アーチャードの摩耗式とは

あーちゃーどのまもうしき

摩耗体積Vが垂直荷重Wとすべり距離Lに比例し、硬さHに反比例するとする式 V = KWL/H。Kは摩耗係数で、摩耗の機構で大きく変わる。

「アーチャードの摩耗式」は、1分野の1問の練習問題に出てきます(表面処理とトライボロジーなど)。

この用語の分野: 表面処理とトライボロジー

式の考え方

アーチャードは、すべり合う2つの面の真実接触点が、すべりの間に一定の確率で摩耗粉を生むと考えました。真実接触面積は荷重Wを硬さHで割った値なので、接触点の数はW/Hに比例します。1つの接触点が入れ替わるまでにすべる距離は接触点の大きさ程度なので、すべり距離Lの間に摩耗粉ができる機会の数はLに比例します。これをまとめると、摩耗体積は V = KWL/H と書けます。無次元の摩耗係数Kは、接触点が摩耗粉になる確率の意味をもちます。

摩耗係数と比摩耗量

Kの値は、潤滑のない同種の金属どうしの凝着摩耗では10⁻⁴〜10⁻²程度と大きく、酸化膜で守られた穏やかな摩耗では10⁻⁶〜10⁻⁵程度、よく潤滑された条件では10⁻⁸〜10⁻⁶程度まで小さくなります。実用では、硬さを分けずに K/H をまとめた比摩耗量 k = V/(WL) を使うことも多く、単位はmm³/(N·m)で表します。比摩耗量は硬さを決めにくい樹脂や複合材料、被覆膜にも使えるので、耐摩耗性の比較によく使われます。数値を比べるときは、試験の方法と条件をそろえることが大切です。

使い方と限界

アーチャードの式は、摩耗が荷重とすべり距離に比例する穏やかな摩耗の領域で、寿命の見積もりや材料の比較に役立ちます。しかし、荷重や速度がある値を超えると、摩擦熱で酸化膜が壊れたり凝着が広がったりして、摩耗が桁違いに大きくなるシビア摩耗へ移ることがあります。また、使い始めのなじみの期間には摩耗の速さが変わります。そのため、Kは実際に使う条件に近い試験で求め、摩耗の様式が変わる境目を確かめてから式を使います。

アーチャードの摩耗式の練習問題に挑戦

ピン・オン・ディスク試験で、硬さ H = 2.0 GPa のピンに垂直荷重50 Nをかけて、すべり距離1.0 kmだけすべらせた。アーチャードの摩耗式 V = KWL/H で無次元の摩耗係数を K = 1.0×10⁻⁴ とするとき、ピンの摩耗体積と、荷重を2倍にしたときの摩耗体積の変化の組み合わせとして正しいものはどれか。

  1. A約2.5×10⁻³ mm³ で、荷重を2倍にすると約2倍になる
  2. B約2.5 mm³ で、荷重を2倍にすると約2倍になる
  3. C約2.5 mm³ で、見かけの接触面積が同じなら荷重を2倍にしても変わらない
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正解:B. 約2.5 mm³ で、荷重を2倍にすると約2倍になる

V = KWL/H = 1.0×10⁻⁴×50×1000/(2.0×10⁹) = 2.5×10⁻⁹ m³ = 2.5 mm³です。アーチャードの式は、真実接触面積 W/H に比例した数の接触点が、すべり距離に比例した回数だけ摩耗粉を生むと考えたもので、摩耗体積は荷重とすべり距離に比例し、硬さに反比例します。荷重を2倍にすると、見かけの接触面積が同じでも真実接触面積が2倍になるので、摩耗体積も約2倍になります。約2.5×10⁻³ mm³は、すべり距離を1000 mでなく1として計算した値です。Kは摩耗の機構や条件で10⁻⁸から10⁻²程度まで大きく変わるので、実験で求めます。

よくある質問

硬い材料ほど摩耗しにくいのはなぜですか。

硬い材料では、同じ荷重を支える真実接触面積が小さくなり、摩耗粉を生む接触点が減るからです。アブレシブ摩耗でも、表面が砂粒などより硬くなると削られにくくなります。ただし、硬くてもろい材料では、割れによる摩耗が起こることがあります。

見かけの接触面積を大きくすると摩耗は減りますか。

アーチャードの式では、摩耗体積は見かけの面積によりません。ただし、面積を大きくすると面圧と温度が下がり、穏やかな摩耗の領域にとどまりやすくなるので、実際には寿命が延びることがあります。同じ体積なら、面積が大きいほど摩耗の深さは浅くなります。

摩耗係数はどうやって測りますか。

ピン・オン・ディスク試験やボール・オン・ディスク試験で、荷重とすべり距離を決めてすべらせ、質量の減少や摩耗痕の形から摩耗体積を求めます。その体積を荷重とすべり距離で割ると比摩耗量が得られ、硬さを掛けると無次元の摩耗係数になります。

解説の中の「アーチャードの摩耗式」

「アーチャードの摩耗式」が出てくる問題(1問)

  1. ピン・オン・ディスク試験で、硬さ H = 2.0 GPa のピンに垂直荷重50 Nをかけて、すべり距離1.0 kmだけすべらせた。アーチャードの摩耗式 V = KWL/H で無次元の摩耗係数を K = 1.0×10⁻⁴ とするとき、ピンの摩耗体積と、荷重を2倍にしたときの摩耗体積の変化の組み合わせとして正しいものはどれか。

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