はどれに最も近いか。

  1. A約100 mm
  2. B約0.10 mm
  3. C約10 mm
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正解:C. 約10 mm

冷却速度は R = 1.0×10³×(1.0/d)² K/s(dはmm)と書けるので、R = 10 K/s になる板厚は d = 1.0×√(1.0×10³/10) = 10 mm です。熱が鋳型へ逃げる時間は熱が伝わる距離の2乗に比例するので、冷却速度は厚さの2乗に反比例します。約100 mmは冷却速度が厚さに反比例するとした値、約0.10 mmは冷却速度の比を逆にした値です。初期の金属ガラスは臨界冷却速度が10⁵〜10⁶ K/s程度と大きく、ロール急冷でつくる厚さ数十µmの薄帯しか得られませんでしたが、多成分の合金で臨界冷却速度が下がり、cm級のバルク金属ガラスがつくれるようになりました。

よくある質問

金属ガラスは時間がたつと結晶になりますか。

熱力学的には結晶より不安定ですが、室温では原子がほとんど動かないので、実用上は結晶化しません。ただし、Tgに近い温度に長く置くと、構造緩和で脆くなったり結晶化したりするので、使う温度はTgより十分低くします。

金属ガラスとアモルファス合金は同じものですか。

どちらも結晶の周期性をもたない合金を指し、ほぼ同じ意味で使われます。加熱したときにはっきりしたガラス転移を示し、過冷却液体の温度域をもつものを、特に金属ガラスと呼んで区別することもあります。

なぜ多成分の合金がガラスになりやすいのですか。

大きさの違う原子が引き合いながら混ざると、液体が密で乱れた配列になって原子の動きが遅くなり、結晶をつくるには原子を大きく並べ替える必要が出てくるからです。液相線温度が下がって、換算ガラス転移温度が大きくなることも効きます。

解説の中の「金属ガラス」

「金属ガラス」が出てくる問題(4問)

  1. 数mm以上の厚さでもガラスになるバルク金属ガラスをつくりやすい合金の条件として、経験的に知られている組み合わせ(井上の経験則)はどれか。
  2. 銅の鋳型に流し込んで板状の金属ガラスをつくる。板の中心の冷却速度が板厚dの2乗に反比例するとし、厚さ1.0 mmのときの冷却速度を1.0×10³ K/sとする。臨界冷却速度が10 K/sの合金をガラスにできる最大の板厚はどれに最も近いか。
  3. あるZr基バルク金属ガラスの降伏強さが1.8 GPa、ヤング率が90 GPaである。弾性ひずみの限界を σy/E で見積もった値と、結晶性の金属材料との比較の組み合わせとして正しいものはどれか。
  4. 金属ガラスの室温での塑性変形についての説明として正しいものはどれか。

関連する用語

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