飽和磁化とは
ほうわじか
強い磁界をかけて磁気モーメントがすべて同じ向きにそろったときの磁化。鉄では約1.7×10⁶ A/m(µ₀Msで約2.2 T)で、温度が上がると減る。
「飽和磁化」は、2分野の8問の練習問題に出てきます(磁性材料, 電子・磁性・光学材料など)。
この用語の分野: 磁性材料
ほうわじか
強い磁界をかけて磁気モーメントがすべて同じ向きにそろったときの磁化。鉄では約1.7×10⁶ A/m(µ₀Msで約2.2 T)で、温度が上がると減る。
「飽和磁化」は、2分野の8問の練習問題に出てきます(磁性材料, 電子・磁性・光学材料など)。
この用語の分野: 磁性材料
飽和磁化Msは、強い磁界で磁気モーメントがすべて一方向にそろったときの単位体積あたりの磁気モーメントで、単位は A/m です。原子1個あたりのモーメントと原子の数密度で決まるので、組成と温度が同じなら、結晶粒の大きさや加工の程度にはほとんどよりません。この点で、組織によって大きく変わる保磁力や透磁率とは性格が違い、組織に鈍感な量として扱われます。磁性材料の設計では、まず組成で飽和磁化の大きさを決め、組織の制御で保磁力や透磁率を調整するという順で考えます。
室温の飽和磁束密度 µ₀Ms で比べると、鉄が約2.15 T、コバルトが約1.8 T、ニッケルが約0.6 T で、0 Kでの原子1個あたりのモーメントはそれぞれ約2.22、1.72、0.61 µB です。鉄にコバルトを約35%加えた合金では約2.4 Tに達し、実用材料の中で最も高い値になります。一方、鉄基のアモルファス合金は約1.5〜1.6 T、Mn-Znフェライトは約0.5 Tと低めです。質量あたりで表すこともあり、鉄の飽和磁化は約218 A·m²/kg(218 emu/g)です。
温度が上がると、熱の揺らぎでモーメントの向きがそろいにくくなり、飽和磁化は小さくなります。0 Kから温度を上げると初めはゆっくり、キュリー温度に近づくと急に下がり、キュリー温度で0になります。キュリー温度は、鉄で約770℃、ニッケルで約358℃、コバルトで約1120℃です。室温の値は0 Kの値よりいくらか小さく、例えばニッケルでは、原子のモーメントから計算した0 Kの値の約0.64 Tに対して、室温では約0.61 Tです。高温で使うモーターや変圧器の材料では、使用温度での飽和磁化を見る必要があります。
磁束密度は B = µ₀(H + M) なので、飽和したときの磁束密度 Bs は µ₀Ms に µ₀H が加わった値ですが、軟磁性材料では µ₀H が小さいので Bs ≈ µ₀Ms として扱います。残留磁化は磁界を0に戻したときに残る磁化で、飽和磁化より小さく、組織や形に大きく左右されます。測定では、振動試料型磁力計(VSM)やSQUID磁力計で磁化曲線を測り、高い磁界で飽和した値を読みます。試料の形による反磁界があると飽和に強い磁界が必要になるので、細長い試料を磁界の方向に置くなどの工夫をします。
正解:B. 約1.7×10⁶ A/m
BCCの単位胞には原子が2個あるので、原子の数密度は n = 2/a³ = 2/(0.2866×10⁻⁹ m)³ ≈ 8.50×10²⁸ m⁻³ です。飽和磁化は単位体積あたりの磁気モーメントなので、Ms = n × 2.22 µB = 8.50×10²⁸ × 2.22 × 9.27×10⁻²⁴ ≈ 1.7×10⁶ A/m になります。µ₀Ms に直すと約2.2 Tで、鉄の飽和磁束密度の値とよく合います。約8.7×10⁵ A/m は単位胞の原子を1個と数えた値、約3.5×10⁶ A/m はFCCと同じ4個と数えた値です。原子1個あたりのモーメントが整数にならないのは、磁性を担う3d電子がバンドをつくっているためです。
飽和磁化Msは材料の磁気モーメントの密度で単位は A/m、飽和磁束密度Bsは飽和したときの磁束密度で単位は T です。B = µ₀(H + M) から Bs は µ₀Ms より µ₀H の分だけ大きくなりますが、その差は小さいので、ほぼ同じ意味で使われることもあります。
SI単位では A/m、CGS単位では emu/cm³ で、1 emu/cm³ = 1000 A/m です。磁束密度で表すときは µ₀Ms(T)、CGSでは 4πMs(G)を使い、1 T = 10000 G です。質量あたりの値は、A·m²/kg と emu/g で同じ数値になります。
組成と相が変わらなければ、ほとんど変わりません。ただし熱処理で析出物ができたり、相変態や規則化で別の相になったりすると、相ごとの値が違うので全体の飽和磁化も変わります。オーステナイト系ステンレス鋼が加工でマルテンサイトになり、磁石に付くようになるのがその例です。
飽和磁化は単位体積あたりの磁気モーメントなので、Ms = n × 2.22 µB = 8.50×10²⁸ × 2.22 × 9.27×10⁻²⁴ ≈ 1.7×10⁶ A/m になります。
鉄(BCC、格子定数0.2866 nm)の原子1個あたりの磁気モーメントを2.22 µB とする。すべてのモーメントが…さらに磁界を強めると、残った磁区の中の磁化そのものが磁界の方向へ回転し、飽和磁化に近づきます。
消磁状態の強磁性体に外部磁界をかけて徐々に強めたとき、磁化が進むしくみとして正しいものはどれか。巨視的には強磁性体と同じように磁区やヒステリシスを示しますが、飽和磁化は鉄などの強磁性金属より小さくなります。
マグネタイト(Fe₃O₄)などのフェライトが示すフェリ磁性の説明として正しいものはどれか。実測の飽和磁化から求めた値も約4.1 µB で、この見積もりとよく合います。
マグネタイト Fe₃O₄ は逆スピネル型で、Aサイト(四面体位置)にFe³⁺が1個、Bサイト(八面体位置)にFe³⁺と…パーマロイの飽和磁束密度は純鉄(約2.2 T)よりかなり低いので、飽和磁化が純鉄より大きいとする選択肢は誤りです。
Fe-約78%Niのパーマロイが、きわめて高い透磁率を示す主な理由はどれか。