保磁力とは
ほじりょく
磁化した磁性体の磁化(または磁束密度)を0に戻すのに必要な逆向きの磁界の強さ。小さいものは軟磁性、大きいものは硬磁性材料。
「保磁力」は、2分野の6問の練習問題に出てきます(磁性材料, 電子・磁性・光学材料など)。
この用語の分野: 電子・磁性・光学材料
ほじりょく
磁化した磁性体の磁化(または磁束密度)を0に戻すのに必要な逆向きの磁界の強さ。小さいものは軟磁性、大きいものは硬磁性材料。
「保磁力」は、2分野の6問の練習問題に出てきます(磁性材料, 電子・磁性・光学材料など)。
この用語の分野: 電子・磁性・光学材料
保磁力は、磁化した材料の磁化を反転させるのにどれだけ強い逆向きの磁界が必要かを表し、単位はA/mです(1 Oe ≈ 79.6 A/m)。軟磁性材料では、スーパーマロイのような高透磁率合金の1 A/m以下から、電磁鋼板の数〜数十 A/m程度です。一方、永久磁石では、フェライト磁石が数百 kA/m、ネオジム磁石の固有保磁力が1000〜3000 kA/m程度に達します。同じ強磁性体でもこれほど違うのは、保磁力が材料の組成だけでなく組織に強く左右されるためです。
結晶磁気異方性から計算される異方性磁界は保磁力の理論上の上限ですが、実際の保磁力はそれよりずっと小さくなります。磁化の反転は、欠陥のある場所で逆向きの磁区が核として生まれ、磁壁が動いて広がることで起こるからです。そのため、介在物、析出物、粒界、内部応力が磁壁を引っかける(ピン止めする)ほど保磁力は大きくなります。永久磁石では逆磁区の核ができにくい組織を、軟磁性材料では磁壁が動きやすいきれいな組織をつくることが目標になります。
ふつうの軟磁性材料では、粒界が磁壁の動きを妨げるので、結晶粒を大きくすると保磁力が下がります。ところが粒径が数十nm以下になり、磁気的な交換の長さより小さくなると、隣り合う粒の異方性が平均化されて打ち消し合い、保磁力は粒径の6乗に比例して急に小さくなります(ハーツァーのランダム異方性モデル)。ナノ結晶軟磁性合金はこの効果を利用しています。単磁区の粒子の大きさで保磁力が最大になる永久磁石の考え方とは、逆向きの設計です。
保磁力は、試料に磁界をかけて磁化曲線(ヒステリシスループ)を測り、磁化や磁束密度が0になる磁界から求めます。永久磁石では、反磁界の影響を除くために閉じた磁気回路のBHトレーサーを使い、粉末や薄膜には振動試料型磁力計(VSM)を使います。磁気記録の媒体では、書き込めるほど小さく、熱揺らぎで情報が消えないほど大きいという、両方の条件を満たす保磁力が必要です。保磁力は温度で大きく変わるので、使用温度での値で評価します。
正解:C. 単磁区になる臨界径の付近で最大になり、さらに小さくすると超常磁性になって0に近づく
大きな粒子は多数の磁区をもち、磁化の反転は弱い磁界でも動く磁壁の移動で起こるので、保磁力は小さくなります。粒子を小さくすると磁壁が減り、臨界径より小さくなると磁壁をもたない単磁区粒子になります。単磁区粒子の磁化を反転させるには、磁気異方性に逆らって磁化全体を回転させる必要があるので、保磁力はこの付近で最大になります。さらに小さくすると、反転のエネルギー障壁KVが熱エネルギーに比べて小さくなり、磁化が熱で勝手に反転する超常磁性になって、保磁力は0に近づきます。保磁力は異方性だけでなく粒径や組織に強く依存するので一定ではなく、臨界径より小さい範囲では単調に増えることもありません。磁気記録媒体の粒子設計は、この上限と下限の間で行われます。
正解:A. HcJ ≥ HcB
逆磁界 H = −HcB でB = 0になったとき、B = µ₀(H + M) から M = HcB > 0 で、磁化はまだ正の値で残っています。Mを0にするには、さらに強い逆磁界が必要なので HcJ ≥ HcB です。したがって、HcJ ≤ HcB や常に等しいとする選択肢は誤りです。また、逆磁界の中でMは残留磁化より大きくならないので、HcB は Br/µ₀ を超えられません。ネオジム磁石のように HcJ がとても大きい材料では、HcB はこの上限の Br/µ₀ に近い値で頭打ちになります。高温や強い逆磁界の中で磁石が減磁しにくいかどうかは、磁化そのものが反転するかどうかを表す HcJ で判断します。保磁力の小さい軟磁性材料では、両者の差は無視できるほど小さくなります。
SI単位系ではA/mで、kA/mもよく使われます。古いCGS単位系のOe(エルステッド)では、1 Oe = 1000/(4π) A/m ≈ 79.6 A/mです。磁束密度に換算してµ₀Hcを T(テスラ)で示すこともあります。
HcBは磁束密度Bを0にする逆磁界、HcJは磁化Mを0にする逆磁界で、常に HcJ ≥ HcB です。磁石が減磁しにくいかどうかは、磁化そのものの反転を表すHcJで判断します。
不純物や介在物を減らし、焼なましで内部応力やひずみを除き、結晶粒を大きくします。さらに組成を選んで結晶磁気異方性と磁歪を小さくしたり、ナノ結晶化して異方性を平均化したりする方法があります。
大きな粒子は多数の磁区をもち、磁化の反転は弱い磁界でも動く磁壁の移動で起こるので、保磁力は小さくなります。
強磁性体の粒子を数µmからnmの大きさまで小さくしていくとき、粒子の保磁力の変化として正しいものはどれか。保磁力の小さい軟磁性材料では、両者の差は無視できるほど小さくなります。
永久磁石の減磁曲線で、磁束密度Bを0にする逆磁界の大きさを保磁力 HcB、磁化Mを0にする逆磁界の大きさを固有保磁力 …保磁力の上限の目安は異方性磁界 HA = 2K/(µ₀Ms) で、Kが大きいほど磁化を容易軸からそらしにくくなります。
Nd₂Fe₁₄B を主相とするネオジム磁石が大きな保磁力をもてる、物質としての主な理由はどれか。そのため、保磁力が小さくループが細い軟磁性材料が必要です。
変圧器の鉄心に適した軟磁性材料の特徴として正しいものはどれか。磁壁が介在物や粒界に引っかかって動きにくいほど、保磁力は大きくなります。
消磁状態の強磁性体に外部磁界をかけて徐々に強めたとき、磁化が進むしくみとして正しいものはどれか。磁区 軟磁性材料 飽和磁化 磁壁 結晶磁気異方性 超常磁性 キュリー温度 最大エネルギー積 間接遷移型半導体 マティーセンの規則