凝着摩耗とは

ぎょうちゃくまもう

真実接触点で金属どうしが結合し、すべりで凝着部がせん断されて、材料が相手に移ったりはがれたりする摩耗。焼付きの原因になる。

「凝着摩耗」は、1分野の1問の練習問題に出てきます(表面処理とトライボロジーなど)。

この用語の分野: 表面処理とトライボロジー

起こり方

金属の表面が真実接触点で強く押し付けられると、表面の酸化膜や吸着膜が破れて新しい金属どうしが触れ、原子の結合による凝着部ができます。すべりが続くとこの凝着部がせん断されますが、凝着部が母材より強いと、境目ではなく弱いほうの金属の内部でちぎれ、その小片が相手の面に移ります。移った小片は何度もこすられて大きくなり、やがてはがれて摩耗粉になります。アーチャードの式の摩耗係数は、潤滑のない同種の金属どうしでは10⁻⁴〜10⁻²程度と、酸化膜で守られたマイルド摩耗に比べて桁違いに大きな値になります。

マイルド摩耗とシビア摩耗

鋼どうしの乾燥したすべりでは、荷重やすべり速度を上げていくと、摩耗量が桁違いに増える境目があります。境目より下では、表面にできた酸化膜が金属どうしの接触を防ぎ、細かい酸化物の摩耗粉を出す穏やかなマイルド摩耗になります。境目を超えると、摩擦熱や大きな接触圧で酸化膜を保てなくなり、金属どうしの凝着が広がって、大きな金属の摩耗粉を出すシビア摩耗になります。シビア摩耗の面は荒れて、金属光沢のある移着物がつきます。さらに進むと、凝着部が広がって相手と一体化し、動かなくなる焼付きに至ります。

材料の組み合わせの影響

凝着は、同じ金属どうしや、互いによく固溶する金属どうしで起こりやすく、互いに固溶しにくい組み合わせでは起こりにくい傾向があります。ステンレス鋼、チタン合金、アルミニウム合金は凝着しやすく、ねじを締めるときにかじって動かなくなることがあります。こすれて表面の薄い保護膜が破れると、活性な金属の面がすぐに現れるためと考えられています。真空の中では酸化膜が再生しないので、清浄な金属どうしが常温でも接合してしまうことがあり、宇宙で使う機構では大きな問題になります。軸受に、鋼の相手として銅合金やすずを主とする合金を使うのも、凝着しにくい組み合わせを選んだものです。

防ぎ方と評価

凝着摩耗を防ぐ基本は、金属どうしが直接触れないようにすることです。潤滑油で面を隔てるほか、すべりやすい吸着膜をつくる油性剤や、高い面圧のもとで金属の表面と反応して硫化物やりん化物の膜をつくる極圧添加剤が使われます。材料の面では、窒化処理や硬質膜の被覆、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)のように、凝着しにくい表面にする方法があります。評価には、ピン・オン・ディスク試験で摩耗量と摩擦係数を測るほか、荷重を段階的に上げて焼付きが起こる荷重を求める試験も使われます。

凝着摩耗の練習問題に挑戦

次の摩耗のしくみの説明のうち、凝着摩耗にあたるものはどれか。

  1. A硬い粒子や相手面の硬い突起が、軟らかい表面をひっかいて削り取る
  2. B転がり接触などで繰り返しかかる接触応力によって表面の下にき裂ができ、表層が小片となってはがれる
  3. C真実接触点で金属どうしが強く結合し、すべりで凝着部がせん断されるときに、片方の材料が相手に移ったりはがれたりして摩耗粉になる
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正解:C. 真実接触点で金属どうしが強く結合し、すべりで凝着部がせん断されるときに、片方の材料が相手に移ったりはがれたりして摩耗粉になる

凝着摩耗は、真実接触点で表面の原子どうしが結合(微小な溶着)し、すべりで凝着部がせん断されるときに、弱いほうの側から材料がちぎれて相手に移着し、やがてはがれて摩耗粉になる摩耗です。清浄な同種の金属どうしで激しく、ひどい場合は焼付きに至ります。互いに固溶しにくい金属の組み合わせや、潤滑剤、酸化膜で凝着を減らせます。硬い粒子や突起が表面を削るのはアブレシブ摩耗、繰り返しの接触応力で表面の下からき裂が進んではがれるのは、軸受や歯車で起こる疲労摩耗(ピッチングやはく離)です。実際の摩耗では、これらの機構が同時に働くことも多くあります。

よくある質問

かじりと焼付きは同じものですか。

どちらも凝着によるものですが、かじりは、すべり面で凝着と移着が起こって表面がむしれるように荒れる損傷を、焼付きは、凝着が広がって摩擦と発熱が急に増え、相手と固着して動かなくなる状態を指すことが多い言葉です。かじりが進むと焼付きに至ります。

同じ金属どうしをこすり合わせるのは、なぜよくないのですか。

結晶の構造や原子の結合のしかたが同じなので、真実接触点で強い凝着部ができやすいからです。そのため、すべり合う部品では、違う種類の材料を組み合わせたり、片方に表面処理や被膜を施したりします。

凝着摩耗とアブレシブ摩耗は、摩耗した面でどう見分けますか。

凝着摩耗では、面がむしれたように荒れ、相手の材料が移着した跡が見られます。アブレシブ摩耗では、すべりの向きに平行な細い溝やひっかき傷が並びます。実際には両方が同時に起こることも多いので、摩耗粉の形や成分も合わせて調べます。

解説の中の「凝着摩耗」

「凝着摩耗」が出てくる問題(1問)

  1. 次の摩耗のしくみの説明のうち、凝着摩耗にあたるものはどれか。

関連する用語

アブレシブ摩耗 アーチャードの摩耗式 真実接触面積 浸炭 ストライベック曲線 窒化処理 無電解ニッケルめっき

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