最大エネルギー積とは

さいだいえねるぎーせき

永久磁石の減磁曲線上で、磁束密度Bと磁界Hの積の大きさが最大になる値(BH)max。単位はkJ/m³で、磁石の強さの指標になる。

「最大エネルギー積」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(磁性材料など)。

この用語の分野: 磁性材料

磁石の能力を表す理由

永久磁石は、ふつう空気のすき間(ギャップ)に磁界をつくるために使われます。漏れを無視すると、磁束密度 Bg、体積 Vg のギャップの磁界をつくるのに必要な磁石の体積は Vm = Bg²Vg/(µ₀|BH|) で、|BH| は磁石の動作点でのBとHの積の大きさです。つまり |BH| が大きい点で使えば磁石は小さくてすみ、その最大値が (BH)max です。単位は kJ/m³ のほか、CGS単位の MGOe も使われ、1 MGOe は約7.96 kJ/m³ です。磁石の小型化やモーターの出力を上げる議論で、最もよく比べられる値です。

動作点とパーミアンス係数

磁石の動作点は、減磁曲線と、磁石とギャップの形で決まる直線(パーミアンス線)の交点です。直線の傾きを表すパーミアンス係数 Pc = −B/(µ₀H) は、薄い板の磁石を厚さの方向に磁化した場合のように反磁界が大きいと小さくなります。減磁曲線が直線の理想的な磁石では、B = Br/2 となる点(Pc = 1)で |BH| が最大になり、(BH)max = Br²/(4µ₀) です。この式で上限を見積もると、Br = 1.6 T なら約510 kJ/m³(約64 MGOe)で、ネオジム磁石の主相 Nd₂Fe₁₄B の理論的な上限に近い値です。

(BH)maxだけで選べない理由

(BH)max は室温の値で示されることが多く、高温での性能や減磁しにくさは別の指標で見る必要があります。温度が上がると残留磁束密度と保磁力が下がり、固有保磁力 HcJ が小さい磁石では、逆磁界や高温で一部が不可逆に減磁します。そのため、(BH)max が大きくても、高温で使うモーターでは HcJ の大きいグレードを選びます。Sm-Co磁石は (BH)max ではネオジム磁石に及びませんが、温度による特性の変化が小さいので、高温の用途で使われます。価格、錆びやすさ、資源の供給も実際の選択を左右します。

値の移り変わり

(BH)max は、20世紀を通じて新しい磁石材料が出るたびに大きくなってきました。日本では本多光太郎のKS鋼(1917年)、三島徳七のMK鋼(1931年)が知られ、その後アルニコ、フェライト、Sm-Co磁石が登場しました。1982年には佐川眞人らがNd-Fe-B系の焼結磁石を開発し、現在の市販品には約400 kJ/m³ を超えるものもあります。典型的な値の目安は、フェライト磁石が約10〜40 kJ/m³、Sm-Co磁石が約130〜250 kJ/m³、ネオジム焼結磁石が約250〜440 kJ/m³ で、用途に応じて使い分けられています。

最大エネルギー積の練習問題に挑戦

減磁曲線が B = Br + µ₀H の直線になる(HcJ が十分に大きい)理想的な永久磁石で、残留磁束密度 Br = 1.40 T のとき、最大エネルギー積 (BH)max はどれに最も近いか。µ₀ = 4π×10⁻⁷ H/m とする。

  1. A約390 kJ/m³
  2. B約780 kJ/m³
  3. C約1560 kJ/m³
答えと解説を見る

正解:A. 約390 kJ/m³

第2象限の直線上でBとHの積の大きさ |BH| = (Br + µ₀H)(−H) は、H = −Br/(2µ₀)、B = Br/2 のときに最大になり、(BH)max = Br²/(4µ₀) です。数値を入れると 1.40²/(4 × 4π×10⁻⁷) = 1.96/(5.03×10⁻⁶) ≈ 3.9×10⁵ J/m³、約390 kJ/m³ になります(約49 MGOe)。約1560 kJ/m³ は直線の両端の Br と Br/µ₀ を掛けた値、約780 kJ/m³ は2で1回しか割らなかった値です。Nd₂Fe₁₄B の飽和磁化(約1.6 T)から同じ式で見積もった理論上の上限は約510 kJ/m³ で、市販の高性能なネオジム磁石はその8割前後(約400〜440 kJ/m³)に達しています。

よくある質問

MGOe と kJ/m³ はどう換算しますか?

1 MGOe は約7.96 kJ/m³ です。例えば 50 MGOe は約398 kJ/m³ で、kJ/m³ の値を約8で割るとおおよその MGOe になります。MGOe はCGS単位系のメガガウス・エルステッドで、今も磁石のカタログで広く使われています。

(BH)max が大きい磁石ほど強く吸い付きますか?

同じ形と大きさなら、一般に (BH)max の大きい磁石のほうが強い磁界をつくれます。ただし吸着力は、磁石の形、着磁の方向、相手の鉄の厚さや磁石とのすき間で大きく変わり、(BH)max だけでは決まりません。磁石を薄くすると反磁界で動作点が下がり、性能を引き出しきれないこともあります。

(BH)max は温度で変わりますか?

変わります。温度が上がると残留磁束密度が下がるので、(BH)max も小さくなります。ネオジム磁石は温度による低下が比較的大きく、Sm-Co磁石は小さいのが特徴です。さらに保磁力が足りないと高温で不可逆な減磁が起こるので、使用温度での減磁曲線で確かめます。

解説の中の「最大エネルギー積」

「最大エネルギー積」が出てくる問題(2問)

  1. 減磁曲線が B = Br + µ₀H の直線になる(HcJ が十分に大きい)理想的な永久磁石で、残留磁束密度 Br = 1.40 T のとき、最大エネルギー積 (BH)max はどれに最も近いか。µ₀ = 4π×10⁻⁷ H/m とする。
  2. 電気自動車のモーターなど高温で使うネオジム磁石に、DyやTbを加える主な目的はどれか。

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飽和磁化 キュリー温度 結晶磁気異方性 保磁力 渦電流損失 磁区 磁壁 超常磁性 フェリ磁性

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