アブレシブ摩耗とは

あぶれしぶまもう

硬い粒子や相手面の硬い突起が、軟らかい表面をひっかいて削り取る摩耗。表面を粒子より硬くすると大きく減る。

「アブレシブ摩耗」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(表面処理とトライボロジーなど)。

この用語の分野: 表面処理とトライボロジー

2元と3元のアブレシブ摩耗

アブレシブ摩耗には、相手の面の硬い突起や固定された砥粒が表面をひっかく2元アブレシブ摩耗と、2つの面の間に入り込んだ硬い粒子が転がったりすべったりしながら表面を削る3元アブレシブ摩耗があります。やすりや研削の砥石によるものは2元、潤滑油に混じった砂やごみ、摩耗粉が軸受の中で面を傷つけるのは3元の例です。3元では粒子が転がる時間が長く、削る効率が下がるので、摩耗量は2元より1桁程度小さいことが多くあります。潤滑油のろ過やシールで硬い粒子を入れないことが、3元の摩耗を防ぐ基本です。

削り方の違い

硬い粒子が表面をひっかくとき、材料の除かれ方には、溝の両脇に材料を押しのけて盛り上げる掘り起こし、切りくずのように材料を削り取る切削、もろい材料で割れによって欠け落ちる微小な割れの3つがあります。粒子の角が鋭く、面に対して立った角度で当たるほど切削になりやすく、摩耗量が増えます。掘り起こしでは、盛り上がった部分が何度もこすられて疲労ではがれるまで、材料はすぐには失われません。延性のある金属では掘り起こしと切削が、セラミックスのようなもろい材料では割れによる摩耗が主になります。

硬さと組織による対策

アブレシブ摩耗を減らす基本は表面を粒子より硬くすることですが、硬さだけで決まるわけではありません。高クロム鋳鉄のように硬い炭化物を含む材料では、炭化物の大きさや量が大切で、炭化物が粒子のつくる溝の幅より小さいと、周りの軟らかい基地ごと削られてしまいます。逆に、炭化物が大きく、基地がそれをしっかり支えていれば、粒子は炭化物に当たって止まります。また、硬くてもろい材料では、大きな衝撃を伴う摩耗で割れや欠けが起こるので、衝撃の大きい用途では靭性との兼ね合いを考えて材料を選びます。

評価と利用

アブレシブ摩耗の評価には、ゴムの車輪と試験片の間に乾いた砂を流して摩耗量を測る試験(ASTM G65)や、研磨紙の上で試験片をすべらせる試験などが使われます。土砂を扱う建設機械や鉱山の機械、農機具、粉体の輸送管などでは、アブレシブ摩耗が部品の寿命を決めることが多くあります。一方、研削や研磨、ラッピングは、アブレシブ摩耗の仕組みを積極的に使った加工です。砥粒の大きさや硬さ、押し付ける力を選ぶことで、削る速さと仕上がりの面の粗さを調整しています。

アブレシブ摩耗の練習問題に挑戦

石英の砂粒(硬さ約1000 HV)を含む土砂でこすられる建設機械の部品で、アブレシブ摩耗を減らす材料の選び方として正しいものはどれか。

  1. A表面の硬さを砂粒の硬さと同じ程度以上に高めると、砂粒が表面に食い込みにくくなり、摩耗が大きく減る
  2. B焼入れした鋼のマルテンサイトは石英より硬いので、焼入れするだけで摩耗はほとんど起こらなくなる
  3. Cアブレシブ摩耗の量はすべり距離だけで決まり、表面の硬さにはよらない
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正解:A. 表面の硬さを砂粒の硬さと同じ程度以上に高めると、砂粒が表面に食い込みにくくなり、摩耗が大きく減る

砂粒が表面をひっかいて削るには、砂粒の硬さHaが表面の硬さHsのおよそ1.2倍以上必要だとされ、Hsを高めてHs/Haがおよそ0.8を超えると、摩耗は急に小さくなることが経験的に知られています。砂粒が表面に食い込めず、逆に砂粒の角がつぶれるためです。そのため、石英より硬いCr炭化物(約1200〜1800 HV)を多く含む高クロム鋳鉄や、WCを含む肉盛り溶接、セラミックスの被覆などが使われます。焼入れした鋼のマルテンサイトは高炭素でも900 HV前後で、石英と同程度かそれより軟らかく、耐摩耗性は上がるものの摩耗がなくなるわけではありません。摩耗の量はすべり距離に比例しますが、硬さの影響も大きく、硬さによらないわけではありません。

よくある質問

アブレシブ摩耗を減らすには、表面を硬くすれば十分ですか。

硬さは最も大切な因子ですが、それだけでは十分でないことがあります。硬い相の大きさや分布、基地の強さ、衝撃に対する靭性も影響し、もろい材料は衝撃で欠けます。粒子の硬さ、大きさ、当たり方など、使う条件に合わせて材料を選びます。

エロージョンとアブレシブ摩耗はどう違いますか。

エロージョンは、流体に乗った粒子が表面に衝突して材料を削る摩耗で、粒子が面に押し付けられてすべるアブレシブ摩耗とは、力のかかり方が違います。エロージョンでは粒子の当たる角度の影響が大きく、延性材料は浅い角度で、もろい材料は垂直に近い角度で摩耗が大きくなります。

アブレシブ摩耗の摩耗量はどう見積もりますか。

アーチャードの式と同じ形の V = KWL/H で、荷重とすべり距離に比例し、硬さに反比例すると見積もります。粒子を円すいとみなすと、K は粒子の角の鋭さで決まり、鋭いほど大きくなります。実際の K は条件で大きく変わるので、試験で求めます。

解説の中の「アブレシブ摩耗」

「アブレシブ摩耗」が出てくる問題(2問)

  1. 石英の砂粒(硬さ約1000 HV)を含む土砂でこすられる建設機械の部品で、アブレシブ摩耗を減らす材料の選び方として正しいものはどれか。
  2. 次の摩耗のしくみの説明のうち、凝着摩耗にあたるものはどれか。

関連する用語

マルテンサイト 凝着摩耗 アーチャードの摩耗式 真実接触面積 浸炭 ストライベック曲線 窒化処理 無電解ニッケルめっき

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