軟磁性材料とは

なんじせいざいりょう

保磁力が小さく、ヒステリシス損の少ない磁性材料。電磁鋼板、フェライト、アモルファス合金などで、変圧器やモーターの鉄心に使う。

「軟磁性材料」は、2分野の3問の練習問題に出てきます(磁性材料, 電子・磁性・光学材料など)。

この用語の分野: 電子・磁性・光学材料

求められる性質

軟磁性材料の「軟」は機械的な軟らかさではなく、弱い磁界で容易に磁化し、磁界を除くとすぐに磁化が戻るという意味です。求められるのは、保磁力が小さいこと、透磁率が高いこと、飽和磁束密度が大きいこと、交流で使ったときの損失(鉄損)が小さいことです。飽和磁束密度が大きいほど鉄心を小さくでき、鉄損が小さいほど効率が上がって発熱が減ります。ただし、これらを同時に最大にできる材料はなく、使う周波数で選び分けます。

鉄損の内訳と板を薄くする理由

鉄損は、ヒステリシスループの面積に比例するヒステリシス損(周波数fに比例)と、磁束の変化で材料の中を流れる電流による渦電流損に分けられます。厚さtの板の古典的な渦電流損は π²t²f²B²/(6ρ) で、板厚の2乗に比例し、抵抗率ρに反比例します。厚さ0.35 mm、抵抗率約0.48 µΩ·mのけい素鋼板を50 Hz、1.5 Tで使うと、この式では約0.3 W/kgです(実際の鉄損はヒステリシス損などが加わり、これより大きくなります)。そのため、Siを加えて抵抗率を上げ、薄い板を絶縁して積み重ねて使います。

代表的な材料の比較

けい素鋼板(電磁鋼板)は飽和磁束密度が約2 Tと大きく、安価で、商用周波数の変圧器やモーターの主役です。Fe基アモルファス合金は飽和磁束密度が約1.5 Tとやや低いものの、鉄損が非常に小さく、配電用の変圧器に使われます。Fe-Si-B系にCuとNbを加えたナノ結晶合金(1988年に日本で開発)は、高い透磁率と低い損失を両立します。Mn-Zn系などのフェライトは飽和磁束密度が約0.5 T以下と低いものの、抵抗率が非常に高く、高周波で損失が小さくなります。

周波数による使い分けと加工の注意

50/60 Hzの大型変圧器には圧延方向に磁化しやすい方向性電磁鋼板、回転磁界を受けるモーターには無方向性電磁鋼板が使われます。数kHzから数MHzのスイッチング電源には、フェライトやナノ結晶合金、圧粉磁心が選ばれます。軟磁性材料は応力やひずみに敏感で、打ち抜きや曲げの加工で保磁力が上がり鉄損が増えます。そのため加工のあとにひずみ取りの焼なましを行ったり、積み重ねたときに締め付けすぎないようにしたりします。

軟磁性材料の練習問題に挑戦

変圧器の鉄心に適した軟磁性材料の特徴として正しいものはどれか。

  1. A保磁力が大きく、ヒステリシスループの面積が大きい
  2. B保磁力が小さく、ヒステリシスループが細くて面積が小さい
  3. C残留磁束密度が大きいことが最も重要で、保磁力は問わない
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正解:B. 保磁力が小さく、ヒステリシスループが細くて面積が小さい

交流で使う鉄心は1周期ごとに磁化の向きが反転するので、ヒステリシスループの面積に比例したエネルギーが毎周期失われます。そのため、保磁力が小さくループが細い軟磁性材料が必要です。さらに透磁率と飽和磁束密度が大きく、渦電流損を減らすために電気抵抗が高いことも求められ、方向性電磁鋼板(けい素鋼板)、フェライト、アモルファス合金などが使われます。保磁力が大きくループの面積が大きいのは、Nd-Fe-B磁石やフェライト磁石のような硬磁性材料(永久磁石)の特徴です。永久磁石では、残留磁束密度と保磁力の両方が大きいことが重要です。

よくある質問

軟磁性の「軟」とはどういう意味ですか?

磁気的に「やわらかい」、つまり弱い磁界で磁化の向きが簡単に変わり、磁界を除くと磁化がほとんど残らないという意味です。機械的な硬さとは関係なく、硬い電磁鋼板も軟磁性材料です。

方向性電磁鋼板と無方向性電磁鋼板の違いは?

方向性は結晶の磁化しやすい<001>方向を圧延方向にそろえた(ゴス方位)鋼板で、磁束の向きが決まった変圧器に使います。無方向性は結晶の向きがほぼランダムで、磁束の向きが回転するモーターに使います。

ソフトフェライトとハードフェライトの違いは?

ソフトフェライトはMn-Zn系やNi-Zn系のスピネル型の酸化物で、保磁力が小さく、高周波の変圧器やインダクターに使います。ハードフェライトはBaやSrを含む六方晶のマグネトプランバイト型で、保磁力が大きく永久磁石に使います。

解説の中の「軟磁性材料」

「軟磁性材料」が出てくる問題(3問)

  1. 変圧器の鉄心に適した軟磁性材料の特徴として正しいものはどれか。
  2. 永久磁石の減磁曲線で、磁束密度Bを0にする逆磁界の大きさを保磁力 HcB、磁化Mを0にする逆磁界の大きさを固有保磁力 HcJ とする。B = µ₀(H + M) の関係から、両者の大小関係として正しいものはどれか。
  3. Nd₂Fe₁₄B を主相とするネオジム磁石が大きな保磁力をもてる、物質としての主な理由はどれか。

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