カーボンナノチューブとは

かーぼんなのちゅーぶ

グラフェンを筒状に巻いた直径約1 nm〜数十nmの炭素の材料。巻く向き(カイラル指数)で金属的にも半導体的にもなり、軸方向の強さが非常に高い。

「カーボンナノチューブ」は、1分野の3問の練習問題に出てきます(ナノ材料など)。

この用語の分野: ナノ材料

構造とカイラル指数

カーボンナノチューブ(CNT)は、炭素原子がsp²結合で六角形に並んだグラフェンを、継ぎ目なく円筒状に巻いた構造をもちます。1層だけの単層CNTと、同心円状に何層も重なった多層CNTがあり、多層CNTの層の間隔はグラファイトに近い約0.34 nmです。巻く向きは、円周にあたるカイラルベクトル Ch = na₁ + ma₂ の整数の組(n, m)で表され、n = m をアームチェア型、m = 0 をジグザグ型、それ以外をカイラル型と呼びます。直径は d = a√(n² + nm + m²)/π(a = 0.246 nm)で計算でき、単層CNTでは約1〜2 nmのものが多くなります。

電気的な性質

単層CNTの電子状態は、グラフェンのバンドのうち、円周方向に定在波として許される波数だけが残ることで決まります。グラフェンの伝導帯と価電子帯が接するK点を許される波数の線が通るとき、つまり n − m が3の倍数のときは金属的、そうでないときは半導体的になります。アームチェア型はすべて金属的です。半導体的なCNTのバンドギャップはおおよそ直径に反比例し、直径1 nm程度で0.数〜1 eV程度になります。ふつうの合成では金属的なものと半導体的なものが混ざってできるので、トランジスタなどへの応用では分離や選択的な成長が課題になります。

機械的・熱的な性質と用途

CNTの軸方向は強いsp²結合だけでつながっているので、ヤング率は約1 TPa、引張強さは数十GPaと非常に高く、密度は約1.3〜2 g/cm³と小さい材料です。軸方向の熱伝導率も高い値を示します。こうした性質を生かして、樹脂やゴムに少量加えて導電性や強度を高める複合材料、リチウムイオン電池の電極の導電助剤、透明導電膜、配線材料などに使われています。ただし、1本のCNTの優れた性質を、束や糸、複合材料のような大きな材料で引き出すには、分散や配向、CNTどうしの荷重の伝達を工夫する必要があります。

カーボンナノチューブの練習問題に挑戦

単層カーボンナノチューブの電子的な性質は、グラフェンを巻く向きを表すカイラル指数(n, m)で決まり、n − m が3の倍数なら金属的、そうでなければ半導体的になる。次のうち金属的なものはどれか。

  1. A(6, 6)のアームチェア型
  2. B(10, 0)のジグザグ型
  3. C(7, 5)のカイラル型
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正解:A. (6, 6)のアームチェア型

単層カーボンナノチューブは、グラフェンの1枚をカイラルベクトル Ch = na₁ + ma₂ が円周になるように巻いた円筒です。グラフェンのバンドが接するK点を通る波数がチューブの周方向に許されるかどうかで、金属的か半導体的かが決まり、その条件が n − m = 3の倍数です。(6, 6)は n − m = 0 なので金属的で、n = m のアームチェア型はすべて金属的です。(10, 0)は n − m = 10、(7, 5)は n − m = 2 で、どちらも3の倍数ではないので半導体的です。ジグザグ型(m = 0)は n が3の倍数のときだけ金属的になります。カイラル指数をランダムに選ぶと、およそ3分の1が金属的、3分の2が半導体的になります。

単層カーボンナノチューブの直径は、グラフェンの格子定数 a = 0.246 nm を使って d = a√(n² + nm + m²)/π で表される。カイラル指数(10, 10)のナノチューブの直径はどれに最も近いか。

  1. A約0.78 nm
  2. B約1.36 nm
  3. C約4.26 nm
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正解:B. 約1.36 nm

n² + nm + m² = 100 + 100 + 100 = 300 なので、√300 ≈ 17.32 です。カイラルベクトルの長さ(円周)は 0.246 × 17.32 ≈ 4.26 nm で、これをπで割ると直径は d ≈ 1.36 nm になります。約4.26 nm はπで割るのを忘れて円周を直径とした値です。約0.78 nm は、格子定数 a = 0.246 nm の代わりに C–C結合の長さ 0.142 nm を使った値で、a = √3 × 0.142 nm の関係を取り違えています。(10, 10)はアームチェア型なので金属的です。単層カーボンナノチューブの直径は多くが約1〜2 nmです。

よくある質問

カーボンナノチューブはどうやってつくるのですか?

アーク放電やレーザー蒸発のほか、量産には鉄やコバルトなどの触媒の微粒子から炭化水素を分解して成長させる化学気相成長(CVD)法が主に使われます。触媒の粒径でCNTの直径をある程度制御できます。

(n, m)をランダムに選ぶと、金属的なものはどのくらいの割合ですか?

n − m が3の倍数になるのはおよそ3分の1なので、約3分の1が金属的、約3分の2が半導体的になります。

多層カーボンナノチューブも半導体になりますか?

多層CNTには金属的な層と半導体的な層が混ざり、外側の太い層ではバンドギャップが小さくなるので、全体としては金属的な電気伝導を示すのがふつうです。

解説の中の「カーボンナノチューブ」

「カーボンナノチューブ」が出てくる問題(3問)

  1. 単層カーボンナノチューブの電子的な性質は、グラフェンを巻く向きを表すカイラル指数(n, m)で決まり、n − m が3の倍数なら金属的、そうでなければ半導体的になる。次のうち金属的なものはどれか。
  2. 単層カーボンナノチューブの直径は、グラフェンの格子定数 a = 0.246 nm を使って d = a√(n² + nm + m²)/π で表される。カイラル指数(10, 10)のナノチューブの直径はどれに最も近いか。
  3. ナノ材料の作製法は、大きな材料を細かくするトップダウン法と、原子や分子を組み上げるボトムアップ法に分けられる。ボトムアップ法にあたるものはどれか。

関連する用語

グラフェン ボトムアップ法 ゼータ電位 ナノ粒子の融点降下 BET法 比表面積 量子ドット

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