間接遷移型半導体とは

かんせつせんいがたはんどうたい

伝導帯の底と価電子帯の頂上の結晶運動量が異なる半導体。発光再結合にフォノンが必要で発光効率が低い。シリコンやゲルマニウム。

「間接遷移型半導体」は、2分野の2問の練習問題に出てきます(電子・磁性・光学材料, ガラスと非晶質材料など)。

この用語の分野: 電子・磁性・光学材料

バンドの谷と山の位置がずれている

結晶の電子のエネルギーは、結晶運動量(波数k)によって変わります。間接遷移型では、伝導帯の最も低い点(谷)と価電子帯の最も高い点(山)が異なるkにあります。シリコンでは山がΓ点(k = 0)にあり、谷はΓ点からX点へ向かう途中の約85%の位置にあります。ゲルマニウムの谷はL点です。室温のバンドギャップは、Siが約1.12 eV、Geが約0.66 eVで、GaP(約2.26 eV)、AlAs、ダイヤモンドも間接遷移型です。

光の吸収が弱い

光子の運動量は電子の結晶運動量に比べて非常に小さいので、光の吸収や放出ではkがほとんど変わりません。間接遷移型でバンドギャップ付近の光を吸収するには、運動量の差をフォノンが同時に補う必要があり、確率が低くなります。そのためシリコンはバンド端の近くで吸収係数が小さく、太陽電池では100 µm以上の厚さの基板や、表面の凹凸で光を閉じ込める工夫が必要です。吸収係数の測定から、間接遷移型では (αhν)^(1/2) をhνに対してプロットしてバンドギャップを求めます。

発光が弱く、寿命が長い

電子と正孔が光を出して再結合する確率も、間接遷移型では非常に小さくなります。発光再結合の係数は、SiではGaAsより約4桁も小さく、注入した電子と正孔の多くは欠陥準位を介した非発光再結合で熱になります。これがシリコンでLEDやレーザーをつくりにくい理由です。かつての緑色のGaP発光ダイオードでは、窒素を入れてできる準位に電子を局在させ、運動量の制約を緩めて発光させていました。逆にキャリアの寿命が長いことは、太陽電池や受光素子では利点になります。

シリコンで光を扱う工夫

光の吸収が弱いとはいえ、シリコンは可視光から波長約1.1 µmまでをよく検出できるので、イメージセンサーや太陽電池の主役です。発光させる工夫も研究されていて、ゲルマニウムは直接遷移のギャップ(約0.80 eV)が間接遷移のギャップより約0.14 eV高いだけなので、引張ひずみとn型の高濃度ドーピングで発光させる試みがあります。実用のシリコンフォトニクスでは、光源にInPなどの直接遷移型の半導体を貼り合わせ、受光にはSi上に成長させたGeを使うのが一般的です。

間接遷移型半導体の練習問題に挑戦

シリコンが発光ダイオードの発光材料としてほとんど使われない主な理由はどれか。

  1. A直接遷移型の半導体で、電子と正孔が光を出さずにフォノンを放ってすぐ再結合してしまうから
  2. Bバンドギャップが約3.4 eVと大きすぎて、可視光より波長の短い紫外光しか出せないから
  3. C間接遷移型の半導体で、発光再結合にフォノンの関与が必要なため、発光の効率が低いから
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正解:C. 間接遷移型の半導体で、発光再結合にフォノンの関与が必要なため、発光の効率が低いから

シリコンは間接遷移型の半導体で、伝導帯の底と価電子帯の頂上が異なる結晶運動量の位置にあります。電子と正孔が光を出して再結合するには運動量の差を補うフォノンの同時の関与が必要なので、発光再結合の確率が非常に低く、多くは欠陥準位を介した非発光再結合で熱になります。GaAsやInGaNのような直接遷移型では効率よく発光するので、LEDやレーザーに使われます。直接遷移型であることはむしろ発光に有利な性質です。約3.4 eVはシリコンではなくGaNのバンドギャップで、シリコンは約1.12 eVなので、発光しても波長約1.1 µmの赤外光になります。

水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)と結晶シリコンの性質の比較として正しいものはどれか。

  1. A原子配列が乱れているので可視光をほとんど吸収せず、ITO の代わりに透明な電極に使われる
  2. B可視光の吸収係数が結晶より大きく1 µm以下の膜で吸収できるが、電子の移動度は2〜3桁小さい
  3. C電子の移動度が結晶シリコンより大きいので、高速のマイクロプロセッサーのトランジスタに広く使われる
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正解:B. 可視光の吸収係数が結晶より大きく1 µm以下の膜で吸収できるが、電子の移動度は2〜3桁小さい

結晶シリコンは間接遷移型で、可視光のうち波長の長い光の吸収が弱いため、太陽電池にはふつう100 µm以上の厚さの基板が使われます。a-Si:Hでは長距離の周期性がなく、遷移の前後で運動量を保存する制約がゆるむので、可視光の吸収係数が結晶より大きくなり、厚さ1 µm以下の膜で光を吸収できます。一方で、乱れた網目がつくるバンド端のすその準位でキャリアが捕まるため、電子の移動度は約1〜10 cm²/(V·s)と、結晶シリコンの約1400 cm²/(V·s)より2〜3桁小さくなります。そのため高速の論理回路には向かず、約300℃で大面積に成膜できる利点を生かして、液晶ディスプレーの画素のTFTや薄膜太陽電池に使われてきました。バンドギャップ約1.7 eVで可視光をよく吸収し、透明電極にはなりません。

よくある質問

直接遷移型と間接遷移型はどうやって見分けますか?

バンド構造の計算や角度分解光電子分光のほか、吸収係数の立ち上がり方で判断します。直接遷移型は吸収端で急に吸収が強くなり、発光も強く出ます。間接遷移型では吸収がゆるやかに増え、発光は弱くなります。

シリコンが発光すると、どんな波長の光になりますか?

バンドギャップ約1.12 eVに対応する、波長約1.1 µmの近赤外光になります。目には見えず、しかも効率がきわめて低いので、照明や表示には使われません。

間接遷移型のシリコンが太陽電池に使われるのはなぜですか?

吸収は弱いものの、バンドギャップが太陽光に適した大きさで、資源が豊富で、高品質の結晶を大量に安くつくれるからです。キャリアの寿命が長く、厚い基板の中で生じた電子と正孔も電極まで届きやすいことも利点です。

解説の中の「間接遷移型半導体」

「間接遷移型半導体」が出てくる問題(2問)

  1. シリコンが発光ダイオードの発光材料としてほとんど使われない主な理由はどれか。
  2. 水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)と結晶シリコンの性質の比較として正しいものはどれか。

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