XPS(X線光電子分光法)とは
えっくすぴーえす
X線で放出される光電子の結合エネルギーから、表面の数nmに含まれる元素とその化学結合の状態(酸化数など)を調べる分析法。
「XPS(X線光電子分光法)」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(材料分析(SEM・TEM・XRD・XPS)など)。
この用語の分野: 材料分析(SEM・TEM・XRD・XPS)
えっくすぴーえす
X線で放出される光電子の結合エネルギーから、表面の数nmに含まれる元素とその化学結合の状態(酸化数など)を調べる分析法。
「XPS(X線光電子分光法)」は、1分野の2問の練習問題に出てきます(材料分析(SEM・TEM・XRD・XPS)など)。
この用語の分野: 材料分析(SEM・TEM・XRD・XPS)
XPSでは、Al Kα線(1486.6 eV)などのX線を試料に当て、光電効果で飛び出した電子の運動エネルギー E_K を測ります。結合エネルギーは E_B = hν − E_K − φ(φ は分光器の仕事関数)で求まり、元素と内殻の準位ごとに決まった値をとるので、ピークの位置から元素がわかります。例えば酸化物のO 1sは約530 eVなので、Al Kα線では約950 eVの運動エネルギーで現れます。2p や 3d の準位はスピン軌道相互作用で2本に分かれ、2p₃/₂ と 2p₁/₂ の面積はおよそ2:1になります。
X線そのものは試料の深くまで入りますが、光電子は試料の中で非弾性散乱を受けやすく、エネルギーを失わずに出てこられるのは表面の近くで生まれたものだけです。光電子の非弾性平均自由行程 λ は、運動エネルギーが数百〜千数百eVの範囲で1〜3 nm程度で、検出される信号の約95%は深さ3λ以内から来ます。試料を傾けて、表面の法線から測った取り出し角θを大きくすると、分析の深さは3λcosθに浅くなります。これを使って、薄い酸化膜の厚さや深さ方向の組成の違いを、試料を壊さずに調べられます。
同じ元素でも、まわりの原子に電子を引き寄せられて正に帯びると、内殻の電子が強く束縛され、結合エネルギーが高い側へずれます。これが化学シフトで、Si 2pでは元素状のSiの約99 eVに対してSiO₂は約103 eVです。ずれは数eV程度と小さいので、重なったピークを成分ごとに分ける波形の分離がよく行われます。絶縁物では光電子が抜けた分だけ表面が正に帯電し、ピーク全体が高い側にずれるので、低エネルギーの電子を当てて中和し、表面の汚染炭素のC 1s(約284.8 eV)を基準に補正します。
XPSはHとHe以外のすべての元素を検出でき、検出の下限は元素によりおよそ0.1〜1 at%です。分析には超高真空が必要で、分析する領域の大きさは、装置と条件によって約10 µmから1 mm程度まで幅があります。深さ方向の分布はArイオンで削りながら測りますが、イオンの照射で酸化物が還元されたり、特定の元素が選択的に削られたりして、化学状態や組成が変わることがあります。有機物では、損傷の少ないアルゴンのガスクラスターイオンが使われます。より微小な領域を調べたいときは、電子線で励起するオージェ電子分光(AES)と使い分けます。
正解:B. 検出深さは数nm程度で、ピークの化学シフトから元素の結合状態(酸化数など)がわかる
XPSでは、入射X線そのものは試料の数µmまで届きますが、生じた光電子は非弾性散乱でエネルギーを失いやすく、元のエネルギーのまま表面から出てこられるのは深さ数nm以内で発生したものだけです。そのため最表面の数nmを調べる分析法になります。光電子の結合エネルギーは原子の化学状態でわずかに変わり(化学シフト)、例えばSi 2pでは元素状のSiに比べてSiO₂は約4 eV高くなるので、酸化の有無や酸化数を区別できます。深さ方向の分布は、Arイオンで削りながら測るか、光電子の取り出し角を変えて調べます。深さ数µmの平均組成を調べるのは、SEMのEDSなどの役割です。
正解:C. 約103.3 eV
光電効果のエネルギー保存から、結合エネルギーは E_B = hν − E_K − φ = 1486.6 − 1378.8 − 4.5 = 103.3 eV です。Si 2pの結合エネルギーは元素状のSiで約99 eVなので、約4 eV高いこの値はSiO₂(Si⁴⁺)に典型的な値で、表面が酸化されていると判断できます。約107.8 eV は仕事関数を引き忘れた値、約112.3 eV は仕事関数を引くべきところで足した値です。絶縁物の測定では帯電でピークがずれるので、表面の汚染炭素のC 1sピーク(約284.8 eV)を基準にして結合エネルギーを補正することがよくあります。
同じ分析法です。ESCA(electron spectroscopy for chemical analysis)は化学状態がわかることを強調した呼び名で、今はXPSと呼ぶのが一般的です。
測れません。水素とヘリウムは内殻の電子をもたず、光電子を出す確率(光イオン化の断面積)も非常に小さいためです。水素の分布はSIMSなどで調べます。
XPSはX線で出た光電子を測り、表面の数nmの元素と化学状態がわかります。EDSは電子線で出た特性X線を測り、µm程度の深さまでの元素の組成がわかりますが、化学状態はほとんどわかりません。
XPSでは、入射X線そのものは試料の数µmまで届きますが、生じた光電子は非弾性散乱でエネルギーを失いやすく、元のエネルギーのまま表面から出てこられるのは深さ数nm以内で発生したものだけです。
XPS(X線光電子分光法)の検出深さと、それで得られる情報として正しいものはどれか。SEM(走査電子顕微鏡) EDS(エネルギー分散型X線分光法) XRD(X線回折) シェラーの式 SIMS(二次イオン質量分析法) 消滅則 ブラッグの法則