熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違い:構造・耐熱性・成形・リサイクルを比較

熱可塑性樹脂は、鎖状の分子が分子間力でまとまっているだけなので、加熱すると溶けて流れ、冷やすと固まり、何度でも成形し直せます。熱硬化性樹脂は、成形のときの硬化反応で分子どうしが共有結合でつながった3次元の網目になるので、一度固まると加熱しても溶けません。そのため、大量に作る容器・フィルム・部品やリサイクルのしやすさには熱可塑性樹脂、耐熱性・寸法安定性・電気絶縁性が要る基板・封止材・CFRPの母材には熱硬化性樹脂が向きます。日本の樹脂生産量の約9割は熱可塑性樹脂です。

項目熱可塑性樹脂熱硬化性樹脂
分子のつながり方線状や枝分かれの鎖状の分子が、分子間力でまとまっている主剤と硬化剤などの反応で、分子どうしが共有結合で架橋した3次元の網目
加熱したとき軟化・溶融して流れ、冷やすと固まる。何度でも繰り返せる一度硬化すると溶けない。Tgを超えると弾性率が1〜2桁下がって軟らかくなり、さらに加熱すると溶ける前に分解する
成形のしかた溶かした樹脂を型に入れ、冷やして固める。射出成形、押出し、ブロー成形など流れる状態の材料を型の中で硬化反応させる。射出成形では加熱筒を約100℃以下に保ち、170〜180℃前後に加熱した金型の中で硬化させる
耐熱性を決めるもの非晶性の樹脂はTg、結晶性の樹脂は融点Tmで、使える温度の上限の目安になる。例えばPSのTgは約100℃架橋の密度と硬化の程度。エポキシ樹脂のTgは、硬化剤と硬化の条件で100℃前後から200℃を超えるものまである
溶剤に対して溶剤に溶けるものが多い。ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネートなどの非晶性の樹脂は、結晶性の樹脂より溶剤に弱く、応力がかかった状態で溶剤に触れると割れる(ソルベントクラック)ことがある架橋しているので溶けず、膨潤するだけ
リサイクル加熱して成形し直せるので、マテリアルリサイクルしやすい。ペットボトルを繊維やシートにするなど溶かして成形し直せない。粉砕して充填材にするか、熱で回収するか、熱分解・化学分解で繊維などを取り出す
日本の生産量(2024年、プラスチック循環利用協会の資料)樹脂生産量853万tのうち約91%約74万tで、約8.7%
代表的な樹脂ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、PET、ポリカーボネート、ナイロンエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂
主な用途包装フィルム、レジ袋、容器、ペットボトル、文房具、家電や自動車の樹脂部品ガラスエポキシのプリント基板(FR-4)、半導体の封止材、接着剤、塗料、メラミンの食器、電気部品
炭素繊維の複合材料の母材としてCFRTP(母材に6ナイロンなど)。熱プレスで成形でき、破砕して再成形する研究が進んでいるCFRPの母材の主流はエポキシ樹脂。リサイクルでは、樹脂を熱分解して炭素繊維だけを回収する方法が中心

数値は代表的な目安で、世代や製品によって異なります。

どんなときに使うか

熱可塑性樹脂を選ぶとき
同じ形の製品を大量に作る、使い終わったら回収して作り直したいとき。ペットボトル、食品の容器や包装フィルム、家電の筐体、自動車の内装部品など。熱で溶かして溶着(レーザー溶着など)や再成形ができるのも利点です。
熱硬化性樹脂を選ぶとき
加熱しても溶けない耐熱性、寸法の安定性、電気絶縁性、強い接着力が要るとき。プリント基板、半導体の封止材、CFRPの母材、構造用の接着剤、電気製品の部品など。
Tgを確かめて選ぶ
どちらの樹脂も、Tgを超えると弾性率が大きく下がります。熱硬化性樹脂でも溶けないだけで、Tgより上では軟らかくなるので、使う温度とTgの関係を確かめて選びます。

よくある質問

熱硬化性樹脂は加熱すると軟らかくなりますか?

溶けて流れることはありませんが、ガラス転移温度Tgを超えると弾性率が1〜2桁下がり、ゴム状に軟らかくなります。さらに加熱すると、溶ける前に分解します。耐熱性はTgで判断するのがふつうで、エポキシ樹脂のTgは硬化剤と硬化の条件で100℃前後から200℃を超えるものまであります。

熱硬化性樹脂はリサイクルできないのですか?

溶かして成形し直すことはできませんが、粉砕して充填材にする、燃やして熱を回収する、熱分解や化学分解で繊維などを取り出すといった方法があります。CFRPでは樹脂を熱分解して炭素繊維を回収する方法が中心で、加熱で結合を組み替えられるビトリマーの研究も進んでいます。

ペットボトルは熱可塑性樹脂ですか?

