EDS(エネルギー分散型X線分光法)とは

いーでぃーえす

電子線で励起された特性X線のエネルギーを半導体検出器で測り、元素を分析する方法。全元素を同時に短時間で測れるが、分解能はWDSより低い。

「EDS(エネルギー分散型X線分光法)」は、1分野の3問の練習問題に出てきます(材料分析(SEM・TEM・XRD・XPS)など)。

この用語の分野: 材料分析(SEM・TEM・XRD・XPS)

測れるしくみと特性X線

電子線が原子の内殻の電子をはじき出すと、外側の殻の電子が空いた準位に落ち、そのエネルギーの差が元素に固有の特性X線として放出されます。EDSでは、このX線を半導体検出器に入れ、生じた電子・正孔の対の数からエネルギーを測ります。今はシリコンドリフト検出器(SDD)が主流で、液体窒素での冷却がいらず、高い計数率で測れます。内殻を励起するには、加速電圧が吸収端のエネルギー(臨界励起エネルギー)より十分高い必要があり、目安としてその2倍程度以上の電圧を選びます。

分解能と重なりやすいピーク

EDSのエネルギー分解能は、Mn Kα(5.9 keV)の半値幅で約125〜130 eV程度です。差がこれより小さいピークは分けにくく、例えば S Kα(2.307 keV)とMo Lα(2.293 keV)は14 eV、BaTiO₃ のTi Kα(4.511 keV)とBa Lα(4.466 keV)は45 eVしか離れていません。装置に特有の偽のピークにも注意が必要で、シリコンの検出器では本来のピークより1.74 keV低い位置にエスケープピークが、計数率が高すぎると2つのX線のエネルギーの和の位置にサムピークが現れます。

どこまで分析しているか: 空間分解能

バルクの試料では、入射した電子が試料の中で散乱しながら広がるので、X線はビーム径よりずっと大きな領域から出ます。金山・岡山の式で電子の侵入深さを見積もると、加速電圧20 kVで鉄は約1.6 µm、アルミニウムは約4 µmです。そのため、1 µmより小さな析出物を点分析すると、まわりの母相の元素も一緒に検出されます。加速電圧を10 kVに下げると鉄で約0.5 µmに小さくなりますが、励起できるX線が限られます。TEMの薄い試料なら広がりが小さく、nmの領域を分析できます。

定量の精度と苦手な元素

EDSの定量は、ピークの強度を原子番号・吸収・蛍光の効果で補正するZAF補正などで行います。平らに研磨した試料で標準試料を使えば数%の相対誤差で求められることがありますが、凹凸のある破面や粒子では誤差が大きくなります。検出の下限はおおむね0.1 wt%程度で、それより少ない元素はWDSやSIMSで測ります。通常の装置ではH、He、Liは検出できず、B、C、N、Oなどの軽元素は感度が低く吸収の補正も大きいので、半定量の値として扱うのが無難です。表面の炭素の汚れも炭素の値を押し上げます。

EDS(エネルギー分散型X線分光法)の練習問題に挑戦

SEMやEPMAで特性X線を分析するEDS(エネルギー分散型)とWDS(波長分散型)の比較として正しいものはどれか。

  1. A分光結晶を使わないぶんEDSのほうがエネルギー分解能が高く、ピークの重なりを分離しやすい
  2. BWDSのほうがエネルギー分解能が高く、EDSは多くの元素を同時に短時間で測定できる
  3. CWDSは分光結晶を動かさずに1つの検出器で全元素を同時に測るので、EDSより測定が速い
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正解:B. WDSのほうがエネルギー分解能が高く、EDSは多くの元素を同時に短時間で測定できる

EDSは半導体検出器でX線のエネルギーを直接測るので、すべての元素のピークを同時に短時間で取得でき、SEMに手軽に取り付けられます。ただしエネルギー分解能は約130 eV程度で、Si KαとW Mα、S KαとMo Lαのように近いピークを分離しにくい欠点があります。WDSは分光結晶でのブラッグ反射で波長を選ぶので、分解能が約10 eV程度と1桁高く、微量元素の検出や定量の精度にも優れますが、分光結晶の角度を元素ごとに走査するので時間がかかります。EDSのほうが分解能が高いとする選択肢と、WDSのほうが速いとする選択肢は、両者の特徴を入れ替えています。

よくある質問

EDSとEDXは同じですか?

同じ分析法です。EDS、EDX、EDXSなどは略し方が違うだけで、どれもエネルギー分散型のX線分析(energy-dispersive X-ray spectroscopy)を指します。

EDSとWDSはどう使い分けますか?

多くの元素を短時間で調べる定性分析や元素のマッピングにはEDS、ピークの重なりを分けたいときや微量元素の精密な定量にはWDSを使うのが一般的です。

EDSで化学状態(酸化数)はわかりますか?

ほとんどわかりません。特性X線のエネルギーは内殻の準位の差で決まり、化学結合による変化は分解能よりずっと小さいからです。結合状態を調べるにはXPSなどを使います。

解説の中の「EDS(エネルギー分散型X線分光法)」

「EDS(エネルギー分散型X線分光法)」が出てくる問題(3問)

  1. SEMやEPMAで特性X線を分析するEDS(エネルギー分散型)とWDS(波長分散型)の比較として正しいものはどれか。
  2. XPS(X線光電子分光法)の検出深さと、それで得られる情報として正しいものはどれか。
  3. 半導体の故障解析で、ドーパントの深さ方向の濃度分布をppm〜ppbレベルの感度で調べるのに最も適した手法はどれか。

関連する用語

SEM(走査電子顕微鏡) XPS(X線光電子分光法) SIMS(二次イオン質量分析法) XRD(X線回折) シェラーの式 消滅則 ブラッグの法則

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