はい。PETは熱可塑性樹脂で、加熱すると軟化し、溶かして繊維やシート、ボトルに作り直せます。ボトルは延伸ブロー成形で分子鎖を引きそろえて結晶化させ、透明のまま強さとガスバリア性を高めています。

熱硬化性樹脂は加熱しないと固まらないのですか?

そうとは限りません。名前は加熱で硬化して元に戻らないことに由来しますが、室温で硬化する2液性のエポキシ接着剤や、紫外線で硬化する樹脂もあります。共通点は、硬化したあとに架橋した網目になることです。

理解度チェック

熱硬化性樹脂の特徴として正しいものはどれか。

  1. A加熱すると軟化・溶融し、冷やせば固まるので何度でも成形し直せる
  2. B分子鎖が3次元の網目状に架橋しており、硬化後は加熱しても溶融しない
  3. C分子鎖が直鎖状で架橋がなく、硬化後も溶剤に溶けやすい
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正解:B. 分子鎖が3次元の網目状に架橋しており、硬化後は加熱しても溶融しない

エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂は、硬化反応で分子鎖どうしが化学結合(架橋)して3次元の網目構造になります。そのため硬化後は加熱しても溶融せず、高温では流動する前に分解します。寸法安定性、耐熱性、耐溶剤性に優れ、半導体の封止材、プリント基板、CFRPの母材などに使われます。加熱で軟化・溶融して何度でも成形し直せるのは、ポリエチレンやPETなどの熱可塑性樹脂の特徴です。熱可塑性樹脂は直鎖状や分岐状の分子鎖で架橋がなく、溶剤に溶けるものも多くあります。熱硬化性樹脂は、リサイクルが難しい点が課題です。

結晶性高分子(半結晶性高分子)のガラス転移温度Tgと融点Tmについての説明として正しいものはどれか。

  1. ATgはTmより高い
  2. BTgは非晶部の分子鎖の運動が凍結・解放される温度で、Tmより低い
  3. CTgは結晶部が融解する温度で、結晶をもたない非晶性高分子には存在しない
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正解:B. Tgは非晶部の分子鎖の運動が凍結・解放される温度で、Tmより低い

結晶性高分子は結晶部と非晶部からなります。Tgは非晶部の分子鎖のセグメント運動が凍結されたり解放されたりする温度で、Tgより下では硬いガラス状、上ではゴム状になります。Tmは結晶部が融解する温度で、TgはTmより必ず低く、多くの高分子で Tg/Tm(絶対温度の比)は約0.5〜0.8です。例えばPETはTgが約70〜80℃、Tmが約260℃です。結晶部の融解を表すのはTmのほうで、ポリスチレンのような非晶性高分子にはTmはありませんが、Tgはあります。ポリエチレンのようにTgが室温より低い高分子は、室温で非晶部がゴム状なので、しなやかです。

ポリ塩化ビニル(PVC)に可塑剤を加えると、ガラス転移温度Tgと材料の性質はどうなるか。

  1. ATgが上がり、室温で硬くもろくなる
  2. BTgが下がり、室温で軟らかくなる
  3. CTgは変わらず、結晶の融点だけが下がる
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正解:B. Tgが下がり、室温で軟らかくなる

可塑剤は分子鎖のあいだに入り込んで分子鎖どうしの相互作用を弱め、自由体積を増やすので、セグメント運動が起こりやすくなってTgが下がります。硬質PVCのTgは約80℃ですが、可塑剤を加えるとTgが室温より低くなり、ホースや電線の被覆に使われる軟質PVCになります。Tgを上げて硬くするのは、架橋の導入、剛直な芳香環の導入、分子量の増大などです。PVCは結晶化度が低く、可塑剤の効果は主に非晶部のTgの低下として現れるので、融点だけが下がるのではありません。可塑剤が時間とともに表面へしみ出すと、材料が硬くなったり周囲を汚したりします。

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関連する用語の解説

熱硬化性樹脂
硬化反応で3次元の網目構造をつくり、硬化後は加熱しても溶融しない樹脂。エポキシ樹脂やフェノール樹脂など。
ガラス転移温度
非晶質の物質や高分子の非晶部で、分子や原子の運動が凍結され、ガラス状とゴム状(過冷却液体)が切り替わる温度。Tgと書く。
結晶化度
結晶性高分子の中で結晶部が占める割合。密度、DSCの融解熱、XRDなどから求め、高いほど密度・弾性率が上がり透明性は下がる。
CFRP(炭素繊維強化プラスチック)
炭素繊維をエポキシ樹脂などで固めた複合材料。密度が小さくヤング率と強度が高いので比剛性に優れ、航空機や自動車、スポーツ用品に使われる。

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